ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ちりめんのじゅばん

2010-03-08 14:59:30 | 着物・古布
小粒ながらざらっとシボがあります。ウラに木綿のついた「繰り回し」の襦袢。
花は仏桑花(ハイビスカス)のようですから、元々は単ものだったかなと思います。


     


花の一部が白ですから、地の色の感じもお分かりかと思いますが、
ミルク3倍くらいいれたようなミルクティー色?(食べ物から離れんさいょ)
ところがなにしろ「薄汚れている」感じ。色から来る印象かなぁとも思ったのですが、
触った感じが「ワタシ、相当汚れてまっせ、ヨロシクー」みたいな感触で…。
「記念写真」のあと解いたのですが、まぁホコリっぽいったら…。
ウラに木綿がついていたので、しっかりしていましたが、解いて1枚にすると薄い~。
かなり使い込まれています。ところどころに摩擦であいたと思われる小穴もあります。
あまり弱っている生地は、そっと押し洗い程度にするのですが、
これは地色がこんなですから汚れが見た目にわかりづらく、
なんか気になって…思い切ってシャンプーを少し落としてブラシ洗いしました。
最初は遠慮がちにそぉーっとやったのですが…シャンプーの泡がミルクティーの色やん…。
気がついたらガッシガッシと洗ってました。
幸いボロボロに破れることもなく、無事洗いあがりましたが、
すすぎもいつもの倍かけましたー。

で、さっぱりしたやらしないやら…伸子張りしましたが、
こういうちりめんは水につけると結構縮むのですが、それほどでもない…。
もう力も落ちていて、伸子を打つとあっというまにダラーンと伸びました。
どっちにしても、小物用なら裏打ちしなければ使えません。
平らなほうが使いやすいですし、ヨシとしましょう。
かなり薄くなっていまして、黒いところ、下が透けます。
点線で書いたのは私の人差し指、その右に2本指が見えています。
ここまで薄くなるまで使われたんですねぇ。


     


さっぱりしたなーと思ったら…ちょっと色落ちして薄くなりました…あらら。
でも、手触りしゃっきりでキモチいいです。
そうそう、半襟はシャレたものがついていたのですが、これが紙のように硬い!
折って立てたら立ちそうです。こんなの。


  


ワタシのように肌がデリケートなモノは(今、誰か吹きました??)
半日で首のあたりが真っ赤になりそうなくらいです。

先日から、着物のことを知っていたほうが…というお話をしてきました。
何も専門的な知識を全部持つことはないと思いますが、
たとえば私の子供のころ、つまりこれまた先日お話した
「着物を着ていた人」「着物を知っている人」が、たくさん身近にいたころは、
いろんな「言葉」を耳にすることができました。
たとえば「イマドキ錦紗はなくなった」とか「これは大島でも村山だね」とか、
「最近の一越はなんかペラペラしてる」とか…。
そういう会話の中に出てくる言葉の意味を知らず知らずのうちに覚えました。

正絹を着る着ないに関わらず、正絹と交織の違いとか、正絹の種類とか、
そういうことは「知らないよりは、知っているほうがいい」です。
そんなことで、まぁ何度かかいていることではあるのですが、
またちょっとだけお話しをしようと思います。

着物を洗うと決心した、洗った、子供サイズになっちゃった…なんてのは
寂しいお話しですが、これが起きるのは「糸」のためです。

最初に生糸で反物を織るとき、機(はた)には経(たていと)をかけるわけです。
あ、この字、縦の糸のことを『経』とかいて「たていと」、
横の糸を『緯』と書いて「よこいと」と読みます。両方で「経緯」、
つまり物事のいきさつ、プロセス、順序だてた事情…ですね。これが語源です。

この経は、通常は普通の撚りの糸です。この普通の撚りというのもあいまいですが、
普段の縫い糸に使っている糸や毛糸は、細い糸を何本かより合わせているわけですね。
これが撚ってないとバラバラになりますから。

この普通程度に撚った糸を、同じように緯(よこいと)にも使って、
単純に織りあけだものが、平絹や羽二重、紬など。
この場合はほとんど洗濯による縮みはありません。
水気にあうと縮むのは「強撚糸」と呼ばれる、撚りの強い糸を使った場合です。
この強撚糸は文字通り、普通の糸よりはるかに回数多く撚り合わせます。
たとえば手近な毛糸でも紐でも、クリクリとずっと撚ってみてください。
だんだんよりが硬くなって、そのうちちょっと緩めるとコロンと丸まったりしてきます。
こんな状態になった糸をぎゅーっとまっすぐに伸ばした状態で、糊で固めてしまいます。

これを緯に使うわけですが、この時に決まった法則、
たとえば撚る方向が右撚りの糸か左撚りの糸か、とか
何段毎に、どの撚り方向の糸をどういう順序で使う…とかそういう織り方の法則です。
このときの緯の使い方で「一越」とか「二越」とかの違いが出るわけです。
鬼シボと呼ばれるものは、とくに強くシボがでるように工夫して織ったものです。

織りあがったものが「白生地」とよばれるものです。
これを「精錬」します。精錬というのは「絹練り」といわれるものですが、
もともとの生糸についている自然の成分の余分なものや、固めた糊などを、
全部落とすことです。生糸のまま、何もしないで織って白いままで精錬するので
後から染めて模様をつけます。それで「後染め」となります。
この「精錬」によって、糊などが全部取れますから、くりくりとかたまって
ピーんと伸ばされていたものが元に戻ってでこぼこになる…
これが「ちりめんのシボ」になります。そのままではしわしわに縮んでますから、
今度は「湯のし」をかけて、必要な幅まで横を伸ばして仕上げるわけです。
ですからちりめんは、シボがペタンコになるまで伸ばすと反幅が広くなりすぎます。

