最近入手です。これは「主婦の友」の付録です。昭和8年とありますから、
今から75年前のもの、よくとってありましたよね。
それにしても「おたふくさん」ですなぁ、当時の美人は平安美人??
これ、本と書きましたが、正確には本ではなくて、
一枚ずつのページが、二つ折りになってまとめてあるんです。
最初に見たときは「綴じ」が切れてバラバラになっているのかと思ったのですが、
そうではなくて最初からそういう作りでした。
一枚ずつ広げて見られるようにしたのかもしれません。
表紙裏にインデックスがあるんですが、そこにも「全38枚」とあります。
完全ではありませんで数枚たりません、しかも一番きれいな婚礼衣装関係が…。
まぁぜーたくは言えませんね。
一枚ずつ、全部カラーです。こんな感じ。
当時としては豪華だったんじゃないでしょうか。
しかも一枚ずつの裏にはびっしりと作り方が書いてあります。
ちなみに上の黒い振袖は「婚礼用の黒振袖一揃」です。
昭和の初期にはやった「花嫁振袖」ですね。
そしてこちらは「普段着物・街着」類なんですが、冬物でタイトルが、
「口綿入れ通し下着の女襲物」、くちわたいれとおししたぎのおんなかさねもの。
なんたって現物は、右から書いてあるのでよけい読みづらくて…。
通し下着、というのは、通常襲の場合の中着は、別布を使って
胴貫きで仕立てますが、全て同じ生地を使うことをいいます。
たとえば右の着物なら、薄いブルーの着物、じゅばんのように見えますが
「中着」です。
襲の着物ばかり出ているので、説明をよくよく読みましたら、
おもしろいことが書いてありました。
仮名遣いだけ現代風にして、原文のまま載せますと…
「襲物-裾模様、訪問服など、あらたまらない縞物、絣、小紋などのような
ちょっとした外出用の襲物は、お若い方にはさしてうけませんが、
中年向き、老年向きには、なんといっても襲物です」
裾模様とは留袖や振袖のこと、訪問服は訪問着ですね。
あらたまらない縞物、は染やお召しの縞柄のもの、絣は紬・銘仙でしょう。
本に書いてあるからといって、全部が正しい情報とは限りませんが、
主婦の友の付録ですし、まぁ信頼性は高いと思います。
その中で「若いヒトには襲は受けない」とあります。
このころから「襲はアタリマエ」ではなくなってきていたんですね。
(「襲」については、ギャラリーに説明がありますので、こちらをどうぞ)
中年老年はやっぱり襲、と言っているのは、しきたりとか習慣というだけでなく、
たぶんに「防寒」の意味があったと思います。
なにしろこれ「綿入れの着物」ですから。
綿入れというと、なんかイマドキの「綿入れ半天」のモコモコを連想しますが、
着物に綿を入れる場合はというのは、ごく薄い真綿のこと。
そんなにモコモコはしません。
更に「襲の場合は表着に綿を入れ、中着は口綿にするのが流行」とあります。
口綿とは、袖口のふきの部分に綿をいれること。
少しでもすっきり見せる工夫、動きやすい工夫、ということでしょうね。
こちらが若向き、の襲、ちょっと分かりにくいのですが、
一番右の緑色と一番左ので「襲ワンセット」、真ん中の二枚で「ワンセット」
よく見ると、左右のセットは同じ裾回しがついています。
中のセットは無地のおそろい裾回し(印刷技術で違う色に見えますが)、
これがこの頃の「流行」だそうです。
この本、手に入れてから気がついたのですが、
以前入手した本が同じ昭和8年の「主婦の友付録」で三月号、
こちらが四月号なのです。
以前の「三月号」の記事にも書いたのですが、
昭和の初期は、すでに少しずつ世情は戦争の色が見えてきていました。
更にはこの本にあるように、若い人には「襲」はウケない、
さらに数年後には、襲も何も防寒だけでなくもったいないから何でも作り変えて、
大事に着ましょう、になり、古い着物や襦袢だったもので中着を作るなど、
色も柄もいってられなくなって、しまいには着物は着てはいけないもの、
になったわけです。襲はたしかに現実的には着づらいものです。
いまよりずっとルーズな着かただった頃には、少々のモコモコ感も、
おはしょり不細工も、それほど気にならなかったのかもしれませんが、
「着物など着てる場合か、もんぺをはきなさい」の時代を過ぎ、
やがてもう一度着るようなころには、世の中にモノがなく、
あげくに洋装文化のおかげで、着物もシャープにスマートにきっちり着る、
なんてことになって、襲は実情にあわなくなって消えていったのですね。
暖房の進化や、女性の社会進出など、ひとつだけではない理由でしょうが、
襲は忘れられていき、僅かに留袖にだけ「比翼」と言う形で残りました。
オークションには、よくこの中着だけが出てきます。
つまりかろうじて持ってはいても、結局は上しか着なくなって、
中着だけが残されたのでしょうね。
今や売ってる人がなんだか分からずに「昔のじゅばん」だとか、
「パッチワークのじゅばん」なんて書いてあるときがあります。
襲の中着って、時として表着より美しいものもあるんですけどねぇ。
こちらは、二枚目の「口綿入れ…」の着物三枚のうちの一番左の着物の、
通し中着の柄、元の写真からしてボケているのできれいに出ませんが
「絵馬散らし」ですよ。シャレてますね。
ラストは「コート」…ハデじゃ…。
これらはみんなウールだそうです。先の「三月号」のときに、
すでに戦火の様相で、少しずつ贅沢は出来なくなっていったようだ…、
と書いたのですが、一ヶ月違いでこの付録はけっこう贅沢なものがでています。
どっちなんだろうと思ってましたが、ここにちゃんと書いてありました。
「いずれも国産の毛織物…中略…これが国産物などとおどろいてはいけませぬ。
すでに内地品は、舶来品に勝るとも決しておとらぬと…」
つまり、すでに輸入がだめになってきていたのですね。
昭和の初期なら、まだまだ女性が日常的に着物を着ていた時代です。
毎日身につけるものが、原料からしてだんだんなくなってゆく。
とても不安であったろうと思います。
そんなたいへんな時代を乗り越えてきた着物です。
ゆったり長く、つたえていきたいものです。
まだ写真がありますので、この続きはまた明日、明日は帯も載せましょう。
今から75年前のもの、よくとってありましたよね。
それにしても「おたふくさん」ですなぁ、当時の美人は平安美人??
