ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

昔の娯楽柄

2011-07-04 03:02:07 | 着物・古布

 

男物じゅばん「狂言の舞台」柄です。 

今の時代は、お芝居、映画、コンサート…旅行にグルメ、趣味の集まり…と、

娯楽と名のつくものは数え切れません。

母が若かったころは「時代が時代だったから、女一人で映画をみることさえうるさかった」といってました。

それでもこっそり見に行っていたらしく「舞踏会の手帖」は、すばらしかった」とも。

母のお気に入りは、ハンフリー・ボガードと、映画はそんなに見ていないと思うのですがグレタ・ガルボでした。

 

それはともかく…、時代時代で「娯楽」というものもさまざまですが、歌舞音曲はいつの時代も人々を魅了するもの。

狂言もそのひとつで、能は面をつけ、舞の要素の多いどちらかというと精神世界を現す悲劇的なストーリーが多く、

狂言は、原則「スッピン」で、舞というより所作もせりふも面白おかしく、今で言うならコントのような?

あははとかクスクスとか…笑う要素のストーリーが多いわけです。 

また、歌舞伎や能と同じく「祝い事」の踊りもあります。

このじゅばんの絵がそうらしいです。右側に「壽狂言」とあり、左に「文殊猿」とあります。

調べてみると、お祝い事のときに、この文殊猿というものが舞われているので、たぶんそうだと思います。

カオがいい加減ですが、まぁまぁ体のラインなどはうまく描けてるかな…というところ。

 

     

     

左下の絵は、芝居小屋の入り口、たて看板には演目などが書かれていますが、ご勘弁ください、読めません。

ただ、一番上、屋根の上に載っているやぐらのようなものには「きょうげんづくし」と「市むら」と書いてあります。

これは「市村座」の小屋というわけです。細かいけど…もう少し何か「華」がほしいですね。

あっさりしすぎてる感じです。

 

     

 

とまぁ、ここまでが上の柄の説明なんですが、もう大雑把もいいとこ…実は、この絵にはさして興味がないんです。

これをを入手する気になったのは、ひとえに下のほうに入っていたこちらの絵がよかったから。

狂言の舞台絵なんかなくていいから、コレだけ背中にあったらよかったのに…とヒドイこと言ってます。

 

   

 

ほんっと「ここだけあればいい」…まだ言ってる…。

もうちょっとカメラ寄せちゃうっ!

 

   

 

人形遣い、人形のほうは「三番叟」のようです。ろうそくは当時の「スポットライト」ですね。

じゅばんの絵は「浮世絵風」で、若衆髷の形も特徴的、絵の右側にあるのは、

人形の「かしら」などをいれる箱でしょうかね。

 

実は「芸能」関係の歴史って、ほんとにややこしいのです。

ひとつ調べると、あっちもこっちもかかわってくるし…なので、これまた大雑把ですが、

大元の大元、つまり日本でさまざまな芸能の元になったのは「散楽」、「猿楽」の語源ともいわれています。

元々そういうものは宗教にかかわることが始まりです。あるものは貴族に庇護されたり、

あるものは神社に庇護されたり、寺の庇護、武家の庇護など、

さまざまな形で芸ひとつずつが専業化?していったわけです。

また庇護されたものからこぼれおちるように、流れ暮らしの中で芸を見せるものも増えていきました。

「人形」というのは、木の形代(かたしろ)に、人の穢れを移すなどの神事の「形代」が人形(ひとがた)になったもの。

で、コレもいろいろ分かれまして、いちばん出世したのは「文楽」、いわゆる「人形浄瑠璃」です。

そのほかにも、一人で操ったりグループで組んだりの、いわば大道芸的な「人形遣い」もおりました。

 

文楽では、ひとつの人形を三人で操りますし、舞台装置も衣装も、大掛かりですね。

この若衆、前髪立ち、つまり元服前です。少年、ですね。この若さではまだ一人前ではないと思いますから、

お手伝い、人形の付き人??程度かと思ったのですが…ハタと思い出したことがあります。

 

実は、上村松園さんの「人形遣い」という絵がある…と、前にも書きました。

著作権がありますから、やたらと絵はアップできないので、せめてアドレスのご紹介を…と思ったのですが…。

画像検索しても、この絵がでてきません。正確には「一枚」しかでてこない…です。

この「人形遣い」の右側の絵だけは、よくでます。たとえばこちら

いくら探してもこの1枚しか出てきません。この絵の特徴は、空白の広さ…でして、

人物がいるのは狭く開けられたふすまの間と、廊下の女性だけ。その目線の先に人形遣いがいるわけですが、

どの「評」を見ても、人形遣いの姿はなくても、楽しんでいる人たちの表情がいいとかなんとか。

人形遣いは、いるのです。実は最初は二枚描かれ、ふすまの開いた絵とその左の人形遣い、の一組だったのですが、

そのあとふすまの開いたほうの絵だけ、横に広くして新しく描き、これを屏風にしたのです。

よく展覧会などで展示されているのはそちらです。所蔵は奈良の「松伯美術館」。

下絵から新しく描き起こしていますので、コピーしたようにおんなじ…なんですが、よくよく見れば、

元の絵とはかんざしや着物の色柄が、ちょっとずつ違いますし、

元の絵は、廊下の女性のすぐ左側で切れている縦長の一幅です。

 

で、この最初に書かれた「左側の人形遣い」は、私の持っている画集には入っているのですが、

裃に長袴のいでたち、脇差もありませんが「武士」のような装束です。

そのうしろに前髪に小さな頭巾をつけた少年が座っていてその前に鼓があり、

扇で口元を隠しながら、 謡いをやっているようです。お屋敷に呼ばれて、芸を披露しているのでしょう。

つまり、このじゅばんの少年も、そういう立場だったのかもしれませんね。

 

というわけで、上のあんまり上手でない狂言ほったらかしで、人形遣いばかり眺めてる私です。


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2 コメント

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Unknown (陽花)
2011-07-04 17:52:03
田舎育ちですから、楽しみは盆踊りや
町民運動会、学芸会などでした。娯楽施設が
ない分みんなで盛り上がりました。

松伯美術館、近くを通っていても中へ入った
事はありません。
一度行ってみようかな。
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Unknown (とんぼ)
2011-07-04 18:13:06
陽花様

今は娯楽、なんていう言い方も古いのでしょうね。
私も毎年の町のお祭り、楽しみでした。即席部隊ができて、のど自慢とか、
ちょっとしたお芝居なんかもあったと思います。
懐かしいですねぇ。

松伯美術館、一度行ってみたいと常々思っています。お近くなんですよね。
上村家三代の美術館ですからねぇ。
私は息子さんの松篁さんの、お花の絵、好きです。
いつかご一緒したいですねぇ。
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