ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

今日はアンティーク振袖

2010-01-07 18:06:00 | 着物・古布
というより、昨日の留袖を片付けるのに、覗いてみたらあっこんなのも…。
松の内だーい、着せちゃおう…っと、お福ちゃんのお召しを脱ぎ脱ぎ…。
この寒いのにかわいそうですが、お福ちゃんごめんねぇ…。
全身はこちら、振袖なのでちと広げました。
あっ、帯と帯締めはありあわせを適当になので無視してください。


                    


全体にオレンジっぽい系統で描かれています。
大きな御所車と、おめでたい松や季節の花々…。
肩先まで柄がありますから、これは留袖にはせず、このまま振袖として、
娘や孫に着せるつもりだったのでしょうね。
もちろん「両褄」ですから、右前側にも柄があります。共八掛とあわせてこちら。


          


来週の月曜日は「成人式」ですね。家にいたのではテレビくらいしか
振袖を見ることはありませんが、できれば「いい振袖」がみたいです。
毎年この時期になると、このお話あーでもないこーでもないと、
いろいろお話しが出るわけなんですが、私はやっぱり「振袖には古典柄が合う」と
それだけはかわりません。どれもきれいではあるけれど、それはそれ。
振袖は、着物の中でも一番華やかで美しいものです。
これでもかというほど豪華でもはなやかでもいいから、
品格の感じられるものを、私なら娘に着せたい(いないけど)と思います。
昔のものだけがいいというのではなく、こういう色づけ柄付けのよさが、
伝承されなかったこと、いえ、まったくないわけではありませんが、
こういうものがいまでも選択肢の中に十分あったら…と思うのです。
下半分ですが「後姿」、これだけでもほれますわ。


             


昨日ちょっとコメントのお返事でも書きましたが、
これは「両褄柄」、昔おひきずりで着ていたころの柄付けです。
お引きずりというと、芸者さんのあの長さを思いますが、
あれは専用?の「お引き」で、長さがもっとあります。
参考写真です。帯も幅広いまましめてますね。


                

             
おはしょりがなかった時代、着物はゆったり、ずるずる着られていました。
裾で掃除しているようなものですが、防寒の意味もありました。
外に出るときは、下をずらないように、はしょって「しごき」で腰下を縛る。
このはしょって縛ることが、時代とともに、着物の着方や帯の幅などが変わってきて、
結局「先にはしょる」ようになったのが今の「おはしょり」です。
実を言うと、帯が幅狭くなったりして、動きやすくはなったかもしれませんが、
着方はめんどくさくなったのですよねぇ。

ずるりと引きずってきていたころは、歩いても座っても、
着物の前を左右に広げますから、柄は左右対称についていたわけです。
(下前がやや控えめという、完全対称でないものもあります)
はしょって着るようになり、立ち座りで左前身頃しか見えなくなったので、
いまのように左前がハデで脇から後ろへ向けて、だんだん柄が小さくなったわけです。
そういうことも着物の歴史のうちの、当たり前の変化なわけです。

両褄柄は、おくみのテッペンから柄があり、左脇に向けて下がっていきます。
つまり背縫いにかけて、だんだん低くなるように、柄がつけられます。
今のものは、おくみの柄のつけ始めはやや低く、
左前身頃が一番大きく柄がつきます。つまりおくみと左前身頃の中で、
三角山のようなスペースで柄がつくわけです。
もちろんこれは「基本的に」という意味ですが…。
つまり、着物の腰から下を広げて一枚のキャンバスにしたとき、
昔のものは、真後ろになる真ん中を低くしてあとの両脇を柄を高くする、
今のものは、左側をトップにして右へいくほど柄を低くする、です。
これって実はスペースせばまって、もったいないんですよねぇ。
両褄は、柄がおくみを頂点に脇へ下がりますから、見慣れない目には、
ちょっとバランス悪いように見えるのですが、下に隠れている右前にも、
同じ分量の柄があるわけですから、はなやかなものほど、豪華に見えるんです。

この柄付けをなくしてしまう手はない…と私なんかは思うのです。
今はたしかに引きずって着たりしないけれど、
歩いて翻った右裾に、あまり柄がなくてあっさりよりも、
こってりあってもいいじゃない、振袖なんだから…なんて思うのです。
昨日の留袖もそうですが、昔の若い人向きのもので「晴れ着」と呼ばれるものは、
とにかく華やかに、それってステキだと思うんです。

昔は、年齢的な「分かれ目」というのが今より極端で、
ある日突然「こっからおばさん」みたいな、そんな分け方のように思います。
実年齢よりも、嫁に行ったからとか、子供を産んだからとかで急にジミ路線になる。
それは当時の平均寿命だとか、家族のあり方とか世間の風潮とか、
そういったことで仕方がなかったのだと思います。
また、「ハレとケ」というものがはっきりしていて、
晴れ着は「晴れの日の特別な衣装」として、別格中の別格、
だから若ければ華やかに美しく…というメリハリのある作り方だったと思います。

今の世の中がこうだからとか、昔はこうだからとか、それを論じたところで、
こうでなければならないなんてことはありません。
古くてもいいものはいいし、着たいものを着ればいいと思います。
だから、こんな昔の柄付けの柄行の着物が、今あってもいいんじゃないかなーと
そんな風に思うのです。
でもねぇ…両褄柄を知っている人が…少ないですからねぇ…。
やっぱゴマメのはぎしりかなぁ…なんて思います。

えー、帯ですが、本当はこれを締めたかったのです。
あてただけですが、やっぱりあんちーくな、こっちの方が合うでしょう?


