黒のちりめん、紋付羽織です。女物、五三の桐のひとつ紋。
すみません、ハンガーのカタチがうつって曲がってます。
紋付羽織というと羽二重か塩瀬が多いのですが、珍しくどっしりとしたちりめん、
もしかしたら着物の仕立てなおしかもしれません。
この羽織はオークションで「ゼッタイ高くなる!いくらまでなら出せるか」と
悩んでいたら案外人気薄で、思わぬ安値で落札できました。
柄は「象の背に乗り、文を読む美女」・・・ん~~~なんか意味があるのかや?
最初パッと見たときは「六牙(りくぎ、または、ろくげ)の象」かと思いましたが
よく見ると牙は一本しかないし・・・。ほかに仏教風のものもないし・・。
六牙の象にお乗りあそばすのは「普賢菩薩」様ですから、
それを人になぞらえたか・・といろいろ考えましたが、
単純に「象が日本にやってきたとき、当時の美人がそれに乗ったところ」らしい?
髪型から言っても、そんな感じ・・でしょうか。
これは手描きです。落款は「松峰」とあります。名前で調べてみたのですが、
同じ「松峰」という名前の画家さんは何人もいまして、わかりませんでした。
とてもやさしい表情の美人さんです。象さんもやさしいですよ。
ちょっと「鼻」がクタビレているようですが?!
さてこの羽織、まだ羽裏もきれいだし表も大きな問題はなく着用可能状態。
ところがですねぇ、ウラで手抜きを発見!?
袂の内側、寸法長かったんでしょうがこんな無造作に縫いとめてあります。
それだけではありませんで、袖口布、切りっぱです。
よく見ると、羽裏の縫い付け方も雑だったりしてます。
やっぱり着物から、自分で自分の羽織として縫い直しをしたものと思います。
自分のだから「ちょーっと足りないしー、ま、いっか」だったような感じですね。
でも実は、古着にはけっこう「いーかげん」っていうの、多いです。
見えないところはまぁいいや、でザクザク止めつけたりとか、
ちょっと寸法のズレたところを無理やり寄せて合わせてあったりとか。
自分でのものだし、またいずれ解いてて洗うんだから・・だったのかもですね。
今はプロが縫ったきちんとしたものしか目にしませんから、手抜きを見ると
最初の頃は「なにこれ」と思っていましたけれど、たとえば私も、
自分で持つバッグなんかだと「中袋はちっとシミのついてるのでいいや」とか
「あーズレちゃった、まっこのへんで調節してうまく縫っとこぉ」なんて
けっこうやっているんですよね。もちろん、お客様にお買い上げいただくものは、
それだからこそ余計に気を使って縫いますよ、ほんとに!
昔の人は、着物で毎日当たり前だったわけですから、どこまでもきちんきちんと
全部やらずに、こんな手抜きもしていたのでしょうね。
こういうモノを見るとホッとする「手抜き王とんぼ」です。
今日のおまけは「じゅばんの袖」、これは「うそつき」ばかりの4枚組みの一枚、
胴はさらし木綿や麻ですが、袖だけは全部正絹で柄のおもしろいものばかり。
その中でも一番気に入った柄です。
ちょっと写真が小さいのですが、色紙の後ろは格子戸の柄、細かく描いてます。
行灯に三味線と文、もうひとつは傘がふたつ、粋な柄です。
袂の中の綿ぼこりがひどいので玄関先で解き、ちょっと湿気とばしに
干してるところです。これ、届いてからわかったのですが「塩瀬」でした。
柄の右端が、濃い焦茶になっているのです。たぶん帯だったと思います。
帯地の固さなので、スレたところの痛みがひどく袖山がこんなです。
白く写っているのは全部「穴」です。糸穴も大きく残りました。
やわらかい布なら、ここまでは傷まなかったと思います。残念ですね。
柄のいいところだけ切り取って使うことになります。
ほかの3点も、まぁまぁの柄、全部正絹でしたし安くていいお買い物、でした。
片付けに飽きると、こんな仕事をやってます。だから時間かかるんだってばー。
がんばりますからっ!!そうそう「紅絹」がヤマほどあります。
ご入用のかた、ご一報ください。ウチでは紅絹はほとんど使いませんので。
羽織のお袖、長襦袢と着物のお袖が
入るのだけでも嵩があるのに羽織の
お袖まで折り返していたら、いつも
袂に何かを入れていたような感じに
見えたでしょうね。
それでなくとも重めちりめんなのに、
ちょっと羽織ったとき、なんか袖がモタモタするなぁと思ってさわってみたらゴロゴロ・・・。
ひっくり返してみたらこれでした。
とりあえず・・で止めといたんでしょうかねぇ。
私みたいなズボラが、昔もいたってことですね!
紋の羽織、なにがなんでも着ていたものですが、今は着物だけというかたが多くなりましたね。
一つ紋の羽織、ピンク地、若草色地、黒地、さらに紋なしの絵羽織まで親はそろえてくれましたが、本当着たことがありません。入学式で母親はからす軍団などと言われていましたが、羽織を着た親はなんとなく母!というどっしり感がありました。懐かしいアイテムです。
とんぼさん、いろいろご迷惑をかけまして御免なさい。
そしてお訪ねいただきありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
さきほどブログにお邪魔したのですが、混雑しててはいれませんで、ただいまメールをお送りしたところです。お手間取らせてすみません。
土日の夜は余計に入りづらくなりますね。ブログ人口ふえているんですねぇ。
黒い羽織、私も結局1回着たかなぁ・・です。けっこう便利なアイテムのはずでしたが・・。
なにか想像力をかきたてる羽裏です。白象に乗っているといえばやっぱり、普賢菩薩か帝釈天の化身かなって思ってしまうんですが・・。着物の上にはおっているのは領巾なのか袈裟の様な物なのか、羽織がずれ落ちそうになっているのかといろいろ考えて面白いです。で、それよりもっと気になるのが、こちらを見ているような象の目が色っぽいことなんです。
襦袢の袖、帯だったと聞いてうれしくなりました。汚れて古くなった帯、きれは丈夫だし柄もきれい、まだまだ使える。とちょっとだけ見えるところにって感じですね。私も古い羽織を買った時、袖裏にもっと古い染めの帯地が使われていて、「大当たり」と思いました。
ほんとに綺麗な絵です。象さんの目の周り、実は「シワ」らしいのですが、パッと見たところ「まつげ」みたいに見えて、なんて長いんでしょう・・?!女性の読んでいるのは、最初経典か何かかと思ったのですがよく見るとやはり手紙・・やさしい表情ですからいい手紙だったのでしょうね。
染め帯は、ちりめんにしても塩瀬にしてもなかなかありませんから、これはだいぶいたんでいても「アタリ」でした。どう使うのかを考えるのも楽しみです。
遊女が普賢菩薩の化身、というお話なんですが、
そんな感じの題材(または文字を読んでるから普賢菩薩?)
なんじゃないかな、と思います
羽裏のことを考えていてここに辿り着きました(^-^)
お返事がほんとに遅くてすみません。
このお話、昔話などでも残っていますね。
きっとおっしゃる題材だと思います。
象は、着物の柄としてはやはり仏教関係とか、
何かの寓話とかで出てきます。
象でもトラでも、イマドキのアニメのように
カッコよく描かれていないのが多いのですが、
着物の柄はなんでもあり。
実物が見られないものは、想像してでも描く、という
日本人の感性には、毎度驚かされています。