ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

怪しい講座…ってこの名前、ほんとアヤシイ。

2007-03-17 13:43:20 | 着物・古布

「はなかんざし」たくさん咲きました。さわるとカサカサ音がします。


肌じゅばんも、いろいろ様変わりしつつあり、
基本形からいろいろと変わったものもあります。
実際日本人の体型も、標準的なサイズも、ずいぶんかわっているわけですから、
変わっていかないほうがおかしいと思います。
特に若い方は体格がよくなったと同時に「メリハリボディ」全盛ですから、
平らな胸に、胴長寸胴、なんて、ゼッタイイヤでしょう。
ですから、着物を着るには「補正」をしてください。
肌じゅばんも、身に合ったものを、いずれは作ってみてください。
とりあえずは「すべての出発点」として、「昔ながらの肌じゅばん」です。
ただし、いきなり縫うのではなく、いろいろと余分なことを先に…。

私は今回、和裁がはじめてであると同時に「針仕事はボタンつけくらいしか」
という方も想定してお話ししております。
すでにお針仕事をこなしておられる方は、
ビギナーを応援する気持ちで、一緒にお読みくださいね。
ビギナーの方、着物が好きで、着物を着ていきたいと思ったら、
針を怖がらずに、失敗してもいいからやってみましょう。

さて、前置きが長くなりました。
いよいよですが、なんでも「ちょっとしたコツ」というのがあります。
それがシゴトをスムーズに運ぶポイントでもあります。
まず、糸はやたらと長く切らないこと。
慣れてくると「このくらいなら大丈夫」というのがわかるのですが、
最初は、途中で継ぐのがイヤだから、とやたらと長くしたり、
わからないので極端に短かったり…。どちらかといえば短いほうがマシです。
長すぎると、縫っているうちに糸の途中がからまったり結べちゃったりします。
バサマは、私がやたら長い糸と格闘していると、
ボソリと「バカの長糸」と、言いまして「糸に操られてどないすんねん」と…。
この長さも自分でいろいろやって確かめましょう。

次に針に糸を通したら、右手に針と糸の通っている「めど」のところを
しっかり指で押さえて持って、両手を軽く広げたあたりで糸をピンと張り、
糸を左手の人差し指に一回からめます。ここで、左手の親指で、
糸をベンベン…とギターを引くようにはじきます。
写真は、まず人差し指に一回まきつけ、次に親指でベンベン…です。




長い糸の場合は、糸を右手に送っていって、糸全部をはじきます。
これは糸のクセ取り、ミシン用のコマでも平べったい糸巻きでも、
糸はそれに巻きつくことでクセがついています。これをとるための作業で、
はじくことでクルンと回ったり、糸巻きどおりに折れ曲がっていた糸が、
いっぺんでまっすぐになります。これを「撚りを戻す」といいます。
そう、もつれた男女の仲が戻ること…は、ここからきています。
これをしておくと、縫っている間に「クセ」で糸がお互いに絡まないのです。

次に、「玉どめ」最初に糸のお尻に作る「玉」です。
みなさんは、どんな風に「玉」を作りますか?
たいがいは右手の人差し指に糸をくりくりっと巻いて…だと思うのですが…。
私もずっとそれだったのですが、どうも玉の形や大きさが一定しませんで、
バサマには「イカリみたいや」なんぞといやみを言われておりました。
その後、よい方法を教わりまして、今はよくこれを使います。
まず、写真のように右手の人差し指の上に針を置きそこに糸の端をかけます。
それから針に何回か糸をクルクルと巻きつけます。
そこをしっかり親指の腹と爪の先で抑えて、針を引き出して引っ張ります。
最後まできっちり引っ張ると…。



     
          
               


これだときれいに「玉」ができます。


さて、ここからは基本の縫い方、つまり運針ですね。
今でも学校でやるのでしょうか、基本中の基本、同じ針目でまっすぐ縫う、です。
なーんでもそうですが、いきなりうまくはできません。
縫うことも編むことも、「手」が覚えるのですから、
いくら縫ってるところを見ても、うまくはなりません。
最初は揃ってなくたって当然です。肌じゅばんでもうそつきでも、
縫い続ければその一目一目が、自分の腕をあげる練習です。
手持ちの着物、一度袖口でも裾でもいいですから、縫い目を見てください。
古着はプロが縫ったもの、素人が縫ったもの、いろいろですが、
なかにはすごいのもあります。
昔だって、誰もが器用で、誰もがプロなみではなかったんですよね。
子供の着物で、どうやったらこうなるのかと思うほど、ものすごい針目で、
あまりにひどいところは、その上からもう一度縫いかぶせてあるとか…。
それでも子供に着せたい一心で、一生懸命縫ってあるのを見ると、
ああ、結局大切なのは「思い」なのだと感じます。
着たい、着せたいと思う気持ち、縫いたい、直したい、と思う気持ちです。