紬などは、まず先に糸の状態で「絹練り」をしてしまいます。
それから糸を染めます。染めた糸を機にかけて、糸の色によって柄を織り出します。
先に糸を染めるので「先染め」といいます。
強撚糸を使っていないので、布は平らなままで水に入れてもほとんど縮みません。

お召しはその真ん中の状態、つまり、糸は先に染めてそれで織るのですが、
こちらは「経」に、特殊な「強撚糸」を使います。
この撚り糸は左右に撚ったものをあわせて更に反対方向に撚る…といったような、
実にややこしい撚りかたです。それによってお召し独特のざらつき感や、
ハリ、しなやかさが出るわけです。
先に糸を染めるけれど、強撚糸を使っているので「お召しちりめん」と呼ばれるわけです。

今はめったにない錦紗は、ごく細い糸を密度をつめて使うため、ちりめんでありながら、
デコデコとしたシボは感じられず、綸子と同じように細密な柄も染めることができ、
しかもちりめんのように、しなっと体になじんでくれるというわけです。

この「強撚糸」が使われていることで、縮みをおこすことが多いわけですから、
後染めの着物は、縮む確立が高いということになります。
木綿などは、元々が縮む性質の繊維ですから、反物から着物にする前に、
水通しをして、縮むだけ縮ませてから裁ちます。それでもう大丈夫かというと、
また洗ったらまた縮むなんてことも無きにしも非ず…。
最近は「防縮加工」などがすんでいるものもありますから、
反物状態で買うときはよく見ることですね。

縮んだものはどうするか、木綿の場合は戻りませんが、
ちりめんは元々糸そのものが木綿のように縮むわけではありませんから。
伸ばして戻すことができます。これをするのが伸子張りや板張りですが、
そのためには解いて元の反物にもどさなければなりません。
着物のまま洗うと、しめっているうちにアイロンでのばすことはできますが、
全部を決められた幅に均等に伸ばすのはかなり難しいし、
袷の場合は表地と裏地の縮み率が違って、余計厄介なことになります。
だからプロに頼むわけですね。

八掛は二種類あって、まず小紋などの着物用が「パレス」と呼ばれる八掛、
後染めの着物用なのでこれも後染めで、最近はみんなぼかしを使います。
パレスというのは、錦紗の一種、元の錦紗よりは縮みにくくしたものです。

紬用は、紬用八掛とか「駒撚」と呼ばれます。
この駒撚(こまより)というのは、糸の撚り方のこと。
糸の撚りかたはそりゃもういろいろで、言ってる私が、年中ごっちゃになってます。
まぁこんなことは普段着物を着るのには、知らなくてもいいことです。
要するに、一口に糸といっても、いろんな撚りり方組み合わせがあるということで、
その糸の種類や織り方で、さまざまな特徴の生地ができるということです。
その生地の特徴を知れば、それの扱いもわかるということになるわけですね。

最近は技術が日進月歩ですから、新しいものは、より縮みにくくなっているとは思いますが
とりあえず強撚糸を使ったものは縮む傾向にある…と思っておけばマチガイありません。
つまり、家で洗えるのは紬のような強撚糸を使わない普通の平織りとか、
縮ませてから仕立てた木綿などです。あっポリもですね。

かつて女性がアタリマエのように「和裁」というものをしていたころは、
どんな繊維であれ、高価な着物以外は自分で解き、自分で洗い、自分で仕立てたわけです。
今、そのほとんどのことをやらない、というよりできなくなりました。
だからプロに頼むことになり、これが「着物ってお金がかかる」、の原因になっています。

先日知り合いが「洋服は流行があるし、安いものは1シーズンきたらヨレるから
もういっか…で処分してしまう。着物をその感覚で着られたくないなぁ」と言いました。
着物はたとえ元がリサイクルや古着で1000円2000円のものでも、
最初に呉服屋のお店に並んだときは、高価だったはずのものです。
安く手に入った分、あとからお金をかけてやってください。

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4 コメント

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Unknown (陽花)
2010-03-08 21:34:37
画像からもシボのあるのが分かりますね。
柄自体はわりと大きめなのに、色的には
押さえている・・・こういう色柄は当時
何歳ぐらいの方が着ていたのかと・・・
関係の無い話で申し訳ないですけど気に
なりました。
返信する
仏桑花というのですか。 (えみこ)
2010-03-09 09:54:06
はじめて知りました。ありがたい名前だったのね、と
わが家のハイビスカスに話しかけてしまいました。
今にはない感じの柄ですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-03-09 19:30:05
陽花様
昔はけっこうハデなものを着ましたからねぇ。
私くらいでもきていたかもしれません。
最初から襦袢だとしたら、もっといってたかも。
どっちにしても、今あったら、
30代…ですかねぇ。
羽織ならすぐ着るのに~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-03-09 19:37:32
えみこ様
私も最近知ったのですが、洋花でも、
和名のほうがいいなぁと思うのがあります。
「シクラメン」が「かがり火花」とか。
あっあれは「ぶたの饅頭」とも
いわれてましたっけ…。
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