ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

指ぬきの次はハサミ

2021-01-22 16:15:12 | 着物・古布

 

写真は私のfハサミあれこれ。

左はいつも使っている握りバサミですが、長年使っていて、ちと狂いがきています。

真ん中は携帯用握りバサミ、ペンみたいになってますがご覧の通り、先がほぼ開かないので

使いづらいです。あくまで「携帯用」ですねぇ。

右は牛乳パック用として売られていたもの。

パックや円筒形のもの、何かの芯とかは、先へ進むほど、自分の手がジャマになります。

これは支点が下になるので手が邪魔になりません。重宝しています。

 

ハサミはとりあえず切れればいいというものではない…わけで、

特に握りバサミのように、細かい縫い目を切ったりするには、

先の先まできっちり刃先が合ってくれないと糸が切れません。

そこがくるってくるのですねぇ。多少のずれなら力技で直すのですが、

元々が安いものを使っていると、これがね…。

 

さて、ハサミは子供のころから使うものですが、まずは学校で使ってたのは、

なーんの変哲もないただの金属製のハサミだった気がします。

最近のハサミ、「はじめての…」なんてのもあって、金属ではなかったり、

金属製でも持ち手とかカバーがついててプラだったりとか、ほんとにカラフル。

大人になってからは、紙切りバサミのほかに裁縫用の握りバサミに裁ちバサミ。

母の使っていた裁ちバサミは、やたらと使わせてもらえませんでした。

当時は重いと感じていたのに、今もあるそのハサミそれほど大きくもなく軽く感じます。

握りバサミはいわゆる「糸切りバサミ」、今はほかにもカットワークなどに使われる

カットワークバサミとかカーブバサミとか。あ、ピンキングバサミは昔からありますね。

 

ハサミは歴史の古いものです。元々人間は、道具として「石器」を使い始め、

長い時を経て「金属」と出会った…最初は青銅器ですね。

やがて「鉄」というとても強い金属に出会い、「鉄器」が主流になっていきます。

この金属のハサミ、ギリシャ型とローマ型と呼ばれていて、

形からいうとギリシャが今の握りバサミ、ローマが裁ちバサミ。

どちらも遺跡から発掘されたのでそう呼ばれて「起源」とされているわけですが、

支点の位置が真下か真ん中かの違いです。

最初のハサミは握りバサミタイプで、これはとてつもなく大きいものだったそうな。

これは羊の毛を刈るために考案されたものだそうです。

羊飼いがハサミを発明した…なんて言い方もされています。

確かに、今でも大きなハサミで羊の毛を刈っているところもありますね。

必要は発明の母、ですね。

 

日本では日常生活の中のハサミはながらく「握りバサミ」タイプが使われてきました。

浮世絵にもありますが、ものすごく大きい握りバサミで、布を裁ったりしていますし、

爪切りも握りバサミでした。使いにくそう~。

明治になって裁ちバサミが入ってきて、器用な日本人は、裁ちばさみも国産で

作るようになっていったんですね。

母などは裁ちバサミというより「ラシャバサミ」とよく言っていました。

ラシャはウールの織物で、表面を起毛して刈りこんであるもの、

表面はフェルト化しています。洋服生地として高級品で、これをカットするための

大きなハサミがラシャバサミと呼ばれたわけです。

 

和裁の場合、切るのは直線がほとんどですから、握りバサミタイプでも

不都合はなかったのかもしれません。

反して洋裁は、ほとんどカーブとか、細かい切れ込みとか…なので、

いろんなハサミが考えだされたりのでしょう。

 

よく使う普通のハサミは、だんだん切れが悪くなってきます。

ハサミ研ぎはあるのですが、セラミック製とはいうものの使い過ぎ?汚れてます。

今日、新しいものを買いました。ハサミばっかりは、自分でうまく研げませんから。

こんなのです。刃の先まできれいに研ぐには、ゆっくりゆっくり。

着物を解くには「刃の先まで切れないと」なので。こんなのです。

 

       

 

道具というのは、当たり前にそこにあって、当たり前に使っていますが、

今あるものは、大げさに言えば何百年何千年の積み重ねの上にある…わけです。

母がよく「最近は『直し屋』さんがいないから、捨てなきゃならないものが増えた」と

嘆いていました。私の子供のころは傘直しの人もいました。

鍋の修理をする「いかけ屋」は、昭和に入ってアルミ素材が増えてから衰退しました。

さすがに記憶はないのですが、いかけは鋳掛、鉄なべやお釜の穴の開いたところを

溶かした鉄でふさいで磨く商売で、道具を担いで町や村を回ったそうです。

直して使うには、それなりの理由があります。

例えば鉄なべやお釜は当時は質が悪かったので、長く使うと穴が開いたわけです。

ものの質がよくなったり、別の素材がでてきたり、大量生産で単価が安くなったりすると、

人はそちらに流れますから、なくなっていくものもでてくるわけですね。

そういえば「研屋さん」も減りました。ありがたいことにこの町内では

数か月に一度、研屋さんが回ってくれます。とはいってもグラインダーですから、

手で研ぐわけではないのですが、ずっと自分で研いでいたものが、腕力が落ちたのと、

指を痛めてからはずっとお願いしています。

 

直して使う、手入れして使うということは、今でいうエコだけでなく、

元々「道具を大切にする」というところから始まっています。

いつの間にかあれこれたまったハサミが大小10丁くらいありますので、

大きさでいくつか選んで、暇にあかしてシコシコと研ぎ、長く使おうと思っています。

 

生協で届いたユリがやっと完全開花しました。つぼみの時はわからなかったのですが、

どうやらオリエンタル・リリーだったようで、きれいなピンクです。

母が喜んでいることでしょう。花がデカすぎて母の写真が隠れちゃってるんですが。

 

     

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2 コメント

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Unknown (サザエ)
2021-01-23 07:58:29
ラシャばさみにそういう由来があったのですね。
私も小さい頃は母の裁ち鋏は、使わせてもらえなかったな~('◇')ゞ
今思えば、紙でも切られた時には、切れなくなってしまうかもしれないですしね。
で、母亡き後、私がもらって、今それを使ってます。研ぎにだしたら、まるで新品のようになって戻ってきたのです。
もちろん、子供や孫には使わせません(笑)

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Unknown (とんぼ)
2021-01-23 23:06:16
サザエ様

やはり使わせてもらえなかったのですね。
子供の手には危なかったのでしょうし、
やっぱり「紙切ったらアカン」といつも言われてました。
研ぎを専門にやってくれるお店が、近くにないのです。
いつもの研ぎ屋さんにだしてもいいんですが、実は包丁も、
砥石で研ぐのとは違うんですよね。
そういえば「履物やさん」もなくなって、難儀なことです。
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