よそ様のブログのお話からお題を頂きまして、申し訳ないのですが…。
ある50代の女性が、広告で見かけた、いわゆる「大手」と呼ばれる呉服屋で、
留袖と帯のセットを購入なさったのだそうな。
無事結婚式終了後、買ったところへクリーニングに出したところ、
脇の下が広範囲に変色していたそうで。問い合わせると「シミの鑑定書」なるものが出され、
「ファンデーション汚れだ」と…。脇の下にファンデーション?厚化粧のひとに、ヘッドロックでもかけた?
まぁこのあとのことは別のかたに相談し、直し代について話し合ったら…とアドバイスがあったり…
で、決着についてはわからないのですが…。
ここまでの内容で、私は今の着物事情の問題がいろいろあふれてしまっている…と思いました。
今の50代といえば、すでに親は特別のときしか着物を着ていないでしょうし、
着物についての伝承もなくなっている年代です。
私のようにうるさい親に、あーだこーだと教えてもらっていなくても、フシギはありません。
なので、このご婦人も「着物はよくわからない」世代。
さて…まず問題の第一、買ったところにクリーニングに出した…どういうクリーニングでしょう。
着物のクリーニングは「丸洗い・生き洗い・洗い張り」とまぁ三種類くらいあります。
お店によっては、便宜上「丸」も「生き」も同じようにいっているところもありますが、
基本的なことを言えば、丸洗いは普通のクリーニング、生き洗いは「ちょっと丁寧」、です。
つまり「生き洗い」ですと、ほとんどの場合、一枚ずつ丁寧に調べて、シミや汚れをチェックし、
それもきれいにして、そのあとでクリーニングです。この場合のクリーニングはどちらも当然「ドライ」。
「ファンデーションです」と、鑑定がでたところでおかしい…ドライなら落ちる…のですよ。
ドライでは汗ジミは落ちません。水性の汚れですから。ドライは「油性汚れ」を落とすのです。
だから皮脂とか、ファンデーションは基本的には「落ちて当たり前」なのですよ。
どうするとこういう「鑑定」がでるのでしようね。
これは「変色」、つまり脇の汗ジミが原因とは思うのですが、そうなると1回着て、1回洗って変色?
相談されたという方が「お気の毒でいえなかったが、染がわるいのであろう」と…。
普通、黒を染めるのは一度では染めません。下染めに赤や青を染めてから、黒をかけます。
いえ最近の化学染料についてはぞんじませんが…。
赤は紅下黒、青は藍下黒といいます。これをすると黒に深みが出る…。
いえね、黒という色は、それだけ見ていれば、どれだって黒なんです。
ところが、例えば男物の紋付や喪服などを何枚か並べてみると、どれもビミョウに違うんですね。
ちょっと前までは、喪服は関西はちりめん、関東は羽二重…が普通でした。
私が嫁入りに持ってきたものも「羽二重」です。でも最近は関東もちりめんが多くなっているのですと。
実は羽二重というのは薄手でスルンとしていて、やや光沢があります。テカテカはしていませんけどね。
この「平ら」であるということが、黒を白っぽく光らせてしまうのです。
全員が羽二重だとわからないんですが、ちりめんの喪服のなかに、羽二重の喪服で入ると、
明らかにわかります。なんとなく白っぽくなってしまうのですね。なので、関東でもちりめんが…と聞いています。
素材の違いからくる白っぽさはしかたありませんが、染めの違いで1回で色変わりはひどいです。
時代小説を読むと、黒紋付のことを「うらぶれて羊羹色をした紋付の…」なんていう表現があります。
紅下の黒は、色あせてくると地の紅が浮いたように、まさしく羊羹のような色になります。
それでもねぇ、羊羹色の前に「ファンデーションです」なんていう変色って…それで何十万もしたと…。
詐欺でしょうこりゃ。
はい、次の問題点、この方は着物のことをご存じないので、広告を頼りに「大手」というところへ…
この「大手」がどこなのかはわかりませんが、呉服屋は大手がいいとは限らない…と、私は思っています。
セットもの、と呼ばれるものも、お勧めしません。
あるサイトで「あの『さ○美』の振袖セットは、全部中国でのインクジェットってほんと?」という質問がありました。
私は少なくとも大手でよく出る「セットもの」で国産はほぼないと考えてもいいと思っています。
どれもこれもインクジェットだとは申しませんが、絹、染め、織り、刺繍や金糸…とあれこれ考え合わせれば、
○十万という価格で、着物も帯も、じゅばんまでも、まとめて国産で作るのは無理です。
今、繭そのものがほとんど輸入。中国とブラジルではブラジル産が良。
元々日本人が着物から離れ、やがて「高いから買わない」になり、それなら安く作るには…で、
製作する人たちは、工賃の安い海外に「場」を求めたわけです。
染の歴史のあるインド、刺繍の得意なベトナム…あちこちでつくられたものを日本に戻すわけですから、
当然、大量生産でなければ採算が合いません。で、展示会商法なんてものが出たわけです。
いまや「日本の着物の作り方はわかったので、自分たちで工場を作るから」と、使われる立場から、
対等に商売できる立場になるものが出てきたのは、何も電化製品ばかりではありません。
もうひとつ悪いのは、そういうものを逆に「高価」で販売する業者がいることです。
セットだからお安いのです、と言いながら、その価格より本当はもっと安いものを売る…。
でも、自分が着物というものについてよくわからないために、なにかあったとき、
なんでそうなったか、どうしたらいいのかわからない…結局泣き寝入り?
