
ハギレですから、ほんの少ししかありません。袖一枚分とちょっと。
いわゆる夏ちりめん、と呼ばれる、薄手の錦紗です。
しかし、この柄のよさ、色のよさ…。同じ夏に着るなら、こんな柄を着たいもの。
今はどうしてみんなジミ路線なんですかね。
たまに花柄があると、柄細かくて、わざわざ白地に紺だったりして、浴衣みたいに見えてしまう…。
まあこの柄を今の私が着ようというのはちと気恥ずかしい気もしますが、
うちわのところがもう少し赤を控えた色なら、着ますね。
こんなふうに色も柄も、夏を楽しむものがでないもんですかねぇ。
柄のうちわは三種、こちらは、まぁ華やかにというだけで、実際こんなうちわがあったら重いでしょうね。
但し「香り」はよさそうです。
こちらは、秋の花、撫子と萩。さらりと流れる水が涼しげですね。
こちらは「船」、字で書くと「舟」の方があってますね。
「猪牙(ちょき)」と呼ばれる、江戸時代のタクシー、はたまた乗り合いバス、更には運送トラック…。
夏物にはよく使われる舟柄です。
わらぶきのような屋根が見えていますが、舟についていて「屋形船」というよりは、
岸辺の番小屋のような感じですね。柳の枝も下がっていますし。
先日「扇子」のお話しを致しました。
過去に「うちわ」のお話しもしていますが、まぁもう一度。
うちわは中国生まれ。
考えてみれば、人間は暑きゃ大きなハッパなんかを切って扇ぐ…なんてことは考えついてあたりまえ。
この「手より大きなもので扇ぐと涼しい」ということから、道具として作られたわけですが、
うちわも扇子と同じ、まずは「身分の高い人」にとっては「ステイタス」のシンボル。
庶民は、細かい細工より、私たちもそうですが、下敷きみたいな固くて四角いものでも扇げば涼しいですよね。
そういうことから庶民は庶民でこぶりなものをいろいろ作っていたようです。
高貴な方の場合は、後ろから従者がゆったりと扇ぐ、これは大きなうちわ、
あの運動会の応援の時に使うようなサイズですね。
もちろん、運動会用とは違って、芭蕉や鳥の羽、絹などで豪華に作られたもの。
これは「翳」とかいて「さしば」と読みます。風を送るほかに、日よけや虫除けなどにも使われました。
やがて扇子と同じで、身分地位の意味を持つようになったり、祭祀や儀式などにも使われるようになりました。
形や大きさもいろいろ変化して、独自の意味を持つようになったり…わかりやすいのは「軍配」ですね。
こうなると「涼しさ」なんてのは、どこかへいっちゃいますが。
元々、日本は植物素材が豊富でしたから、実用的なものは豊富な「竹」と「紙」を使うようになった…、
というのは、うなずける話です。更に柿渋を塗って丈夫にしたのが、あの「サンマ」焼くときに扇ぐヤツです。
さて、上の柄三種のうちわの「柄」、がらではなくこちらは「え」です。ややこしいですねぇ。
それを見ると、元のところが塗りで柄模様が入ってます。
豪華なうちわですね。このように、「え」の部分が「紙を貼った部分」を抑えているタイプは「差し柄」と言います。
京都のうちわが主です。最近は、夏のご挨拶にうちわをもらう…なんてことがなくなりましたから、
あまり目にすることはなくなりましたが、うちわの柄(え)は「平柄」「丸柄」そしてこの絵の「差し柄」があります。
以前、うちわについて書いたとき、丸柄は「丸亀」が主流、「平柄」は、房州、「差し柄」は京都…と、
そう書いたのですが、今は混在…といいますか、例えば房州は元は丸だったのが後年「平」になり、
また現在の丸亀は、平柄の技術習得をして、平柄が主流になっているそうです。
「最初はね」…という話で分けると、ということですね。
差し柄は「京都」、これは元々の土地柄で、貴族の好む雅なものが、中心になったからでしょう。
京都のうちわは「朝鮮うちわ」の流れといわれています。黒塗りだったり、装飾されたものが見られますね。
考えてみれば、一本の竹からうちわを作るとして「丸柄」は細い竹をそのまま持ち手とするわけですから、
あまり太いものは使えない、平柄なら、太い竹を何本かに割って作れる…。
人間は、ちゃんと知恵を働かせながら「モノ作り」をしてきているんですね。
今年のうちわ、以前買っておいた「手作り用」の白うちわに、折り紙切って貼っただけ。
この形、ダメと言うわけではないのですが、やはりうちわは「柄」がついているほうがいいですわ。
お客様がいらしたら、体裁よく出して「疲れて」いただきましょう…そりゃない!
アンティークの着物だと夏物はナカナカよい状態のものがなくて最近は手を出すことが無くなってしまいました。
やはり夏物は結構いたむのでしょうね。
でも透け感のある涼しそうな柄は何とも魅力的ですねえ~~
夏物は傷みが多いですよね。
汗のせいで、洗う回数も多いでしょうし、
元々薄い色が多いから、ヤケもシミも目立つし…。
なかなかいいのに当たりません。
これは、夏のバッグに使えるかと思ったのですが、
青いところがちょっと汚れ感あるので、部分遣いですかねぇ。
それにしても…こういうの着たいです。
繊細で優しくて団扇の柄なんて個性的でしかもモダンと、いう事なしの図柄!!!!!
この頃の量販店にウンザリする程展示してある小花散らしの芸の無い模様、それが流行といわれれば「あ、そ」ですけど、ホント、志の低さを痛感させます。
あーゆーのが大好きなかたには<(_ _)>ですが。
私ね、すごくちっちゃい頃に見た着物の柄が刷り込みになっているのかしら、橘とか有職文様の幸い菱とかが猛烈に好きなんです。
抽象柄より具象柄、しかも古典柄がお気に入り。
近所の呉服屋さんで、しばしばハギレを見ますけど、古いものってあまり無くて、少し不満です。
テレビだったかな、京都の特産みたいな、超豪華な団扇をいろいろ見ましたけど、日用品っていうより美術工芸品、実にすんばらしかったです。
面白い形の団扇もあるんですねぇ♪
使い道は限られますねぇ。
細かくカットするなら、ちりめん細工で
全部使えますが、切り刻みたくないので…。
うちわ部分だけでバッグくらいか、
吹くさみたいにしてもいいかなとか。
いろいろ考えてはいますが、
もうこういうものは作られないとおもうと、
やたら使いたくない気もするのです。
今の呉服業界は「買ってもらわなきゃ困る」で、
古いものを伝えるというより、
今の人にうけることばかりですから。
なかなか古典は理解されませんね。
このうちわは、実際にはちと使いにくいです。
バタバタ盛大に扇ぎにくい…。
昔は、あちこちでくれたものですが、最近は
もらってもプラ製でしてねぇ。
寂しい限りです。