ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

小紋も、オールマイティ??

2013-01-18 17:22:49 | 着物・古布

 

昨日「解いてます」と載せた着物です。解く前に一枚撮っておきました。

記録のつもりの写真でしたので、きちんとしてなくてすみません。

もうちょっと大写しがこちらです。

 

          

 

さて、小紋の着物…ですが、そもそも小紋ってなんだ?

要するに、肩線を境に、後ろ身頃も前身ごろも、柄の上下がない柄付けのもの。

上の着物もそうですが、扇子があちこち向いています。

よーく見ると「ここからここまでで一模様」というラインがあります。上を向いた扇子と下を向いた扇子のグループ

さらにこれを続けて並べています。

着物を作るときに、振袖や訪問着のように、柄を合わせる必要がありません。

 

そういうものなので、手軽に着られる、作ることができる、ので価格も低くなるわけです。

そして、色柄はもう「お好み」。

こまかーい柄がたくさんのものもあれば、大きな花がぽんぽんと飛んでいるものもあれば、

小さいのがぽんぽんもあけば…です。

だから目的に合わせて、柄を選んで着ることが出来るわけです。

 

入卒に黒絵羽、のお話はこのまえ致しましたが、紋付の黒羽織を着ることで、

ただの小紋が「略礼装」として使える…だからマジック・アイテムなのですね。

ただ、そのときの小紋はやはり色柄を選ぶわけです。

例えば上の着物ですが、柄の大きさとしては「大きい」です。

でも、色目がモノトーン気味なのと、なにより「扇子・梅」といったおめでたい柄です。

だからこれに黒羽織を合わせれば、入卒程度には着られます。

ちょっとめちゃめちゃお絵かきですが、こんな感じ。

すみません、色が見えなくなったので、羽織の紐が赤ですが、本来、正装では「白」です。

 

           

 

「喪」のほうだとこんなのがありました。これは小紋でも「縞柄」にはいりますね。

 

              

 

こちらは色無地のような感じに見える小紋、入子菱の柄。

 

     

 

こちらは色無地、柄を出すのに少し明るくしました。流水のようですね。

これは色が水色とかグレーなら「弔」の方にも使えます。

柄としては大きめですが、華やかではありませんから。

 

             

 

こちらは黒絵羽で紋はなくても「黒だから」ということで、つけ下げに着て、年始などに着用。

右はみたまんま「入園入学式の装い」となっています。

 

   

 

この「右側」の説明を読むと、

「羽織は(入学などでは)紋付が正式。無地、絵羽織に三つ紋か一つ紋。

着物は無地、ぼかし、小紋などの染めのもの。紬、絞りはさける。

学校関係では一つ紋でよい…」

そんなに限定してもねぇ…。

結局、イマドキの絵羽織は、紋は入っていないものが多いです。

これは先日も書きましたが「紋」というものについての感覚や意識が変わってきたからです。

それよりも「黒という色」「絵羽という華やかさ」で、略礼装になっているわけです。

 

着物も、私が小さいころは、これもまた書きましたが、着物をたくさん持っている人は限られました。

だからちょっとお正月にも着られるかな、というような小紋や縞の着物に、黒絵羽を着たわけです。

だから、トップ写真の着物でも、いけるよ…なんですね。

豊かになってきたら、今度は小紋なんて…になってきて、色無地、江戸小紋、になってきました。

「紋のついていない着物でも、紋付の羽織を着たら、格をアップできる」でしたから、

色無地の背中に一つ紋ついていたら、別にわざわざ黒絵羽着なくたっていいわけです。

紋のついていない色無地だったら、紋付の黒絵羽で、格をあげる…。

このあたりがなんだかゴチャゴチャになってきて、とりあえず入学式には、品格のある小紋、江戸小紋、

色無地、付け下げ…で黒羽織(紋の有無はあまり言わない)、というスタイルが出来上がったわけです。

 

つまり「原図」がひとつあって、ほかに「応用その1」「応用その2」「応用その3」…と、

いろいろ出てきたわけで、どれもみんな許容してきたわけです。

だから、全部わかっていれば「あぁあのヒトは『応用その1』のタイプね。このヒトは『2』だわ」…と、

別におかしくもおもわないわけですが、今、色無地に黒絵羽、なんて姿はあまり見ません。

というより「入学式に着物」という姿があまりありませんから、それだけで目立つ…。

そうなると、ちょっと聞きかじりの知識などで「小紋っておかしくない?」なんていわれたりしちゃうんですね。

 

この上の写真の説明に「紬、絞りはさける」とあります。この本ふるいですからねぇ。

第一上の「付け下に柄の黒羽織」、上司宅への訪問に…なんて書いてありますが、葉の柄は絞りですよー。

紬や絞りは避ける…当時は、そういっておいたほうが、問題起きない…だったのだと思います。

それを言うなら、付け下げに羽織というほうが、本来は×なのですから。

 

