ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ウール・木綿は普段着?

2007-11-18 19:41:23 | 着物・古布
このところ何かとバタバタして落ち着きませんですみません。
久しぶりに「着物」のお話しです。

ときどき耳にするんです「この着物にこの帯でいいのかしら…」、
「これにこれは着ちゃおかしい?」「これって普段着?よそいき?」

着物の格とか、着物と帯のふさわしい組み合わせとか、
そういうことって「着物の経験値」が低いほど、不安なんですよね。
今日はそのあたりのお話しをしてみましょう。あっ役には立たないかもーです。
なんか久しぶりーな気がしますね、このテのお話し…。

まずは…「普段着物」、という言い方がありますが、
あなたにとっての「普段着物」ってどういう着物でしょう。
着付けを習いに行った方のお話を聞くと、先生によって
「ウールは町内が限度」とか「前掛けかけて出られる範囲」、
というような、つまりは「日常着」、という捉え方ですね。
そういう教えられ方をされている方が多くいらっしゃいます。
私の母も似たようなことを言ってましたし、
さらに加えていうと「まだ子供やねんから」というのがつきました。
つまり、どう転んでも「よそゆき」にはならないニュアンスです。
これって、実はすでに現状にあってません。

では「普段着」ってなんでしょう。
和装についてわかりにくいことは、洋装に置き換えてみると
けっこう感じがつかめます。
あなたにとって「洋服の普段着」って、どういうものになりますか?
私の場合ですと、家にいるときは、まぁこういう暮らしですので、
どうしても「汚れてもいいもの」になります。
歩いて2~3分のコンビニへ行くには、
ボロ隠しに大きなエプロンかけて…ですし、
車で5分くらいの駅ビル下のスーパーだと、
駅前ですから人通りも多いし、やっぱりちょっと着替えます。
但し、いくらかマシな程度…。
これってつまり主婦にとっての「エプロンかけていく場所」の範囲が、
昔よりひろがってるってことなんですよね。
30年前にはなかった現象です。昔は「買い物」といえば前掛けにつっかけ
手には買い物籠、で歩いていける範囲…だったんですから。

実はここなんです、つまり「ウールや木綿」の着物が、
かつて着ていた状況や、新しい素材としてでてきて着られ始めた状況、
そういうものが、まず今とは違うということ、
そして、その変化は急激であったということです。

木綿は江戸時代は庶民の着物で、それこそ「普段もよそゆきも木綿」でした。
明治に入って、庶民が絹を着ることに何の問題もなくなり、
また維新と同時に機械の導入によって「安い絹」ができるようになりました。
銘仙や富士絹といったものです。
やがて庶民が当たり前のように絹を着るようになって、
だんだん木綿は普段用、という線引きができてきたわけですね。
いまや木綿というと、ゆかたを筆頭に「単」の代表みたいに言われていますが、
実は木綿に裏をつけて袷で着るのは、昔は当たり前のことだったわけです。
その木綿も絹同様「ピンキリ」だったり、柄付けがいろいろだったり…。
その名残が「木綿でも、モノによって襦袢を着て足袋をはけば、
お出かけ着物になります」なんてことになっているわけですね。

木綿が普段着になって、やがてウールが出てきました。
ウールというのは、基本的には「染」の着物が多いです。
今は「紬タイプ」、つまり糸を染めて織り上げるタイプだと、
わざわざ「ウール紬」なんて書いてあったりします。
発色がよくて、暖かい、価格的にも絹より安い…さまざまな利点から、
単の着物の部類で、木綿にとってかわったわけです。

さて、ややこしいですね。

☆ 木綿は元々「普段着よそゆき」どっちも着たし、袷でも着た。
☆ 絹が解放されて木綿は普段着になり、袷で着ることが減っていった。
☆ ウールが出てきた。
☆ ウールはランク的には「木綿」と同じだが、
  木綿にない利点、絹に近い利点から、木綿にとってかわった。
  ウールの質や、その特性が絹と同じように利用できるところから
  絹より下、木綿より上…といったあいまいな位置づけになっている。

と、こんなところでしょうか。
そしてまた、もう一つの問題は、戦争というもののおかげで
「着物文化」そのものが、廃れかけるという危機に瀕し、その後は
着物についての「順当な流れ」が「激流」になってしまった、ということ。
昔のようにゆったりとしていたら、ババ様から母親へそして娘へと、
少しずつゆっくりかわって、「昔はこうだったけどね」なんてことで、
それなりに無理なく変化していったんでしょう。
それが知識の伝承はとぎれるわ、変化のスピードは早いわ、
それで、ヒトによって年代によって「言うことが違う」という現象がおき、
しかもトシをとると新しいことを認知するのに時間がかかる、
若いヒトは「元」を知らないから迷う…。
今ってこんな状況だと思うんです。

そういう状況で「ウールは、木綿は」と、位置づけたり
それなりのルールを決めたりするのは、何かとたいへんです。
だからこそ、「歴史」ってものを見ると「見えてくるものがある」わけで、
今の時代なら、ウール木綿は、色柄そして「質」によっては、
十分「よそゆき」着物になりえるものである、ということ、
そして、本来はウール木綿には「同等の素材の帯」で、
半幅しか締めなかったものですが、それもケースバイケース、
そんなふうな「あいまい」の幅をひろげていってもいい時期ではないか、
と思うんです。ただ、じゃあなんでもいいや、で木綿やウールに
金糸きらきらの袋帯ってのはちょっとおかしい、
それは「振袖に化繊の半幅」を締めるとおかしい、というのと同じです。
そのへんは「残しておくべき常識の範囲」ってことですね。

