ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ウールと木綿、その2

2007-11-19 19:15:19 | 着物・古布
「ちーーーさいこうもり柄」なんですよ。「かわほり」大好きなもので…。
付け帯くらいにはなりますが、なんたってジミ。
うまくつないで「うそつき」の袖かなー。
ちなみにこの襦袢の袖は、ぜーたくにも「黒の鬼ちり」です。


    


さて、昨日のお話の続き、というより補足、でしょうか。

ウールも木綿も使いよう…ではないかとお話しを致しました。
でも、そうすると「じゃこれよそゆきで着られる?着られない?」と、
その「程度が分からない」という方がいます。
まぁ、これってなかなか難しくて、一口にはいえませんけれど、
目安になるかな…という程度のことを考えて見ましょう。

まず木綿ですが、木綿もピンキリ、つまり糸の質ですね。
木綿糸というのは、絹のような滑らかさはありません。
絹は、一つの繭から一本の糸としてそのまま1500メートルとか、
長くとれるわけですが、植物性の綿や麻は、そんなに長く取れません。
つまり「長繊維(フィラメント)」と「短繊維(ステープル)」の違いです。
綿は短い繊維をより合わせて糸にしますが、ケバ立ちが出ます。
このケバ立ちや周りの汚れをとるために、機械にかけて滑らかにするんですが、
それを繰り返してごく滑らかに細く仕上げたのが「コーマ糸」です。
いい浴衣には「コーマ糸使用」なんてタグがついてると思います。
また、単糸と双糸の違いとか、その撚りの強い弱いなど…。
単純に木綿といっても、その糸の段階からいろいろな種類があるわけです。
当然それは、布として織りあがったときの質としての差になります。

もちろん「絹」もそうなわけで、いわゆる「品質」という意味では、
どんな繊維でもあるわけですが、特に木綿の場合には、
安い浴衣などは、薄くて向こうがみえそうだったり、地がかなりゆがんでいたり、
一度洗っただけでえらく縮んだり…色がだばだば落ちたり…。
ウールでも同じことが言えます。
メリノウールなんてのは、高級ウールの代名詞みたいなもんですね。

まぁ言わずもがなのことですが、質のよしあしを見分けるのも
経験値というところがありますね。また「色柄」というのもあります。
私が母に買ってもらったウールは、いくつかは普段着、
つまり可もなし不可もなし…といったありきたりの絣柄や無地っぽい感じ、
そしてお正月に着なさい、と買ってくれたのは「小紋柄」のかわいいものでした。
ウール・木綿でも「よそゆき」になる、というのは、
この「質」とか「色柄」による違いがあるわけです。

ゆかたであっても襦袢を着て足袋を履けば「着物」として着られますよ、
というお話しがありますが、だからと言って大きな朝顔がとんだものとか
今風のカラフルなアロハシャツのようなものは、どこまでいっても「ゆかた」。
いやそれでもたとえば「竺仙」のゆかたのような、
小紋の着物にも見えるものならOK…いやでもあんまり大きい柄は…、
とまぁこんな具合に一口ではいえないわけです。難しいですね。

逆に「片貝」とか「会津」とか「唐桟」とか、あっさりした紬風とか縞柄とか、
そういうものは、質も元々ある程度決まっているし、
厚みもありしっかりしていますから、
ほとんどの場合、着物としても着られる場合が多いと思います。
つまり昨日も書きましたけど、そういう木綿は元々が「庶民の普段着」として
日常的に着られ、時には「袷」としても着られていたわけですから、
それは実は当たり前のことなんですよね。
呉服屋さんは、とにかく「売りたい」という思いがあるのでしょうし、
今は着物といえば、まずゆかたから始めましょう…という風潮ですから、
「ゆかたでも…」という言い方をするのかもしれません。
でもそれを勧めるなら、まずは「木綿の着物」についてのことを、
きちんと理解していただくように、説明くらいはしてほしいし、
と、そんなことを話したら、友人が、
今じゃ呉服屋がそれを知らないわよ…。あちゃ~。
でも、正直なところ、町の小さな呉服屋さんなら、
物知り店主がいて当たり前、なんですが、大手のチェーン店みたいなところの
若い店員さんは「売り方・お勧めの仕方」重点で研修してますから、
聞いてもこたえられないことがいっぱい…です。コマッタモンダ…。

さて、ウールのほうですが、先ほども書きましたけれど、
私が子供のころは「いかにもウール」といった柄がありました。
その後のウールの「色柄」については、もう際限なく
「絹物の小紋」とおんなじ…、辻が花もあれば紅型もあれば、
江戸小紋のようなものも、絞り柄、縞柄や格子柄…。
そうなってくると、やはり「よそゆき」にも着られるわけで…。