この「絞り」というのもあいまいなもので、実は総絞りでも振袖は何の問題もなく「正装」です。

なのに袖がみじかくなっただけで、披露宴にはちょっと…などといわれます。

これは、いつもいう「着物の出自」ということなのですが、絞りそのものは、日本で古くからある染の技法です。

ただし、室町前あたりまでは、いわゆる「下級層の使うもの」…。

あの「辻が花」など、美しいものが出てきて、いろいろ使われるようにはなりましたし、

絹物は「疋田」として京鹿の子などの高級なものとして使われ、庶民はもっぱら木綿に染めて使う、

つまり「鳴海絞」などですね。こんなところから、絞りというものは、すごーく手間隙かかっていても、

トップにはなれない、つまり大島紬などと同じ「気の毒な位置づけ」なのです。

だから「総絞り」でも振袖でなければ「小紋」と同格。

でもねぇ、見た目から言ったって、あの細かい絞り、美しいでしょう。

呉服屋さんとも話したことがありますが、まるで浴衣みたいな柄ならともかく、

小紋として品よく着られる絞りなら、黒紋付の羽織着ればOKよ、と。

「小紋に黒紋付でOK」なのだから、絞りはさけましょう、というのは、どちらかというと、

元々あいまいなものだから、やめておきましょう、ということだと思います。

今は紬の訪問着だってある時代です。

何をどこまで許容するか、それをちゃんと考えてこなかったことと、

洋装の台頭で、着物の常識と洋装の常識とが、比べなくてもいいものを比べたり…

そんなこんなが、今の混乱の元になっているのだと、私は思っています。

 

おまけみたいなお話ですが…黒羽織の丈。

一時期の「カラス軍団」のころに、羽織丈は短くなりました。

軽快に…はいいのですが、やはり紋付などは、ちょっと長めのほうが落ち着いて見えます。

これまたいたずらお絵かき、

上の縞柄小紋の場合…どっちがいいでしょうか…。

大事なのは「祝う心」「悼む心」、それを表すのに「自分らしく」を心がける、それが大切だと、思っています。

 

    

 

    


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8 コメント

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Unknown (陽花)
2013-01-19 12:58:17
私が結婚する頃は小紋や色無地に
黒絵羽織で入学や卒業が決まり事の
ようになっていましたので嫁入り
に持ってきました。
3月や4月って寒い時期なので着物の方が
温かいしお式らしくていいと思いますが、
いつの頃からか薄いジョーゼットになり
ましたね。
地域的なものかもしれませんが、孫が
保育園の入、卒にはつけ下げや訪問着の
お母さんが多いでした。
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Unknown (とんぼ)
2013-01-19 17:21:03
陽花様

みんな「一張羅」という感じで、着てましたよね。
私も黒紋付は一枚持ってきましたが、
結局使わずじまいで、今でもしまったままです。

入卒は、地域性もあって、みんな華やかだったり、
誰も着てなかったり…みょうなところで気を使うみたいです。
返信する
Unknown (古布遊び)
2013-01-19 22:19:41
ナカナカと難しいものですね~~
一寸頭がこんがらがってしまいそう。
時代と共にいろんなことがだんだん変化してきているのですね。

そうそう黒羽織のところでお聞きしようと思っていたのですが「築地明石町」の絵ですが、裏は紅絹??のように思えたのですがーー古い着物ですと胴裏は紅絹裏の事が多いと思うですが喪服の場合も赤を使ったのでしょうか?
以前から疑問に思っていたのですが・・・
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Unknown (りら)
2013-01-20 05:59:53
なぁるほどぉ!
うちの母などは昔の人ですからやっぱり「絞りは小紋格で正装にはならない」と言っていました。
こういうことだったのですね!
最近、絞りの価値観についてこういうお話を聞くことが皆無でしたので、スッキリしました。

そして、色んなことを言う権威の人が出てきて、それに合致しないと「あの人、変!!」というのもまた逆から見ると笑止だったりもするわけですねぇ。
なんだか「着物のルールは大変」という図式を見せられたような気がしています。
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Unknown (とんぼ)
2013-01-20 18:38:55
古布遊び様

着物を昔のように着る暮らしが続いていたら、
こんな変化の仕方はしなかったのではないかと
そんなことを思っています。

当時はたぶん、黒羽折りを複数枚持っていても、
おかしくなかったと思います。とくに花柳界のカタは。

喪服の裏は紅絹はたぶん、ですが使わないと思います。
見えそうでけっこうチラリとみえますからねぇ。
ただ、時代や地域によって、長寿はお祝い、として、
葬儀でも子供は振袖着たり、お赤飯だったり
そういうこともありますから、ゼッタイない、とは言い切れませんねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2013-01-20 18:43:05
りら様

時代や地域ででそうだったことは、それで通ったのに、
現代は、いろんな年代や地域で知ったことを、
それぞれの諦観として持ってしまっていて、
「こうなのよ」と言い募ったりする人がいますからねぇ。
結局、本来着物はかなり柔軟なものなのに、
かえってしばり付けてはごちゃまぜにしてる…
そんな気もします。
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Unknown (古布遊び)
2013-01-21 07:39:54
ありがとうございました。
なるほどそうですね。

子供が振袖を着るところもあるのですか、、びっくりしました。
葬儀は地方によってかなりイロイロな風習があるのですね。とても参考になりました。
ありがとうございます。
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Unknown (とんぼ)
2013-01-21 18:03:14
古布遊び様

今の子供たちは、学校に行っていれば制服ですね。
私は、父のときに、制服着た記憶があります。

お通夜のやり方も、お返しの内容も、ほんとにいろいろ違います。
だいたい自宅でお葬式しなくなりましたからね。
京都のいなかは、七日ごとにちゃんとやるので、
そのたびに1000円2000円と持っていくらしいのです。
それでお返しが「日用雑貨と食品の詰め合わせ」。
遠いので初七日以降分をまとめて送ると、
「しょうゆ、ソース、インスタント味噌汁、ラップ、ホイル、
台所洗剤、濡れティッシュ…」
まるで「福引の景品」みたいなのが、まとめて送られてきます。
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