ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物ってどーなってるのか・・のおはなし

2006-05-09 16:29:27 | 着物・古布

写真は、この前の旅行でとうとう着られなかった「絽の道中着」です。
私には珍しいこんなかわいい柄・・です。
着られなかったので、悔し紛れ?にお披露目です。見て見てぇ・・。



着物について、着付けとかルールとか、いろいろお話してきましたが、
着付けやルールは、教室に行けば教えていただけるものです。
でも、着物ってどんなふうにできてるのか、とか、
いつもとんぼが言ってる「リフォーム・リサイクル」しやすいって
どういうことなのか・・・、それをちょっとだけお話致しましょう。
これは、和裁をする人なら誰でもしっていることですが、
今は和裁のできる人が少ないので、お話します。
ただし「和裁教室」ではありませんので「基本」の、更におおざっぱ説明です。
あっこりゃ、とんぼの「いつものこと」ですね。

まずは着物ってどうなってるのか・・・。
いつも「着物は長方形の布をつなぎ合わせただけ」といっています、
その説明です。
下の図が、着物の分解図。ただし、寸法の対比は正確ではありません。
どんな風に長方形がつながっているか、です。
わかりやすいように表をグリーン、ウラを黄色にしました。
これで「組み立て」はおわかりでしょうか。
「かけえり」と書いてありますが、「本」には「共衿(ともえり)」と
書いてあります。私のは母から習った言葉でして・・。結局同じ部分です。



次の絵は「反物をどうやって裁つか」です。
反物は幅は35~6センチですが、長さ10メートル以上あるので、
そのまま縮尺すると図に描きにくくなります。
それで長さはおもいっきり短縮しました。バランス悪いですが、
反物一反をこんな順番と形で裁っていく・・という図だと思ってください。



ただし、これは「女の人の着物」の一番ポピュラーな形です。
洋服地で作るとか、羽織とか、そういうことでかわってきます。
一般に絹物と木綿などでは、一反の長さが違います。
一反は何メートルという基準はありません。絹モノは長く木綿は短いです。
短い反物で背の高い人が着物を作るときなど寸法が足りない場合があります。
それををカバーするのに「おくみ」を長方形ではなく、
台形のような形にとる「鉤(かぎ)おくみ」という裁ち方をしたり、
三ツ割衿、といって、本来一枚布で裁つ「衿」を三等分でとる・・などの
方法がありますが、どの方法も、つなげれば元の形に戻るのはかわりません。

もうひとつ大事なこと、和裁は「縫い代を切り落とす」ということがありません。
洋裁は、袖や身頃、衿など、それぞれのパーツやその縫い合わせの場所によって、
必要な「縫い代」を残し、残りは裁ち落としてしまいます。
和裁の場合は、全て折ってとめつける(くける)か、中に折込んでしまいます。
袖の丸みのところも丸みの外、縫い代の三角に残ったところを裁ち落とさず
細かく何段にも縫って縫い縮めて(ギャザーをよせる)とめつけておくだけです。
ですから、解いてもどこも足りないところがなく、つなぎ合わせると全て長方形、
元の反物の形に戻るわけです。
和裁は直線縫い、といいましたが、丸く縫うのは「袖の丸み」だけ。
確かに衿のところはカーブしていますが、洋服のように布のほうをカーブして裁ち
首に添わせるのではなく、身頃を衿の布に添うようにちょっといせ込んだり、
緩めたりというワザを使います。結局衿そのものの縫い目は出来上がって広げると
直線なのです。(体型や好みで多少のゆるいカーブはありますが)

さて、今日書いていることは、着物を着るということ自体には、
別に知らなくても何の支障もないことなのですが、
こういうものなのだ、という知恵もあったほうが便利なこともありますから。
それが「リサイクル」「リフォーム」に関わることです。
長方形と直線、このシンプルさのおかげで、着物は「作り変えやすいもの」
として長く日本人の暮らしの中で「布」を大切にする・・という心とワザを
育て、伝えてきました。今の世では、着物といえども、着ている人全てが
最後までリフォーム・リサイクルするわけではありませんが、
知識・知恵として伝えていくことは、廃れてほしくないと思うのです。