         


でもねぇ、この帯「重い・厚い・硬い・長い」の四重苦?の丸帯でして、
ひとりで締めるにはホネだったのですわー。
それで「薄い・柔らかい」の帯でごまかしたわけです、すみません。
この丸帯も、かなり古いものですが、気合入れて締めようと思えば使えます。
お相撲さんの化粧回しじゃありませんが、一人じゃ締められません…。

鶴が飛んでるこんな柄です。


      


さて、来週の月曜日…とりあえず見たくないのは男性の「黄色や赤の紋付羽織」、
それと昨年ご報告いただいた「片肌脱ぎの振袖」…、
あっ今年はひょっとして「ガーターベルトにミニ振袖?」…やめてねぇ~。
   

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6 コメント

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着たかった~! (りら)
2010-01-07 18:19:32
私、こういう振袖が着たかったんです!
あの当時、アンティークを扱っている着物屋の存在など全く知りませんでしたから、探しようも無かったんですけれど・・・
あったんですよねぇ、あるところには。
私たちの頃は地色が濃い色というのが全盛で、紺だの黒だのに賑やかな紅型というのがまぁおしゃれな子たちの振袖でした。
ごく普通の子達は・・・・
振袖ですもの、やっぱり五つ紋ですよね~。
私ももし娘がいたら、絶対こういうのを着せたいです!
こういうのを着たい子に育てました。(いないから言える?!)

良い物、良い染めというのは流行云々以前に、風格があって品が良くて、本当にステキです。

あと20歳若かったらこれをお借りして写真だけでも撮りたいくらいですわ~。
返信する
Unknown (りのりの)
2010-01-07 20:11:57
「両褄柄」の意味がよくわかりました。
昔の留袖や振袖にこういう柄があったのは知っていましたがなぜこういう柄だったのか、は知りませんでした。まさかお引きずりでずるずる着ていたからなんて思いもよらなくて。
そういえば時代劇のお姫さまは引きずって着てますよね。長屋のおかみさん連中はともかく
お屋敷に住んで留袖や振袖を着る機会のある女性はこんなんだったんですね。しかも、アンティークで着ようと思えば着れなくもない・・・着物が現存しているってことはちょっと前まで
こんなんだったんですね。

そういえばアンティークの着物ってなんで?って思うくらい短いときありますけど
おはしょりなしでつったけで着ていた、ってこともあるんでしょうか?

返信する
Unknown (陽花)
2010-01-07 20:48:12
素晴らしいお振り袖ですねぇ
キンキラじゃなく落ち着いた華やかさって
言うんでしょうか。
一度でいいからこんな振り袖着てみたかった
です。紅絹がまた色っぽいこと!
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-08 19:40:03
りら様
私のころは、逆に薄い色目がはやりでした。
パステルカラーってあれですね。
柄は今よりはまだ「古典柄」ばかりでしたが、
なんだかしまりのない感じで、
私は逆らって「ど・むらさき」にしました。
ほんとは黒振袖、着たかったですねぇ。

こういう振袖の風格というものは、
今のものには見られませんね。
今着たら、めだつでしょうねぇ。
私も娘がいたら、絶対着せるっ!
いや私が着るっ!(それはチガウ)
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-08 19:56:54
りのりの様
長屋のおかみさんたちのも、
そんなに短くはなかったんですよ。
実は、幕府が「贅沢禁止令」を何度か出して、
着物の丈を短くせよとまでいったのですが、
当時は着ているものが「夜具」でもありまして
それをかけて寝るのに、短かったら
掛布団がわりにならない、とゴネたんですね。
それで着物の丈を変えず、幕府も黙認状態だった、
というお話があります。
腰にしごきを結んで…という着方も、
実は明治時代の写真を見ると、ほんとに雑で、
おもいっきりいい加減に結んでいたりで、
ちっともきれいじゃないんです。ぼこぼこで。
そういう感覚も、今とは違うんですね。

アンティーク着物の丈の短さですが、
ひとつにはおっしゃるとおり、なんども
リフォームしているうちに、対丈になってしまう、
という場合もありますが、もうひとつは、
平均身長の違い、です。
時代によって、少し短めに着付けるとか
裄も短めに、とか、そういうこともありますが、
総体に今の人よりは、体がちいさいです。
だから元々対丈の男物は、今の人はほとんど
合わないんですよ。アンティーク男物が
振るわないのは、そういう理由もあります。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-01-08 20:01:39
陽花様
私も、若いころにこれを知っていたら、
結婚式、これでやりたかったです。
一度着てみたいものですよね。
紅絹のこの赤さは…なんで今ないんですかねぇ。
なんともいえないコントラストですよね。
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