お久しぶりで「古布」です。
典型的な「道具柄、それほど古いものではありません。
昭和30年代くらいでしょうか・・。
袖1枚分のはぎれです。着物というより羽織っぽい柄ですね。
小紋なので、さかさまの部分をもう一枚・・。
デフォルメされすぎてて、なんだかわからないものもありますが、
だいたいはなんとか・・。鍋、釜、はさみ、握りばさみ、土瓶、ゲタ、
火鉢、炭かご、桶、ダルマストーブ?、斧、草履、風鈴・・・。
まぁ脈絡なく、とにかく家のうちそとにありそうなものを、次々並べたようです。
私が見てわかるものでも、今の人にはわからない、というものもあるでしょうね。
土瓶を知らない若い友人がいました。いわく「大型の急須」・・まぁねぇ。
昔の道具もどんどんなくなり、いまや珍しいインテリアになったりしてます。
今日、友人に「伸子張」の道具一組を、譲りました。
身頃一枚だけ干すにしても、布だけで3メートル、その前後分合わせて
4メートルはないと干せないよ・・といったら「うっ」と詰まって、
近くの公園で・・だめだめ、子供がケガする・・・。
最終的に家の中で干すから・・ということになりました。
昔はマンションなんて背の高い建物はなかったし、庭がせまけりゃ
路地の奥とか、隣の庭まで越境して・・なんてやれたんですけどね。
子供たちが下を通ると「危ないから!」と叱られて・・。
伸子張の伸子は細い竹ひごで、その両端に、ごくちいさい「針」がついています。
その針を布の両端に突き刺し、竹の元に戻ろうとする力を利用して、
布をピンと張って乾かすわけですが、私もこれを使うようになって
アイロンかけるよりよっぽどいいと、昔の人の知恵に感心しました。
伸子にはいろいろ長さや太さがあります。鬼しぼちりめんのように、
思いっきり縮むものは、やはり少し強くひっぱらないと「布巾」がでません。
紬などは最初から平らで伸縮もありませんから、細めのもので大丈夫です。
実は、伸子の短いものが足りず、さんざんネットでもみつからず・・、
ついに、いつもお世話になっているネットの友人が、昔のご縁があるとのことで
紹介してくださり、やっとたどりつきました。京都にありました。
「どんな長さがよろしおすやろなぁ」・・となれた様子で応対してくださって、
すぐに真新しい「伸子」がつきました。今でもまだそれを作って売っている・・
ということにカンゲキしてしまいました。
今、てあぶり(小さい火鉢)が欲しいのですが、火鉢とか、七輪とか、
炭を使うものは、今の「気密性」の高い住宅では事故の元・・と言われました。
確かにそうかもしれません。昔は隙間風、あたりまえでしたものね。
元々、日本の家屋というのは、大雪の地方は別として、
太古の昔から、冬の寒さよりも夏の暑さを避けることを重点的に作られました。
御所の寝殿造りなどもそうですが、湿気を上げないために床を高くし、
強い日差しをさけるために軒を深くし、風が隅々まで通るように
できるだけ壁や部屋のしきりを作りませんでした。
後年「部屋」というものが細かく仕切られるようになっても、
壁よりは襖、障子といったものを多く使って区切るようにしました。
これは、襖などをはずせば広くなる、という利点とともに、
「通気」を考慮したものです。今でも京都の古い家では、衣更えとともに
襖をはずして「葦戸」にしたりしますね。
高温多湿の日本では、冬の寒さよりも夏の暑さの方が厳しかったわけです。
確かに、寒さはたとえ手の先だけでも「火」というものがあればなんとかなるし、
上に重ねて着ればいい(あれば・・ですが)、でも暑さは全部脱いでも
まだ暑い!湿度が高いので日のあたらないところにいても蒸し暑い・・。
それで「風」を大切にしたわけですね。そのために「夜も戸をあけて寝る」、
そのために「蚊帳」ができ、「蚊遣り」が生まれた・・。
暮らしはそうやって工夫の積み重ねで道具を生み出してきたわけですね。
クーラーの普及で、夏になっても蚊帳もいらない、蚊遣りもうちわも、
無用の長物のようになってしまいましたが、涼しげな朝顔の絵のうちわが
ひとつおいてあるだけで「眼に涼しい」ものです。
あってもあまり役に立たないけど、なくなったら寂しいな・・という道具、
としのせいかそんなものに眼がいくようになりました。
着物の柄として、こんな風にいろいろな道具をこまごまと並べたものは、
ときどき見かけます。母親が娘の嫁入りに「モノに不自由しないように」
という思いで持たせることも多かったのではないでしょうか・・。
私の母も、ありとあらゆるものを「もっていけ」と荷物にしてくれました。
新居(ちっちゃなアパートで、モノがあふれました)について、
大きなカンをあけたら「上白糖」の1キロ袋が5個もギュウギュウに詰まっていて
まぁ・・ありがたかったんですけどね、二人暮らしじゃ、それほど早くは
なくなりません。後の方はもう固まってしまって、使うたびに
カナヅチでいくつかの固まりに割り、電子レンジでチーン・・。
いったいどれくらい砂糖を買わずにいられたことか・・ありがたき親の思い、
感謝しております。
珍しいですね、通り庭とか。
戸をかえるとか、スダレや風鈴をさげるとか・・。
今よりずっと季節が感じられましたね。
蚊帳って中はけっこうアツいんですよね。
出たり入ったりあんまりするなって怒られましたっけ
虫の声が今よりずっと近くに聞こえた気がします。
いい思いでです。
私の実家は、まだエアコン付けてないんですよ。
昔の四間取りでつい最近まで通り庭だったんです。
都会と違って家が密集していないからかも知れませんが、意外と風が通ります。夏は建具を葦戸に替えてますね。蚊帳も懐かしいですね。