ブログの「アクセス解析」のページには「検索ワード」というのがあります。
どんなワードで検索して、こちらにおいでくださってるか…ですね。
年末年始は「白喪服」で、急にアクセス数が増えまして、私もびっくり…でした。
さて、その「検索ワード」のなかに「共八掛でない訪問着」…というようなワードがありました。
つまり「八掛が共ではないので、これは訪問着ではないのだろうか」というような…。
これは…今の時代、ほんとに難しい問題なんですねぇ。
というより、今もさらに難しく「なりつつある」…ような気がします。
さて、本日いつにもまして「長く」なると思います。
「共八掛ではない訪問着はあるのだろうか」…。
そもそも「共八掛だから訪問着という」のです。ただし今となっては「原則」ですが。
元々訪問着は共八掛にする分、反物も長いです。四丈もの、といいます。
訪問着は元々「紋つき」であり、「共八掛」であり、「留袖と違って肩先、袖などにも華やかな柄がある」でした。
これが、時代とともに少しずつ「ゆるく」なってきました。今は訪問着に紋を入れないことも珍しくありません。
「紋」については、また別に書きましょう。
とりあえず、訪問着の「決め事」だったことが、少しずつ変わってきました。
この訪問着と、似て非なるもの「付け下げ」が出てきて、ちょっとずつ更にややこしくなってきました。
なんでこんなことになったのか…それが、先日からお話している「変化」ということです。
もっと古くからのことを並べてみると…元々華やかな着物は、裕福な階級の人の着るもの。
その人たちは、いわゆる紋のついた格調高い着物を着ていました。普段は無地とか総柄。
しかし五つも紋のついた、「式」と名のつくようなものしか着られない堅苦しいものではなく、
もう少し気楽で、それでいて華やかな着物がほしい…というニーズに合わせてうまれたのが「訪問着」です。
だから、この着物は時が経つごとに「幅広く着られるように、色柄、地味からハデまで何でもあり」になっていき、
紋も「つけたければ五つでも三つでもお好みで…」という、目的別に着分けられる、
柔軟性を持った着物として好評を博し、あっという間に広まり「訪問着」というカテゴリーとして定着しました。
年始、披露宴、パーティー、といった華やかな場所から、観劇、お茶会といった気楽なものまで。
だからデビュー?当初は「訪問服」「散歩着」という名前で呼ばれました。
世の中が変わって、だんだんに一般の女性も華やかな着物を着られるようになって、さらに重宝がられたわけです。
知り合いの呉服屋さんは「昭和40年代は、訪問着が売れまくった」と言ってました。
戦後の混乱が収まり、着物を作る余裕が出てきたとき、一番需要があったのが訪問着。
普段に着物を着なくなったから小紋や紬より、どうせ作るなら「一枚あったら重宝な着物」というわけです。
トップの写真は昭和47年の古い本です。付け下げにポイントを置いたページがあります。
ちなみに表紙は山本陽子さんで、着物は「付け下げ」。
「ミセスのよそゆき」という特集なのですが、この「よそゆき」というところがうまい言い回しです。
つまり結婚式や披露宴なら「留袖」「訪問着」ですが、それ以外のおでかけで、街着じゃまずいけど、
訪問着でなくてもいい場合がある、そのときは付け下げという便利なアイテムがありますよ…とう提案です。
こんな写真が出ています。佐久間良子さんですね。
こちらは十朱幸代さんと和泉雅子さん。
訪問着ほど格式ばらず、豪華すぎず、それでいて普段着より華やか…
付け下げはそういう位置づけ、なのですが、この本の出たころ、つまり昭和47年というと、
私が22歳、今から40年くらい前のことです。
これ以前の本をいろいろみましたが、「付け下げ」というものは、扱いが微妙だなと感じます。
じゃそもそも「付け下げ」ってナニ…。昔は、訪問着と違いがはっきりわかっていたってナニ。
この本のページ、ここに「付け下げ」の説明としてあるのは、
「正しくは『付け下げ訪問着』と『付け下げ小紋』があります。」
ほらほら、こういう書き方をするとまたわからなくなるのです。
つまりこの場合の「付け下げ訪問着」という言葉は、付け下げの柄の様子を言ったもの。
和泉さんと十朱さんの着物のように、ぱっと見ると訪問着のように見える絵羽柄のもの。
付け下げ小紋は、今度は柄付けの方法を言ったもの。