くだんの「色変わり」は、悉皆でなんとかなりますが、元が元ですからねぇ。
例えば…普段買わないような高価なものを買おうとするとき、
そうですね、100万のダイヤの指輪とか、新型の車とか、もっとおおきければ「家」とか…。
まずなにをするか…リサーチですよね。
そのへんのお店にパッと入って「あらこれいいわぁ、買うぅ」は、よほどのお金持ちでなければまずないでしょう。
お店が信用できるところかどうか、その品物の「いい」といわれる基準は何なのか、
それはどういうものなのか、カタログを見たり、お店にいってみたり、人から話を聞いたり…。
着物だと、わからないから…が先で、有名なとこだから言って聞く?そこがストレートです。
つまり、周囲に着物を着る人が、そうそういないからなんですね。
それで評判がよくないといわれる、大手の「テ」に引っかかったりします。
友人に「有名大手」のヤリ手売り子さんだったヒトがいます。
振袖の販売が始まると、ノルマが課せられる、だからはいってきた客は逃がさない。
親が主導権握っていそうな親子なら親に付く。
親の意見に娘がしぶったら「振袖はやはり、お母様のお勧めの古典柄がの方がいいですよ」と言い
娘が主導権持っていたら、首かしげる親に「今はこういう現代的なのがはやりですし、
お嬢様にはこちらの方が着映えがしますよ」という…。
よせばいいのにと思うような色柄でも、気に入ってこれがいいと騒げば「よくお似合いです」とほめる…。
成績優秀で、売り上げ伸びない支店に派遣された、凄腕さんのいったことです。
目標、一週間で一人何十セット、といわれたら、お客様に喜んでいただく着物を売るより、
成績を上げることの方が目標になるのよと。
私はいつも、町の呉服屋さんを歩いてくださいと言います。
呉服屋さんて敷居が高いのよね、とよく耳にします。
もちろん、やたら売ろうとする呉服屋さんも、ぶあいそな呉服屋さんもあるかもしれません。
それなら「考えてきます」と出て、二度と行かなきゃいいのです。
元々呉服屋さんなんて、食べ物関係や薬局みたいに、入ってきたお客が必ず何か買っていく…
なんていう商売ではないのです。必ずそこで買わなきゃならないことはないし、
あちらだって入ってきたぞ、ゼッタイ買ってくれるだろ…はありません。まずは「ご縁を」くらいです。
だから、例えば腰紐ありますか、伊達締めください、で入って、それとなく聞くこともいいし、
ストレートに「留袖を作るにはどういうところに気をつければいいか」と聞いてもいのです。
友人に転勤族の奥さんがいまして、着物もすきだったので転勤すると町の呉服屋を訪ね歩く…
そして古い着物を一枚持って質問するのだそうです。
「親戚からもらったんですけど、私よくわからなくて…これ、どういうものでしょう」…。
これでテストするのですと。こわいねぇといったのですが、一番いい方法かもです。
余裕があれば、一度じゅばん程度の「丸洗い」をお願いするといいです。
客あしらい、商談の進め方、そういうものもわかります。ちなみに「ウチで作ったものじゃないから」は、
ほとんどありません。あったら逆にやめたほうがいいです。
出来上がりの納期の確実さや、洗いの具合、そういうものもチェックです。
洋服なら、知識も情報もたくさん持っているから、初めてのお店でもちゃっちゃと入って、
自分の希望のものをゲットする…着物はわからないから…確かにそうだと思うんですけどね。
医者だって「セカンド・オピニオン」といわれる時代です。
わからないものだからこそ、リサーチをする必要がある…身近に相談相手がいなければ、
そこからはじめてほしいものです。
そして、勉強もしてほしいと思います。着物をクリーニングに出すときは「丸洗い、生き洗い」を
自分で決めること。あちらにお任せなら「生き洗いか丸洗いか」確認すること。
洋服も着物もかわりゃしません、ファンデーションはドライで落ちると知ること。
最後に念のため申し上げますが、私は「大手」はどこもダメだ、うそつきだといっているわけではありません。
大手だろうが、小売店だろうが、まじめにお客本位でやっているところもちゃんとあります。
それを見極める目を育てる賢さが、必要なことではないかと思うのです。
