ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

丸い柄

2011-05-12 19:25:31 | 着物・古布

 

先日縞模様のお話をいたしましたが、今日写真のようなハギレがでてきましたので…。

染め直しモノかなと思いますが、桧扇の地紋のある紫の紋錦紗に、ランダムに○を散らしています。

実物はもう少し色がありまして、ピンク、グレー、白など。

スキャンするのにおもしになるものを乗せませんでしたのでシワシワですみません。

 

さて、丸い柄のことをなんというでしょう…「水玉」…今はそう呼びますね。

でも、日本古来の呼び方に「水玉柄」はまずありません。なんでかなーのお話はちとあとにして…。

 

まず「水玉柄」って、いつどこで生まれたか…。これって太古の昔から…だと思いますね。

だって、およそ人間が考えるもっとも単純な模様は「○」ですし。いえ、これは単に想像です。

とりあえず、ファッションとして「水玉」に名前がついて現れたのは1800年代、

水玉って英語では「ポルカ・ドット」といいます。ネット検索すると、大きさについてはあいまいで

「普通の大きさ」とか「一般的な大きさ」とか出てきます。普通のってどれくらいよ、と思いますよね。

つまり一番使われる…ということで、1センチから2センチくらいの大きさ…ですかね。

これ以上大きいものは「コイン・ドット」、小さいものは「ピン・ドット」。

元々「ドット」が「点」のことですから、ポルカ・ドットというのは点というイメージの小さいものではなく、

まぁまぁおっきな○だよって感じでしょうか。

なぜポルカ?これは「ポルカ(ダンス)」の発祥地、ボヘミア地方で作られていた生地に水玉柄が多かったのだとか。

先日「日本では『唐』のものでなくとも唐物と言った」…というお話をしましたが、

えてして「話す側の都合」で、そういうことがあるもので、ボヘミアという地方の特産の柄で、

そこではポルカというダンスがあって…で、その地方の特徴的なもの…ということ。

それで「ボヘミアン・ドット」ではなく「ポルカ・ドット」と呼ばれたわけです。

ポルカというのは軽快な曲にのってペアで踊るダンスですが、衣装はチロル風です。

水玉は…あわないですね。

 

さて、日本ではどうして水玉と言わないか…いや、昔々は言っていたのかーもしれません。

でも日本で「柄」というものが意識される時代になって「丸い柄」は水玉…とはいかなかったんですね。

まず、日本で大きな「○」を使うときは、それだけ独立して使われず、

ひとつは「連続して使う」で、一番よく知られている「丸」の柄は「七宝」、

あれこれ混ぜ合わせて使うときは、たいがい丸の中に柄が入ります。

これは「丸紋」と呼ばれて「花」がはいっていれば「花丸紋」、鳥なら「鳥丸紋」です。

 

こちらもまたシワシワですみません。おまけに引っ張ったので「楕円」になってますがな。

夏物で、青海波を丸く切り取って散らしています、ひとつの大きさは直径10~12センチくらい。

大柄で涼しげです。着物分はないんですけどね。

 

      

 

日本では、丸だけのいわゆる「ドット柄」になりますと、大きさで名前が変わります。

たとえば手ぬぐいによくある白地に紺の丸紋は「豆」と呼ばれます。豆絞り、ですね。

丸に六つの凹凸をつけたものは「雪輪」になりました。

また丸だけを並べるより、輪にして「輪つなぎ」になったり、規則正しく並んでいれば「行儀」、

大きさも飛ばし方もランダムなら「霰(あられ)」になります。

ごく小さい、いわゆる「ピン・ドット」をうろこ型に並べると「鮫」になりますね。

 

つまり…日本人の感性と語彙の豊富さが、ただの丸を並べた柄に、いろんな名前をつけたんですね。

また、日本人にとって「丸」は、日輪とか星、月など、崇拝したり畏敬の念を持つ対象の象徴でもありましたから、

中途半端な丸をあちこち飛ばす…というのは、柄としていかがなものか…という意識もあったのかもしれません。

七宝にも、それぞれの丸のつなぎ目に小さい丸をいれると「星七宝」になります。

 

また「○」柄は絣のひとつとして使われましたが、こちらもまん丸というのは少なくて、

何かほかに一緒に入ったり、色糸が使われたり…「あっ水玉」…といいたくなるのは、

紺地に白のただの丸が並んだもの…こちらは水玉ではなく「雪んこ」と呼ばれます。

日本人ってステキだなと思います。

 

「水玉」という見た目も呼び方も軽快かつシンプルな柄は外国からはいったもので、

そのころから「水玉柄」という呼称も広まったものと思われます。つまり明治ころですね。

色によって印象も変わりますが、赤い色目や大きな柄は、かわいらしいイメージになりますから、

女の子の浴衣なんかは昔から多かったですね。 

最近の子供の浴衣も様変わりで、なんだかやたら大人っぽいものや、トピカルぅなもの、

キャラクターものが多いようですが、私は小学生くらいまでなら、子供らしい水玉はいいものだと思います。

 

 

明日はフェーン現象が起きるそうで、横浜29度ですと…。

昨日ストーブつけたんですよ!もうこれだけジェットコースターのように気温が変わると、

ははは、今日は春かー夏かーと、こっちもおかしくなりそうです。

皆様のところはいかがでしょうか。

本来なら新緑みずみずしく、さわやかーなはずの今の時期ですが、

くれぐれも体調管理、怠りなくお過ごしください。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2011-05-12 22:59:09
水玉というとペチコートが流行った頃の
スカートを思い浮かべます。
古いんですけど、ドットとはいまだに
言えずつい水玉と言ってしまいます。

奈良もムシムシして、半袖?長袖?どっち
がいいのか迷うような気温です。
返信する
こちらは寒いです。 (えみこ)
2011-05-13 09:23:57
天変地異のあった年は天候も不順になりやすいとか。
10度の気温差はこたえます。
とんぼさんも小とんぼさんもおとうさまもおだいじに。
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Unknown (とんぼ)
2011-05-13 11:56:30
陽花様

そうでしたねぇ。ペチコートも懐かしいです。
カチューシャなんてのをやったりして…。
やっぱり「みずたま」ですよぉ。
涼しげな響きですよね。

昨日は大雨、今日は蒸し暑いです。
もう梅雨なのかと思っちゃいます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-05-13 11:58:17
えみこ様

ありがとうございます。
ほんとに日替わりメニューですよね。
父は暑さにはけっこう強いほうなんですが、
さすがに今日は「散歩してて汗かいた」って
言ってました。
普通の梅雨、普通の夏であってほしいですね。
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