たとえば、しょっちゅう着る着物はどこが汚損しやすいか・・というと、
袖口、衿、後ろすそ・・です。コレは洋服でもかわりませんね。
さて、たとえば袖口が薄汚れたり、ちょっと擦り切れたりしてきた・・
(今の時代、そこまで着る人はいないかもしれませんが、もしずっと着ていたら
と考えてください、昔はそうでしたから)という場合、
一度解いて洗う、そして次に縫うときに、今まで袖口として外に出ていた部分を
袖付け側にまわし、それまで袖付けの「縫い代」として、中に隠れていた
きれいな部分を、新しい袖口にする、つまり、袖の前後をひっくり返すわけです。
同じように、後ろすそが傷んだら、ウエスト部分に縫いこんである、
「くりこし」分をつまんであげてあるところ、ここは余分に布がありますから、
そこで上下に裁ち切ってしまいます。そこで後ろ身頃の下半身分を
上下ひっくり返すわけです。「あげ」分ありますから、縫い合わせも大丈夫。
とまぁこんな具合に、一枚の着物を作り変えたわけです。

この前「裄」を直すと、糸穴や折あとが残ったり、色がかわっていたりして、
元のようにはならない・・というお話をしましたが、昔は「オシャレ」よりも
ものをムダにしないということが優先事項で、当たり前でしたから、
そうやって作り直すことの方が「モノを大切にしている」証だったのです。
以前「よく見ると同柄の色違いの布を合わせた着物」というのをお見せしました。
一枚の着物の身頃と袖で、同じ柄の色違いの布地をつなぎ合わせていました。
下の写真です。左は濃紺地、右は紫地です。



今年の2月18日の記事です。「こうしてまで着てた」という典型ですね。
日本人が、今のように「豊か」になったのは、近年のことで、
江戸、明治、大正、昭和・・と庶民はそれほど裕福ではありませんでした。
ですから、みんながそうやっていても、別に不思議はなかったのです。
美しい着物を何枚も持っていて、もう着ないからあげる・・
なんてことのできる階層の人は少なかったのです。
だからこそ「リサイクル・リフォーム」のできる着物は、便利だったわけです。

こうやって、着続けていってやがてもうそういうテクニックも使えない、
となったときには、元の長方形にして、いたんだところを裁ちきり、
残った部分の大きさでできるものを考えるわけです。
一番多かったのは、たぶん「自分より体のちいさい者の着物」、
つまり子供の着物、でしょうね。それから柄が派手になった・・なんてときは
羽織にするとか、或いは傷みよりも布のへたりや色あせが主のときは、
長じゅばんにするということもあります。そのほかにもいいとこどりでつなげて
帯にする(付け帯もありますね)、ハギレばかりをつなげてじゅばんにしたり
着物以外のものにする、布団の側とか、だんだん小さくなったものは、
鏡かけや、何かの道具を入れる袋や、包むもの、カバー・・。
日本の伝統的な手芸に「ちりめん細工」がありますが、
あれは、そうやって残った小さなはぎれ、もうつなげて大きいものは作れない、
というようなこぎれを、更に捨てずに使ったものです。
今は、細工用手芸用として、最初から大きな布をサイズに切ったものを
セットにして売っていたりしますが、アメリカン・パッチワークも
ちりめん細工も、元々は、節約を考えた主婦が残り布をムダにしないために
考え出した「暮らしの知恵」「節約のわざ」です。

着物は「リフォーム・リサイクル」しやすいものだということ、
それはその「構造上」、作り変えがしやすいように裁たれたものだから。
そして、昔着物だけで暮らしていた頃は、みんなが「ムダ」にならないように
知恵を使って「布・着物」を大切にしていた・・ということです。
着物の歴史は、そのまま節約の知恵と工夫の歴史でもあるわけです。
今の時代、何もそこまでして・・というのもありますし、
和裁という技術が、一部の人のものになってしまった今、
作り変えたくても作り変えられない・・というのも現状です。
現に、こんなにうるさく言ってる私は「袷の着物」を縫うことができません。
だからこそ、自分でできる「着物を大切にする方法」
というのを考えていこうと思います。余裕があれば、人に直してもらう、
小さな直しや、小物などに作り変えることは、やってみよう・・と。


着物、着てください。お針仕事、ちょっとでいいからしてください。
古くなったものから新しいものを作り出すことの楽しみを味わってみませんか。






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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おひさですー (とんぼ)
2006-05-10 10:11:45
ダン之助様

