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これは昭和27年の本です。表紙はこちら・・。
「和服裁縫大全集」、名前どおり男物、女物、子供、赤ちゃん用、夜具ふとんまで
びーっしり書いてあります。
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で、最初の写真なんですが、この本の中の囲み記事で、何人かの有名人が、
着物にまつわるエピソードや、自分の思いなどをつづっています。
中には、日本画家の「梶原緋佐子」や井上流家元「井上八千代」(若いっ!)
新派の「花柳章太郎」歌舞伎の「尾上梅幸」など、そうそうたる方々・・。
その中で、唯一、私は知らない人「美容師 芝山みよか」という人のコメントが
最初の写真なんですが・・、題が「キモノの新しい着方のコツ」なんです。
写真では細かくて読めませんので、ちょっと書き出してみますと、
「着物は、キモノと書く方が、ピッタリとするくらい世界的になってきました。
そこでキモノの持っているセンスを生かし、キモノのかもし出す雰囲気を
殺すことなく近代的に着付けることが必要です。」
と始まってまして、その「近代的な着付け方」として、
* 衿は衣紋を抜かない、
これは髪型にタボ(日本髪の後ろにでっぱる部分)がなくなったので、
この方が近代的であるため。
* 帯は下目に重ねて巻く、
これは洋装の場合の「バンド」の観念からみると帯は上すぎて
おかしく見えるから。
* 帯締めは「はす」(ななめ)に巻かず、まっすぐに、
キモノ全体にアクセントをつけるため「太目のもの、感じの強いもの」を。
* その他として「帯揚げは帯の上から出さない」「半衿は白か無地の淡色」
出すのは細めに。
* 袖付けは少々長めにしないと、帯が下目になってきたので胸元が崩れる。
これを読むと、当時(昭和27年)洋装文化の席捲による和装文化の衰退を危惧し
なんとかせねば・・と思っていた人がいたというのが、よくわかります。
それにしても衣紋は抜かないほうがいい、とか、洋服のバンドの感覚で見ると
帯は上のほうにしているように見えておかしいから、帯は下のほうに締めよ、
とか・・・なんかもう、涙ぐましいですね。帯締めを目立たせるようにとか、
そういうことは、洋装の場合のスカーフ、ブローチといった小物を
アクセントとして使う方法に対抗して・・という感じでしょうか。
この年代から30年代にかけての本は、こういう内容の、
「なんとかして洋装文化に遅れまい」と言う意気込みというか、
危機感が感じられる記事が多いです。でも、結局は・・だったわけですが・・。
いまさら衰退してしまったものを、悔やんでもしかたのないことですから、
これから先は「キモノが好き」という若い方々に、私が知ってることを
少しでも役に立てていただけたら・・と思うと同時に「基本は大切、
だけどキモノって本来自由なものなのよ」ということを、
教えてあげたいと思います。前述の「袖付けは少し長くしないと・・」
というコメントは、着方がかわるから、ということです。
袖付けとか袖丈とか、標準でこれくらい、というのはありますけれど、
そのときの体系や、自分はこういう着方をするから・・と言った理由で、
少しずつ変えることは、ちっともかまわないと思います。
もう一冊、こちらの本は9年後、昭和36年の本。
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この中で、面白い記事がありました。その名も
「吉井式和裁早縫学校 訪問記」
というのですが、西部線「大泉学園」からバス10分・・。
この吉井さんという先生が考案した、数々の「早縫い方法」と「道具」の紹介。
本文によれば、半年に一度「早縫い試験」なるものがあって、最高記録は
「女物袷」で2時間17分ですと。「あわせ」でっせ!