これ、本と書きましたが、正確には本ではなくて、
一枚ずつのページが、二つ折りになってまとめてあるんです。
最初に見たときは「綴じ」が切れてバラバラになっているのかと思ったのですが、
そうではなくて最初からそういう作りでした。
一枚ずつ広げて見られるようにしたのかもしれません。
表紙裏にインデックスがあるんですが、そこにも「全38枚」とあります。
完全ではありませんで数枚たりません、しかも一番きれいな婚礼衣装関係が…。
まぁぜーたくは言えませんね。
一枚ずつ、全部カラーです。こんな感じ。
当時としては豪華だったんじゃないでしょうか。
しかも一枚ずつの裏にはびっしりと作り方が書いてあります。
ちなみに上の黒い振袖は「婚礼用の黒振袖一揃」です。
昭和の初期にはやった「花嫁振袖」ですね。
そしてこちらは「普段着物・街着」類なんですが、冬物でタイトルが、
「口綿入れ通し下着の女襲物」、くちわたいれとおししたぎのおんなかさねもの。
なんたって現物は、右から書いてあるのでよけい読みづらくて…。
通し下着、というのは、通常襲の場合の中着は、別布を使って
胴貫きで仕立てますが、全て同じ生地を使うことをいいます。
たとえば右の着物なら、薄いブルーの着物、じゅばんのように見えますが
「中着」です。
襲の着物ばかり出ているので、説明をよくよく読みましたら、
おもしろいことが書いてありました。
仮名遣いだけ現代風にして、原文のまま載せますと…
「襲物-裾模様、訪問服など、あらたまらない縞物、絣、小紋などのような
ちょっとした外出用の襲物は、お若い方にはさしてうけませんが、
中年向き、老年向きには、なんといっても襲物です」
裾模様とは留袖や振袖のこと、訪問服は訪問着ですね。
あらたまらない縞物、は染やお召しの縞柄のもの、絣は紬・銘仙でしょう。
本に書いてあるからといって、全部が正しい情報とは限りませんが、
主婦の友の付録ですし、まぁ信頼性は高いと思います。
その中で「若いヒトには襲は受けない」とあります。
このころから「襲はアタリマエ」ではなくなってきていたんですね。
(「襲」については、ギャラリーに説明がありますので、こちらをどうぞ)
中年老年はやっぱり襲、と言っているのは、しきたりとか習慣というだけでなく、
たぶんに「防寒」の意味があったと思います。
なにしろこれ「綿入れの着物」ですから。
綿入れというと、なんかイマドキの「綿入れ半天」のモコモコを連想しますが、
着物に綿を入れる場合はというのは、ごく薄い真綿のこと。
そんなにモコモコはしません。
更に「襲の場合は表着に綿を入れ、中着は口綿にするのが流行」とあります。
口綿とは、袖口のふきの部分に綿をいれること。
少しでもすっきり見せる工夫、動きやすい工夫、ということでしょうね。
こちらが若向き、の襲、ちょっと分かりにくいのですが、
一番右の緑色と一番左ので「襲ワンセット」、真ん中の二枚で「ワンセット」
よく見ると、左右のセットは同じ裾回しがついています。
中のセットは無地のおそろい裾回し(印刷技術で違う色に見えますが)、
これがこの頃の「流行」だそうです。
この本、手に入れてから気がついたのですが、
以前入手した本が同じ昭和8年の「主婦の友付録」で三月号、
こちらが四月号なのです。
以前の「三月号」の記事にも書いたのですが、
昭和の初期は、すでに少しずつ世情は戦争の色が見えてきていました。
更にはこの本にあるように、若い人には「襲」はウケない、
さらに数年後には、襲も何も防寒だけでなくもったいないから何でも作り変えて、
大事に着ましょう、になり、古い着物や襦袢だったもので中着を作るなど、
色も柄もいってられなくなって、しまいには着物は着てはいけないもの、
になったわけです。襲はたしかに現実的には着づらいものです。
いまよりずっとルーズな着かただった頃には、少々のモコモコ感も、
おはしょり不細工も、それほど気にならなかったのかもしれませんが、
「着物など着てる場合か、もんぺをはきなさい」の時代を過ぎ、
やがてもう一度着るようなころには、世の中にモノがなく、
あげくに洋装文化のおかげで、着物もシャープにスマートにきっちり着る、
なんてことになって、襲は実情にあわなくなって消えていったのですね。