実は「運針」というのは、ただ針を進めて縫い合わせればいい
というものでもないのです。極端な言い方をすると、
針は常に布に対して90度で入り、90度で出る。
完全に90度ということではなく「それくらいに深く」ということです。
写真を撮ってみました。
これは「動き」のための写真ですから、糸はついていません。
針も大げさに飛び出していたりします。
見ていただきたいのは、縫っている作業のときの布の形です。





角度が違いますね、これはどういうことかというと、
深い角度で針を入れることが「90度」に近い形で糸が通る…ということ。
この「深く」針を入れる、という動作は何もウデ振り上げて
やるわけじゃありませんで、右手と左手の連動です。
右手の針を深く差す動作をしつつ、左手はそれを助けるべく
布を大きく上下させる、ということです。慣れなんですよ、これも。
ではなぜ深い角度で糸を通すかといいますと、
糸が斜めに通ると前後に「ゆるみ」ができてしまうんですね。
ためしに縫い目を写真を撮ってみたのですが、うまく写りませんでしたので、
図に描いてみました。こんな感じ…。
ちょっと急いで描きましたので見づらい絵でごめんなさい。


          


もちろん、縫った後はきちんと糸を引きますから、
布同士はちゃんと縫い合わさるのですが「ゆるみ」というものができるんですね。
ミシンの縫い目との大きな違いは、ミシンは2本の糸で布をはさみます。
手縫いは一本で交互に布を引き寄せて合わせるのです。
だからゆるみがあると、縫い目が「笑い」布が横に動く隙間ができてしまう、
これを防ぐために、「ゆるみ」をなくすように縫うわけです。
背縫いを2回縫うのは、しっかり縫っても、座るとか前にかがむなどで、
縫い目に直接力がかからないための更なる工夫です。




こういうお話をしていると、昔のバサマの針仕事の姿を思い出します。
夜、一段落するとバサマはつくろいものだの、私の着物だのを引っ張り出して、
忙しげに針箱を運び、やがてペタンと座ると、
火鉢にかけたマメの具合など見ながら針仕事をはじめました。
まず、縫おうとするもののその場所をひざの上にひろげ、
裁縫箱から手早く目的の針と糸をだし、糸を通すと玉を作り、
「ベンベン」をやって、右手の針を髪にキュッキュッとこすりつける…。
これは髪の油(元々の油分ということです)をつけるため、
それをするときにはすでに左手は縫うべきものを持ち上げている。
細かい繕いだとバサマの体はほとんど動かず、
着物の背縫いなどだと、くけ台をササッと使って、上の写真のように、
「カッカッカッ」というタイミングで、手が上下する…。
あっというまに私の着物は背中がつながりました。
魔法を見ているようでした。「慣れたものの動き」はきれいなものです。
この姿が、私の裁縫の原風景でしょうか。
「私も魔法使いになりたい」といった私にバサマは言いました。
「魔法使いかて最初からできへんで、練習しはんねん、おふだの書き方とかな」
ばーちゃんそりゃ「陰陽師」…。

さて、今日は「準備」と「基本」だけで、縫うところまでいきせんでしたが、
ゆっくり参りましょう。着物は逃げません、
春には春の、夏には夏の着物が、あなたを待っています。

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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2007-03-17 14:35:50
玉どめのやり方なるほどと、ちょうど裁縫箱が出ていたのでしてみました。きれいに出来ますね。
私もいままで人差し指に一度巻いて親指でよりを
掛けながら玉どめを作っていました。
いいことを教えて下さってありがとう!
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-03-17 14:45:13
陽花様
今陽花様のところへいったところです。
お互いにコメント書いてたわけですねー。
このやり方、教えてもらったときは
「へぇ」10回でしたよ。
急ぐときは片手でパパッとできる指に巻いて…
ですが、じっくりのときはこちらです。
返信する
確かに ()
2007-03-17 23:09:38
この玉止め 綺麗に出来ました。
人差し指に巻いてくるりは、指が太いせいか大きくなるのですよね。
祖母が巻糸の折をビンビンして その後は針を髪につけて縫っていました。
懐かしいな~
母はミシン掛けと編み物をしている姿しか思い出せません。 

事細かい教えて頂いて 感謝! です。
返信する
いつも勉強になります (zizi)
2007-03-18 10:15:09
「馬鹿の長糸」で 糸を長く切ってしまいます。
で、当然のように撚れます(爆)

