ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

私の好きな柄

2005-12-19 18:27:26 | 着物・古布

冊子柄、と呼ばれる柄です。みたまんま「本」です。

私は若い頃から「花柄」よりも「道具柄」系が好きで、振袖も「御所車」のみ。
花はありませんでした。よく使われる「道具柄」としては、女の子系では
昨日の「几帳」を初め「貝桶」「扇子」「潮汲み」「糸巻き」など。
男の子系だと「兜」「軍配」「矢と箙(えびら)」「刀」など・・。
楽器などは男女別なく使われます。いわゆる晴れ着系だと、こういうものが
花に囲まれていたり、勇壮な御所人形と一緒に描かれたりしますが、
じゅばんとか、普段着っぽいものだと、ただポツンポツンと
道具が描かれたり、小さく連なったり・・・。
いずれにしても、昔の人は日常のなんでもない道具や当たり前の小物を
ときにあっさりと、ときに花で囲んで、イキイキとした柄としました。
その感性には、今の世に生きる私たちをもうならせるものがあります。

上の冊子柄はちりめんの着物の袖部分です。これだけでの販売でした。
紫の本は一冊でハガキ2枚分くらいの大きさがありますから
これ、着物だったときは、ものすごくハデだったと思います。
下の方は、色や柄の組み合わせからいって、男性のじゅばんと思います。
もう半幅を2枚縫い合わせたものが、80cmたらず。こちらは錦紗です。
錦紗もちりめんですが、その違いについては、また別のお話しにします。



冊子柄ということで、本日のお題?は「本」について。
古くからある本といえば「経典」ですが、今回は庶民が楽しんだ本について、
つまり「着物の柄」に使われるほど、人口に膾炙した「草子」についてのお話し。

江戸時代というのは、何度か書いていますが、世情が安定したため
いろいろな文化が落ち着いて発展していった時代です。
それまでは、生み出されてもなかなか大きく育たなかったもの、
或いは一部の世界だけで育っていたものが、どんどん庶民の生活の中にも
根付き、いろいろな形で花開いていったわけです。
まずは「印刷」ということが進み始めました。それまでにも
活字印刷の技術は渡来しており、知識階級の人々が木活字、金属活字を使って
今で言うなら「専門書」とか「歴史書」などを作っていました。
しかし江戸時代に入って「出版」ということが広まってくると、
活字と言うのはとにかく「数」がいる、おまけにそれを並べて・・となると
時間がかかる、ということから、活字を組み合わせるのではなく、
文章を版木に直接彫る、という「木版印刷」が主流になっていったわけです。

また識字率は「寺子屋」が出現したことであがってゆき、子供でも本が読める、
という状況になっていきます。そこで登場したのが「草双紙」です。
絵草紙とも呼ばれたのは、「絵」が大きくのっていて、そのまわりに字がある、
今で言うところの「絵本」のような作りだったからです。
子供向きのものは「赤」の表紙、やがて大人向きに「歌舞伎・浄瑠璃」などの
「物語本」がでて、これが「黒」とか「青」の表紙、それでそれぞれに
「赤本」とか「黒本」とか呼ばれました。
絵の多かった本に対して、やがて文字ばかりの今風の本が出始め、
「洒落本」、「滑稽本」など、ジャンルが広がっていったわけです。

こういった本の変遷は1700年の中ごろから、だいたい100年くらいで
どんどん発達し、「読本」と呼ばれる本格的な長編もの、今でいうなら
「全○○巻」というようなものまで出版されました。今に残る名作の中で
今度テレビでタッキーが主演・・と宣伝しているのが「南総里見八犬伝」です。

草紙は、当初は漉きなおした安い紙を使ったりしていましたが、
出版ということがひとつの産業として発展していくにしたがって
豪華な表紙や装丁のものも作られるようになりました。
漉きなおしの紙の本でも当時は高かったですから、貸本業も盛んになりました。
時代劇などで「四角い箱に本をたくさん入れた若い衆が、大きなお店の裏手や
お屋敷の台所などに入って絵草紙を並べる」・・なんて場面があります。
アレは「移動貸本屋」なわけです。もちろん販売もしましたが、
一度読んだら次・・でもよかった本は借りるほうが割安だったのですね。

こうして「本」はたくさん出版され、古本屋もでき・・なんですが、
いつかはボロボロになる・・さてそのあとは?・・というとリサイクル。
江戸は究極のリサイクル都市と言われます。
紙のリサイクルについては、またいずれと致しましょう。
さて、本は読んでますか?私がこのところ連日読んでいるのは
「取り扱い説明書」「手引書」「解説書」・・PCって、ワカンナイッ!



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2 コメント

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Unknown (ちょうちょ)
2005-12-21 08:43:41
母の着物がほとんどなのですが、どうも扇柄が多いようです。

わたしはというと、鳥が好きなので、骨董市なんかに行くと、なぜか鳥の柄を探してますね。お友達も知っているので、探して買ってくれたり…

羽裏とか半襟とか帯なんかで、少しずつですが、数が増えてます。
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こだわりって・・ (とんぼ)
2005-12-21 10:11:47
けっこう楽しいことですよね。

鳥の柄は動きがあっておもしろいです。

私も小さい鳥、雀とか好きですねぇ。

鳳凰とか孔雀なんていうのは、とても豪華だし、

山鳩や雀はかわいいし・・・。

これから「鳥」の柄も出していきます。

またご覧下さいね。



扇柄ウチの母も多いです。年齢的なものですかしら。

開いたのや閉じたの、気に入ってるのがあるんですが

まだ譲ってくれませーん!

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