遭うと怖くて着物を買えなくなるでしょうね。
最近は何のお仕事もノルマがあるようで
売れればいいというのが見え見えですね。
本当に賢くならなければ泣きをみますね。
チェーン店に行くくらいなら、なぜその地域の古い百貨店に行かないのか、と思うのですが。
百貨店は決して高くないし、古くから呉服コーナーがある店なら長年のお客さんが付いてますから、ある程度きちんとしたものしか置いてないし、対応もちゃんとしてるのに。
着物を着始めたばかりの方が「呉服屋は怖い」と言っていたのを思い出しました。
見せて欲しくて入ったら、いきなり予算を聞かれて品物が出てきて店員の手には電卓が・・・
こういうお店には二度と行かなければ良いのでは?と思ったんですけど。
「知らないから教えてもらいたい」にノルマの強制がついつい付け込む道筋になるのでしょうね。
大手ばかりでは無いですね。
着物ブロガーに結構人気のあるお店でも、ずいぶんひどい話を聞いたことがあります。
「敷居が高い」と仰る方が多い老舗なんかの方が、却って親切ですし「お客を育てよう」という気持ちを持ったお店が多いように感じましたけど・・・20年以上も昔の体験だと、もう役に立ちませんかしらねぇ?
それが一番こわいです。
だから着物はいやだ…なんていわれてしまう…。
ノルマとはいえ、いやな話を聞いたと思いました。
もっとすごい話もありましたよ。
私なんか、船橋の呉服屋の知り合いには、あからさまに
「展示会きてよ、枯れ木も山のにぎわいだから」って
言われましたよ。失礼でしょ。
店舗が数あると、有名だ、安心だ…というのは、
ブランド物とか、そういうながれなんでしょうか。
私も呉服屋を探すのが不安なら高島屋にいきなさいと、
友人たちには言ってます。
価格に見合ったものを買えるということの安心を、
わかってほしいものですね。
私なんかはもう図々しいのが当たり前ですから、
買わないといったら買わないから、と、
ヘーキでいやな客になれますから、
大概のところでも怖くはありませんが、
取り囲まれたりしたら怖いですよね。
まずは入ってみれば…なのですが、
ほんとに「お客を育て、お客に育てられ」というお店が、
減ってきましたねぇ。
ほほぅ これが良く聞く羊羹色か・・・
の礼服が 実家の茶箱から出て来ました。
人様に差し上げられず かといって 捨てられず
という事で 茶箱の中で長い事寝ていたものと思われます。
友人から 呉服屋さんの展示会に一度も行った事がないので
行かないかとのお誘いがありました。
その催事では 歌舞伎の衣装も展示してある との事。
これは 危ないぞ
でも 歌舞伎の衣装をまじかで見たい
買わないし 買えないから お付き合いするか
と出掛けて行ったのですが
一人に二人の店員がつきっきりで 鬱陶しいったらありゃしない。
最後は 五人の店員に囲まれ・・・
お手頃価格という事で 十五万円の鮫小紋の反物と
五万円の袋帯を出されましたが
それとて 躾がついたままの着物や帯がある私なので
「ここは買わないと帰れないの?」と口に出し 無事に脱出。
誘ってくれた友人は
展示会には二度と脚を踏み入れられないと言っていましたし
私も この先何があっても このお店では絶対に購入する事はないと思いました。
数十万、数百万円の反物に 数百万円の帯
買えない という前に 買いたくないし
このお店に儲けさせる気は 全くない と思った次第です
書いているうちに 怒りが蘇ってきてしまった
数十万、数百万円の反物に 数百万円の帯
買えない という前に 買いたくないし
では無く
買いたくないし という前に 買えない
で ございました
新装なった歌舞伎座ビルに「歌舞伎座ギャラリー」が開設されましたので、そちらの方にお出かけ下さい。
実際に役者さんがお召しになった歌舞伎衣装が主に展示されています。
展示会は、頼まれて何度か胃ってりますが、
いい思いはしませんねぇ。
私もできるだけ「いやな客」になるよう、努めて?おります。
最近は、一回こっきりの振袖客メインの場合が多いようですね。
成人式迎えるのは、毎年いるんだから、客はなくならない…でしょうか。
あの販売員も、ほとんどはマヌカンさんですから、歩合制。
一枚、一反売ったらなんぼ…なので、しつこいんですよ。