平均で3時間、普通の縫い方の三分の一だそうで・・・。
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この吉井先生の工夫によれば、まず針は、長針、5センチほどの針、
これのほうが手首の曲がり、指の関節など、レントゲンで調べても
負担がかからず、肩こりなども少なく長時間やっても疲れないのですと。
くけ台はすべるので使わず、かわりに「裁鎮(さいちん)」、これは造語で
「文鎮」の大きいもので、布の上において重石とするので「裁鎮」なわけ。
この「裁鎮」を縫い物の上において、それで縫う手元部分をひっぱるわけです。
そのほか、これはいいかな、と思ったのは「脇縫い・おくみつけ」などは
糸をきらず、糸巻きのまま縫う・・というやり方。
私は母に裁縫をおそわったとき、運針でどんどん進んでいき、
しごくのは少しずつだけ、針は布から離してはいけない、つまり、
常に針が布のなかにあるようにして、縫い終わったとき初めて針を布から抜き、
縫い始め部分からずーっと少しずつしごいて、落ち着かせる・・といわれました。
今でも背縫いのような長いところはそうしていますが、
そういうときでもこの「糸巻きつけたまま」だと、途中で糸がたりなくなって・・ということがないわけですよね。
このほかにも「衿つけは、肩あきからつける」とか、
マチ針を斜めに刺す(肩こりがちがうんですと)とか、
針刺は、くるくる回る回転式を使うとか・・・。
この先生、お弟子さんにコテの準備など手伝わせながらではありますが、
記者の質問に答えながら、説明しながら、2時間で袷一枚縫い上げました。
いやもう読んでいるだけでびっくり・・・。
縫い方も、こうでなくてはいけない・・ではなく、工夫はしてもいい、
というより、現代だからこそ必要なことだな・・と思いました。
絹にミシン・・はやっぱり素材を荒らすからいやだけど、
安い普段用の紬なら、背縫いくらいいいかな・・とか。
ミシンは解くときたいへんだ、ということ、解いたあと縫った部分の傷みが
手縫いよりはるかにダメージ大きいとか、そういうことを
ちゃんと理解したうえで、普段用着物の縫い方・作り方は、自分流を
決めてもいいんじゃないかと思いました。
ご協力をば、よろしく!
熟女には熟女の着方があるっ!と・・・。
今風に、レースの袖がふりふりと出ている・・
なんて写真の横に「正統派」茶席の着物、なんて
いいじゃないですかー。
親に言われて、背縫いなんかを長~い糸で縫い
よくからませてました。ついでに何を縫うにも
「途中で糸が足りなくならないように」と、
長くしていて、母に「それはバカの長糸という」と
いわれてしまいました。
母の話によれば、祖母は縫い物のとき、
脇に古手ぬぐい、今なら使い古しのタオルですね、
それを置いて、ぬったあと、5㎝でも10㎝でも
残った糸をその古手ぬぐいにチョコチョコと
縫いこむ・・。そうやって「雑巾」に
したんだそうです。糸をわずかでもムダにしない、
昔の人の知恵ですね。こんがらかって切り離して、
えーいとばかりに、10㎝20㎝捨てている私は
ちょっと後ろめたい・・・です。
2時間ちょっとと言うのは驚異的ですね。
子供のころ、大晦日になると母が「はよ寝ぇゃ」と
私をふとんに押し込んでから縫い物を始め、
元日の朝には、枕元に着物が置いてありました。
それでも5時間くらいはかかったでしょうねぇ。
私には、陽花様の手も、母の手も「魔法の手」です。
糸を切らずに糸巻きのまま使うなんて
いいことを教えて頂きました。
私も背縫いは途中で糸を切ると寿命が
短くなると聞き必要以上に糸を長くして
よくもつれさせます。
それにしても2時間ちょっとで縫えるなんて
想像出来ません。私なんて頑張ってしても
4~5日はかかりますから・・・
工程が全部頭に入っているからなんでしょうね。
若い方のブログに寄って、宣伝すると、集まりそうですね。
例えば、お金かけずとも、これぐらいはできますよとか、お出かけのシチュエーション別に、細かくこんな感じ、あんな感じって、出てくると思いますね。
私のようなオバサンが出てくると、ヘタに着物自慢に走っちゃったりするのが怖いですけど
今の着物は、昔のように何度も解いて洗ってリフォームして・・ということがあまり考えられませんし、どちらかというと「洋服」にリフォームなんていうことのほうが多いとなると、ミシン縫いでもこだわらないのかもしれません。でも私はやっぱり、ある程度いいものはいやですね。最近の「振袖」などの正装モノのレギュラー品の反物は、まず国内ではほとんど何もしていない・・と言うのが多いですから、仕立てくらいは国内でやったほうがいいですね。
着物の写真、ほんとはいろいろやる予定だったんですが、何かと遅れに遅れております。HPできたら、こんな組み合わせ・・と呉服屋さんみたいにやってみたいです。みなさんからも「私の着方」なんて、お写真お借りしたりしたいですね、あっこれいいかも!
http://www.shibayama.com/about/ms_profile.html
それはともかく、ミシン縫いの是々非々あるようですが、30年ぐらい前から、大手呉服チェ-ン店の縫製工場では、振袖、訪問着の背縫、脇縫は、ミシンだそうです
最近流行のプレタ浴衣などは、木綿のためか、ほとんど全部、ミシンですものね。
一方、手縫い専門とうたって、海外で安い賃金で、縫ったのを納品している所もあります。
GNPが高くなれば、グローバル化が進めば、産業の空洞化は、いたしかたないのでしょうね~
それはそうと、各人に合った、しかも、TPOに合わせた着物と着方など、どんどん紹介して下さいませ~~
実践して、着て見せますので、着物の輪が広がると思いまーす