和裁の先生に習うまで、糸にアイロンかけてました(馬鹿ですね)
ベンベンすると 暫く快調なんですが、その後、また狂ったように撚れます(哀)
また、ベンベンすればよろしいのでしょうか?
返信する
勉強になります (otyukun)
2007-03-18 13:24:35
きものに携わっていても仕立に付いてはチンプンカンプン仕立屋さんまかせ。
ただ何回か糸をベンベンしている光景は見ていましたがそんな効果があったとは。
ハンカチや風呂敷を絞る時に糸入れしますが、その時に撚れて玉が出来て困る事が多かったので早速使わせてもらいます。
しかし昔の人は見よう見真似できものを仕立てたりしていましたね。
習った事も無いのに。
母も同じく孫のきもの迄仕立てていましたから今考えても凄い事だと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-03-18 16:56:07
恵様
少しでもお役に立つことがあれば幸いです。
ところで…さらしみつかったぁ!?(アイノムチ)

zizi様
縫ってるさいちゅうに、糸がよれたり
からまったりすると、腹立ちますよねぇ。
自分がわるいんだけどっ。
「ベンベン」は何度でもどうぞ。
ただ、縫い始めてからの撚りは、
たとえば針の動きで自然に自分で「撚ってる」、
という場合もあります。途中で休んだり、
何回も針刺しに刺したり…。
場合によっては、まず針から糸が
すぐに抜けないように長めに通しておいて、
縫い物を持ち上げて針の先がたたみにつくくらい
(糸が抜けないため)で針をぶら下げてみると、
針がくるくる回る…ってこともありますよ。
だから「バカの長糸」はいけないんですね。

otyukun様
それが出来ないことは、自分が困ることであり、
できないことがはじとされることもあったんですね。
「必要にせまられると」、人は強いものです。



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玉どめ (くう)
2007-03-18 19:18:42
こんにちは。

玉どめ、私も試してみます!
他に方法があるとは考えもしなかったので、このような方法があったとは!
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拍手です~~!!! (maymayman)
2007-03-18 21:58:04
凄い!!『○○の智恵袋』・・・
とんぼさんの説明する力の凄さに更に感激です・・・
小学校の家庭科に『運針』をして以来『針』なんて・・・
先の曲がったやつしか持った事が有りません?
そう云えば寮生活をしていた時にやむ負えずボタン付けはしたかな!
玉止め?あんな端っこに出来るんだ!
いつもハサミでトカゲの尻尾きりしていました・・・ハハ
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-03-19 01:05:10
くう様
これは覚えると、いつもきれいにできるので
なんかうれしくなります。
やってみてくださいね。

maymayman様
「○○」というところがきになるところですが…。
お褒めに預かり、光栄です。
私もこの方法で「トカゲの尻尾きり」から
解放されたんですー。
返信する
すごい (さくら)
2007-03-20 12:42:51
縫い物講座すごいですね。
玉の作り方初めて知りました。
縫い物は全然だめですが、最近、古いタオルに刺子をして台ふきを作るのに熱中しています。
刺繍糸でやるのですが、ずるして糸をながーく取りすぎて絡まり、かんしゃく起こしていました。

おばあちゃんの縫い姿の描写は面白いですね。
それ、お笑い芸人のコントでうまくまねする人居ましたよね。
火鉢の煮豆なんて描写が細かい!

花簪は最近お花屋さんに特に多い花ですね。
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Unknown (とんぼ)
2007-03-20 18:06:25
さくら様
ありがとうございます。
針を持つのは楽しいです。
バサマの姿、今はすっかり洋風の暮らしですが、
古いものもたくさん残しているので、
何か見ると、あっこれ使っていたときは…
なんて思い出すんです。
伸子張りのハケとか火鉢に突っ込むコテだとか、
実家は古道具屋の様相を呈しています。
火鉢、昨日ふと見たら「鉢植え」用になってました。
いつのまに物置からだしたんだろ。
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まぁ! (さくら)
2007-03-21 00:00:00
伸子張りの刷毛やコテなんて共通の思い出、嬉しいです。
夏の暑い日、伸子張りの中の布が庭一杯に風に舞ってる風景は懐かしく、いい風景でしたね。
乾いてピンとはった布のあの感触は良く覚えています。
とんぼさんは私よりずーっとお若いのにこんな話が出来るなんて。

私には二人のおばがいて、子供の頃から母親以上にかわいがってくれて、いつも二人のおばのそばで遊んでいました。
テレビもなかった時代、そのおば達が夜遅くまで縫い物してる部屋の火鉢のそばで手元を見ていました。もちろん火鉢にはコテがさしてありました。
出来上がった着物や洋服を、身長が150センチ越えた小学校高学年ころから私をモデルに試着させるのです。
そういう経験から服や着物に特に思い入れがあり、
この子供時代の話をどこかでお話したかったのですが、思い切り書かせて頂き有難う。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-03-21 21:10:46
さくら様
伸子張りと張り板は母からもらいました。
どちらもやってますが、母の手際にはかないません。
キャリアの違いですね。
子供のころって、親が自分のものを
縫ってくれているのを見ているのが、
とてもスキでした。どんなのができるんだろって。
火鉢の上に置かれたやかんの
「シュンシュン」いう音まで懐かしいです。
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