元々、維新以来「ウール」という羊さん素材、
つまりそれまで日本にはなかった素材が入ってきて、
それを着物の素材として使うことは、ちゃんとされていたわけですが、
最初の頃からウールは「セル」とか「メリンス」とか、
つまりは絹よりランクは下のもの、単用としての扱いでした。
そりゃあね、絹の歴史着物の歴史1000年ですから、
新参者は、「着物においては」上に扱われることはなかったわけです。
洋服では「ウール」といえば最高級なんですけどね。
横溝正史の人気シリーズの主人公「金田一耕助」氏は、
いつも着物も袴も帽子さえ「よれよれ」がチャームポイント??
彼はよく「セルの袴」をはいています。
セルのほかに、ポーラ、ポーラーとも言われ「サマーウール」と呼ばれます。
ウールはざらっとした感じがありますから、高温多湿の日本では、
通気性や肌触りで、薄手の織りのウールが夏物素材としてよかったんですね。
目の詰んだウールはそのほかのスリーシーズンというわけです。
こんな身上ですから、どうしても絹物と同等にはなれないわけで…。

帯についても、本来「ウール」は木綿と同じ扱いでなきゃダメ、だった時代は、
普段着なんだから、せいぜい近くの商店街程度なんだから…となれば、
帯は半幅かせいぜい木綿とかウールの織り帯、当然「単帯」です。
それでも、今の時代、絹の小紋かと見まがうような美しい色柄ウールなら、
よそゆきにきてもよし、ならば、帯もシャレ袋、名古屋くらいいいじゃない…。
ここでも、要するに「格」というもので、礼装にも締められようかというような
豪華な袋帯などは合いません。あくまで「シャレ」です。
私は「シャレ袋」の「シャレ」は「オシャレ・シャレてる」のほかに、
いわゆる「洒落」、ダジャレなんてほうの「ちょいとお遊び」という意味も
大いにあると思っています。絹もどきの美しいウールに、
絹だけどちょいと「シャレでさ、締めてみたの」なんてのはいいんじゃないかと。
こちらウール木綿用にいいかなーの単帯、そうとう使われてます。


     


実際、今の時代は着物に限らず「多様化」というんでしょうか、
境目があいまい…が多いです。
洋服だって、私が子供のころ母が「ブラックフォーマル」を買うときに
「高いけどやっぱりウールでなきゃ」と言ってました。
つまりウールでないと「なんだ化繊だわ」と言われてしまう。
それが、イマドキは結婚式に着ていこうかというカラーフォーマルでも、
化繊当たり前になってます。ヒラヒラとかフルフルとかキラキラ…という
デザイン上の見栄えが優先されるわけですよね。
こんな風にかわっていく世の中で、守るべきこと、曲げないこと、
それは「礼を尽くす」ということだと思ってます。
いくらきれいなウールでも、和装の目上の方と会うときはやめること。
相手が絹を着ていたら失礼です。
絹物でも、相手が小紋なのに自分が紬だったら、これも失礼です。
洋服はデザインというものがありますから、
相手がウールのスーツ、のときはこっちは化繊でも「スーツ」ならいいわけです。
着物はデザインは一緒ですから、そういうところで気を遣う。
どんな間柄の、ダレと、どこへ、何をしに行くか…でかわる、
これって基本的には、洋装と変わらないということです。
難しい?なぁに場数ふみゃわかるもんです。
そのためにも、ヒトが着ていたらシゲシゲ眺めましょう、ぁっ失礼のないように。


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3 コメント

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Unknown (陽花)
2007-11-19 23:46:16
お友達と着物でお出掛けする時はどちらともなく
「何を着て行く?」と云う話になりますね。
先日も雨かもしれないから紬にしようかということに
なっていたんですが、早めに来て「帯だけ締めてね」と頼まれていたので行ってみるとお友達は柔らか物でした。私の着ていた紬をみて慌てて着替えられました。時間が無いからいいよと言ってもやっぱり合わさないと失礼だからとおっしゃってました。
返信する
そうなんですよね (えみこ)
2007-11-20 09:38:17
自分の周囲で着物を着るのは自分一人なので
きままに着ています…。
ジーンズ程度の意識でいるので
濃い色の紬を半幅で地味にしてます。
小物で遊んでるかな^^ゞ格やTPOを要求される場は
洋服で行きます。
先日友人と話したのですが
最近色々な事がボーダーレスになってきたけど、いまや度を超して
粗雑で乱暴になってきたと痛感してます。
お若い方にそれを伝えられない上の世代の弱さを感じます。
伝えてゆかなくてはいけないものを伝えられていないからですね。
着物ひとつとっても、それが出てしまう。
流行りとか価格ではかれないふくらみや豊かさやつながりがあること
大切ですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-11-20 20:52:43
陽花様
そうそう、仲のいい友達でも、
そういうことって当たり前の気遣いで、
それがまた着物同士の楽しみにもなるんですよね。
私、いっつも陽花さんに失礼してるー、
ごめんねぇもんぺで!しかもポリだもん。


えみこ様
おっしゃるとおりだと思います。
「自由」と「勝手」はちがうということなんですが、
やってるほうがそれを「勝手」とは思ってない、
そこが大変なんですよね。
私たちの年代でも、できる努力があるのではないかと
そんなことを考えています。
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