こちらこそ、すっかりご無沙汰です。

ただいまブログのほうに、伺って参りました。

着流しで車は、やはり乗りにくいですよね。私も着物で車はちと苦手・・。乗っちゃってますけど・・仙台では、条例で禁止されているという話を聞いたことがあります。袖が細くなるような上着(ひっぱり)着用しないと違反とか・・。かつこいいもんぺ姿、アップしてください。お待ちしています。
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最近やたらと作務衣姿で・・・ (中村屋ダン之助)
2006-05-10 02:30:10
とんぼさん、ご無沙汰しております。

現在「鴎玉屋」をリニューアル中でして、それに伴ってブログを開設しました。「ダン之助の週末和服生活」です。

今後ともよろしくお願いします。



さて、東神奈川に住んでいた時は電車中心の移動でしたから「着流し」で十分だったのですが、最近は自動車での移動が多く”専ら「作務衣」”を着ることが多くなってきました。

でもね~私自身が作務衣と甚平は和服と認めておりませんので、本当はモンペが欲しいのですよ。着る機会が少なくなった木綿着物の裾を切り取って、モンペと合わせて着てみたいと思っています。ま、秋以降になるでしょうけどね!
返信する
私のイメージじゃないでしょー? (とんぼ)
2006-05-09 21:59:20
陽花様

ほめていただいて、うれしいです。

色は上が正解、うすーいグレーです。

わかりづらいのですが、ウサギの脇に

桜がとんでます。

ほんっと、着たらにあわなかったかも?
返信する
うさぎが、かわいい (陽花)
2006-05-09 20:46:44
とんぼ様



絽の道中着、うさぎが餅つきを

している絵がとってもかわいいです。

上の写真では白か淡いグレーに見える

のですが、下のアップの写真では淡い

抹茶色に見えます。

本当はどちらの色かしら・・気になりま~す。

暖かい日だったら京都で見せて頂けたのに

残念です。

返信する
ごしんぱいなく。 (とんぼ、)
2006-05-09 19:14:38
千兵衛様

管理人からして、同じことやってますから、お気遣いなく!
返信する
ゆってゆって! (とんぼ)
2006-05-09 19:13:01
千兵衛様

お忙しいのに、おいでくださってありがとうございます。ぜひぜひ「針を持って、外へ・・じゃない、おうちにこもろう・・?」と叫んでください。

ほんとに自分サイズの着物を着ると、そうでないもの

は、着られないわけじゃないのに、なんかものたりなくなるんですよね。今の着物が完成したら、一枚ずつマイ・サイズに直していってください。慣れてきた頃に私の「お直し」お願いしますので?!

実は今日のブログに書いた「鉤おくみ」のこと、千様が「丈がたりない」と書かれたときに、よっぽどお知らせしようかと思ったのですが、なんとか足りそうでしたし、最初は一番オーソドックスで作ったほうがいいと思って言わなかったんです。この「鉤おくみ」は、木綿者や、安いと思われる紬なんかの着物を解くと、ときどき見かけます。早い話が、おくみを直角に分けないで、斜め線で裁つんです。図が入用でしたら、「とんぼへのおたより欄」からメールをどーぞ。

和裁の本にも書いてあるかもしれませんが。
返信する
ごめんちゃい! (萬屋千兵衛)
2006-05-09 19:07:49
文章の長さが統一できなくてごめん。

ちゃんとEnterしたつもりだったのに、、、残念!(笑)
返信する
ハーイ!わかりましたあ! (萬屋千兵衛)
2006-05-09 18:53:03
最近思っている事なんですけど、



かつて、古着を買いあさっていた時期がありまして、

数はだいぶあるのですが、所詮、よそ様サイズの着物ですから、自分のサイズに近い物を購入してはおりますが、私の体に対してピッタリという訳ではないのです。



私の場合は自宅の中で着ているので、多少のサイズ違いは

問題無いと言えばなかったのですが、ご存じかどうか(笑)私も和裁をするようになりまして、多少、勢いついてきた事から(笑)その古着を自分のピッタリサイズに仕立て直そうと思い始めたのです。



古着を選ぶ場合も長めの裄や丈で選んでますから、

例えば身幅が大きめだったりします。

そのような古着を着ていた者(私)が、一度でも

自分のピッタリサイズの仕立物を着てしまうと、

合わない着物は、とても居心地が悪く感じてしまうのです。

ホントに、罪作りなピッタリサイズちゃんです!(笑)



さあ!若者よ!縫い針を持って街に出よう!

あっ、出ちゃいけないんだ。

おうちで、チクチクしてね!(笑)
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