つまり前と後ろで、柄がさかさまになっていない小紋。佐久間さんの着物。
まず、着物の柄の基本的なこと「絵羽柄」と「総柄」。
着物と洋服を縫う場合の、裁断上の大きな違いのひとつ「肩で縫いあわせてあるかないか」。
着物には「肩の縫い合わせ」はありません。前身頃と後ろ身頃はつながっています。
そのため例えば「招き猫」の柄を縦に並べて染めると、前身ごろはちゃんと招き猫がすわっているのに、
肩までそのままで、肩から後ろは招き猫が「逆立ち」します。
これを見栄えよくするには「仕上がったとき、前も後ろも招き猫が逆立ちしないように染め付ける」、
もうひとつは「元々上下のないよう、招き猫を上下させた組み合わせ柄にして、
前後で柄がさかさまになってもわからないようにする」です。
前者が「絵羽」後者が「総柄」です。総柄はだんだん柄が細かくなってきて今は「小紋柄」といいます。
さらに、この「さかさまにならないように染める」のを、ただ招き猫を並べるのではなくて、
着物をキャンバスのように見立てて、一枚の絵のように、さまざまな情景を描いたり、
はなやかなものを並べたりしたものが、留袖や振袖、訪問着などの「絵羽柄」です。
また、小紋だけれど、ちゃんと向きを合わせて前も後ろもさかさまにならないようにしたもの、は
「絵羽付け小紋」と言います。これが付け下げ小紋と同じもの。
この本には説明に更に「付け下げは おくみと前身ごろの柄はつながっている。
訪問着と違うのは、脇の柄のつながりは無視されている」
そう書きながら、実は真ん中の鼓柄は、左脇線の柄はつながっています。
グリーンの山が「脇縫い線」。
もうひとつの付け下げの特徴は「共八掛ではない」です。元が普通の着尺だからです。
このページにはそれが書いてありません。
しかし、十朱さんの着物の裾を見ると、朱色のふきが見えます。
つまり八掛は朱のぼかし、ということになります。共八掛ではありません。
更にこの次のページでは、格調のある小紋、という特集があります。
ここには
「前後とも模様が上向きについている付け下げ小紋、模様が多彩で、華やかな友禅染の小紋、
または上等な手書きの小紋は、付け下げ訪問着についで、華やかな席に着ていけるものです」
とあります。これは、着物のことに詳しい人が読むと、何をどういっているかよくわかるのですが、
着物初心者なら、迷うところがあると思います。
元々が「それまでの着物というものの流れをわかっている」ことを前提に書いているからです。
左はただの「格調高い小紋」、右の柏木由紀子さんのは「付け下げ小紋」です。
橘の枝ぶりを華やかに描いていますが、全部一方付けで、さかさまの橘はありません。
後ろも当然同じです。これで見ているだけではよくわかりませんけどね。
訪問着と付け下げの違い…カンタンに説明できない時代になってます。
今日は時間がなくなりました。これは明日も続けます。
とりあえず、昭和50年くらいで、本日タイムスリップしたまま終了でーす。
明日は「現代}まで、戻りましょう?!
羽織と道行きコートで外出では帯を隠し、家では割烹着で何とかしておりますが、
楽しみであり、不安でもあります。
毎日着ているので、着ることと、動きには慣れてきました(#^_^#)
帯選びは、なかなか難しいですね。
母は「場数踏むよりない」と言ってました。
洋服の組み合わせは、さして迷わないのに、
やはり「柄と柄」という組み合わせは、
難しいのだと思います。
文様はなんでしょ、家とか網干とか橋とかいろいろある細かなものです。
ここまで読ませて頂いて、少しあたし小休止。
好きな分野の事ですが、流石に「え?」「お?」って感じで.........疲れました。こうして知識を深めてゆくと、一方ではその知識を頑なに守ることで他の着物の扱いの緩さが許せなくなりそうな一徹さを自分の中に感じています。(やな性格かも)
基本をきちんと識って尚且つ柔軟さも.....そういう豊かな見識を有する者でありたいと思ってますが、これはなかなか超難しい。
つくづく奥の深〜いものです、ホンマに💕
家や網干、橋…そのもようがどう描かれているか、ですね。
着物の決まりごとは、緩める緩めないの基準を、どこに置くか、です。
時代が変われば、いくらなんでも今はムリなこともあったりしますしね。
奥はどんどん深くなっていく感じですねぇ。
「今、どう着るか」、コレが私がこれから仕事をしていく上での、
ポイントの一つになると思っています。