暖房の進化や、女性の社会進出など、ひとつだけではない理由でしょうが、
襲は忘れられていき、僅かに留袖にだけ「比翼」と言う形で残りました。
オークションには、よくこの中着だけが出てきます。
つまりかろうじて持ってはいても、結局は上しか着なくなって、
中着だけが残されたのでしょうね。
今や売ってる人がなんだか分からずに「昔のじゅばん」だとか、
「パッチワークのじゅばん」なんて書いてあるときがあります。
襲の中着って、時として表着より美しいものもあるんですけどねぇ。
こちらは、二枚目の「口綿入れ…」の着物三枚のうちの一番左の着物の、
通し中着の柄、元の写真からしてボケているのできれいに出ませんが
「絵馬散らし」ですよ。シャレてますね。
ラストは「コート」…ハデじゃ…。
これらはみんなウールだそうです。先の「三月号」のときに、
すでに戦火の様相で、少しずつ贅沢は出来なくなっていったようだ…、
と書いたのですが、一ヶ月違いでこの付録はけっこう贅沢なものがでています。
どっちなんだろうと思ってましたが、ここにちゃんと書いてありました。
「いずれも国産の毛織物…中略…これが国産物などとおどろいてはいけませぬ。
すでに内地品は、舶来品に勝るとも決しておとらぬと…」
つまり、すでに輸入がだめになってきていたのですね。
昭和の初期なら、まだまだ女性が日常的に着物を着ていた時代です。
毎日身につけるものが、原料からしてだんだんなくなってゆく。
とても不安であったろうと思います。
そんなたいへんな時代を乗り越えてきた着物です。
ゆったり長く、つたえていきたいものです。
まだ写真がありますので、この続きはまた明日、明日は帯も載せましょう。
昨日の話題になってしまいますが、テレカ、うちではまだ現役で使ってます。仕事先で切れたりするとコンビニで購入して使ったりしてます。携帯持ってないもので・・、NTTに物申す!公衆電話減らすな!
襲の着物を見てきました。ステキでしたよ。
着付けを習っていた頃、今でも時折襲の留袖を
持ってきて着付けを頼まれる事があるとお聞き
しました。二枚一緒に着せなければいけないので
着付けが大変だそうです。
昔の人はよく器用に着たんだなと思います。
どうにも着にくく、比翼に仕立て直したのですが、その白下着、まったくの着物と同じでしたので、白喪服(我が地方は喪主になった時だけ白喪服なのです)にしました。舅姑の葬儀に着ました。
身幅が足りなかったのですが、今では挨拶は立ったままでしたのでかろうじてセーフでした。
あの阿呆程熱い湯に浸かったのを想い出します。
おっと横道にそれました。
とんぼさん、少しご無沙汰です。
先日、埼玉の方が来られて、「こうもり」の柄を染めて欲しいと言われました。
「あっ」と驚き桃ノ木だったのですが、ブログを見た訳でもないのに「こうもり」とは。
蜘蛛の巣かこうもりを道行コートになんです。
ここに、とんぼさんのお友達がいましたね。
正式にやる事になったら、形は変えますが図案を見せてとんぼさんの了解の元に進めていきます。
来年の話になるかも知れませんが。
とんぼさんのこうもりのブログから何人かの人から問合せや別注を頂いています。
有難い言です。
感謝申し上げます。
また宣伝してね。
冬を惜しむ、また粋なことを…。
お疲れ様でした。足は大丈夫ですか?
私くらいになりますとね、次の日ではなく、
2~3日たってから筋肉痛がくるんですー。
公衆電話、ほんとに減りましたよね。
まだまだ使う人はいると思うんですが、
勝手なものです。
陽花様
ステキなショーだったようですね。
昔の着物の柄、大ぶりでステキですね。
襲は昔のように、おはしょりあとで、
全体にぼてーでれーっと着ないと
たいへんですよね。
今にそぐわないのは仕方のないことですね。
蜆子様
いつもながら、よいものをお持ちで驚きます。
いろいろに使いまわしもできて、さすがですね。
otyukun様
あらまぁ、嬉しいお仲間ですねぇ。
私のことなど気になさらず、
お客様のお望みを、かなえてあげてください。
いいですねぇかわほりも蜘蛛の巣も。
ちょっと違う、をもっと楽しんでほしいです。
ご注文が増えて、私も嬉しいです。
もっとふえるといいなぁ。