半幅帯も、昔は単なる普段帯、ゆかたや木綿着物用の帯、
という格付けであったものが、とてもシャレた色柄や結び方が考案されて、
いまやお出かけ着の正絹でも「シャレ帯」として通用する時代です。
こんな風に、どんどんかわっていく時代の中で、普段着物については、
「古いしきたりや習慣も学びつつ」、「着物の品位や民族衣装としての誇りを
つぶしてしまわないラインでの変化」、それを楽しんでもいいと思うのです。

結論なんてものを出そうとは思っていませんが、
どのみち文明文化なんてものは「変化」していくものです。
いつの時代も、着物は「便利に・美しく・女にとっての宝」として
ずっと着られてきたものです。
相手に不快感を与えず、自らも気分よく、ヒトを振り返らせるような、
そんな着物美人をめざすのが「平成日本の女」の心意気?!
経験値をあげて、今の時代の「ステキな着物ライフ」を作り上げてゆき、
それが次世代へ継がれていくように伝承する、
そのためにも、昔を知り、今を知り、新しいもの古いものを
うまくより合わせて、あたらしいものをつくってゆく…、
実はずーっとそうされて、着物って残ってきたものなんですよね。

おまけ画像は「半幅いろいろ」、真ん中と右二本は丸帯や袋帯からの再生、
左二本は、縞の着物から作ったもののようです。いずれも正絹です。
さて、どれから販売にしますかねぇ…。


  






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8 コメント

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こんばんわ^^ (えみこ)
2007-11-18 20:14:15
すてきな半幅ですね。
万年初心者なもので、未だに半幅帯の方が
出番が多いので、うれしくなります。
で、どなたからお輿入れでしょうか^^わくわく。
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Unknown (陽花)
2007-11-18 21:16:28
若い頃は普段着というとウールの着物でした。
お出掛けというと交織か正絹の着物でしたね。
木綿着物は、浴衣以外着たことがないのですが、
最近は浴衣を着物にして着るということを
前面に出している呉服屋さんが多いですね。
やっぱり洋服と同じで、TPOが必要だと思います。
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Unknown (とんぼ)
2007-11-19 11:19:33
えみこ様
右上のは状態がよくないんです。
真ん中のはきれいなんですが、
なんせあんちーく…お嫁入りできるといいんですが。


陽花様
私もそうでしたね。すそさばきわるくても
気軽に着られましたね。
ゆかたの「着物化」…なんでもいいってもんじゃ
ありませんよねぇ。売れりゃいいってのは、
いかがなものかと…。
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Unknown (蝸牛)
2007-11-19 17:13:16
お正月にウールのアンサンブル、懐かしく思い出しました。帯も半幅で楽でしたね。

昨日京都へ行きました。若い人たちが、着物を着て京都散策・・・いいもんですね!
昔のように、細かい決まり事を考えないで自由に取り合わせを楽しんでますね。
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着物の歴史 (Tatehiko)
2007-11-19 19:10:37
着物に、その素材に歴史があったんですね。
当然ですが・・・気が付きませんでした。
昔、百姓は木綿しか着られなかったですよね。
蚕を育てて絹糸をつむいで来たのに・・・。
ちょっと思い出しました。
我が家は戦中戦後・養蚕農家でしたが・・・木綿の着物の間に真綿を挟んで暖を保っていましたね。
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Unknown (とんぼ)
2007-11-19 19:33:32
蝸牛様
黒とか紺地のアンサンブル、
マフラーなんかしちゃって…懐かしいです。

京都、もう紅葉がきれいだったでしょう。
つまらない「堅苦しさ」は、
そろそろ切り替えてもいいと思います。


Tatehiko様
養蚕農家、大変なお仕事ですよね。
真綿をはさむってのは、母がやっていました。
私も真綿、一包み持っていますが、
暖かいですよね。
当時のお道具「繭を運ぶかご」とか、
あったらお高いですよー。アンティークですから。

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Unknown (青め猫)
2007-11-21 22:02:00
お久しぶりです。。。
ぐうたら~してました。
この木綿とウールの話はとても勉強になりました。
久留米絣は私の母の産地でとても身近です。
呉服屋で反物のしてもの凄い値段の札が付けられているのを見て、もの凄く驚きましたが。
幼い頃、よく夏休みにその久留米の田舎へ泊まりに行っていたのですが、畑で久留米絣のもんぺ姿のおばあちゃんや叔母さん、それに近所の方々がさりげなく着ていらっしゃったのを覚えています。
木綿って、昔は本当にジーパンの様な野良着だったのですね。。。
希少価値で高くなっているのでしょうけれど(^◇^;)
私は、木綿、ウール、正絹に限らず「絣」はとても好きです。
でも、ちょっと間違えたら田舎っぺに見えちゃうところが難しいのですが。。。
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Unknown (とんぼ)
2007-11-22 19:32:44
青め猫様
久留米も備後も伊予も、今はほんとに高いですね。
今は「野良着」としての需要が激減したから、
もっぱら「着尺」で売るんではないでしょうか。
着倒して、何度も水をくぐった木綿は、
ほんとにやさしいですね。
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