ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

蕪の柄

2010-07-29 14:13:41 | 着物・古布
以前からずーーっとヤフオクにでていたものなのですが、
いやいやもう買わない、もうやめよう…と、チラ見だけですませてきたのです。
でも、いつまでたっても落札されない…なんでこんなにいい柄を誰も買わないのよっと、
ヘンな義侠心??が沸きまして、えぇーいポチッとな…と、やってしまいました。
ずっと見ているときから、帯にしたらおもしろいだろうなぁとか、
もっと大きい着物かじゅばんだったら、黒繻子の衿つけた半天なんか粋だなぁとか
妄想をたくましくしておりましたが、届いてみたら状態が極めて良好。
なんか解くのもったいなくなって…また保存かい…あぁぁぁぁ。

表はしゅるっとした平絹、残念ながら胴裏は黄変、紐は、すでに茶色のしみが満載です。
これを見ると、このままとっておいてもちと心配ですねぇ…解こうかなぁ。


              


袖口は一つ身ですから「広袖」、ふちには黒繻子がぐるりとついています。
おまけに仕付け糸つき、未使用のようです。


        


背中には紫の糸で「背守り」が縫いつけてあります。
これは何度も書いていますが「大人の着物の背中は背縫いがあって閉じているから
そこから『魔』が入れない、子供の一つ身は背縫いがない、
だから背縫いのように縫い目をつけて、ここは閉じてあると見せかけて魔を避ける」です。
親心ですね。


        


えぇ、では、久しぶりに「柄のうんちく」と参りましょうか。
子供の着物に「蕪」の柄…いまなら「判じ物」になりそうですね。
蕪アップ、あっ柄アップです。葉っぱのぼかし具合なんかいいですね。


     


これがピーマンなら「あぁ中身ないのね」ですが(コラコラ)…。
「蕪」は出世の象徴です。例によって語呂合わせですが、
昔(古語にはいりますからかな~り昔)頭のことを「かぶ」「かしら」といいました。
「かしら」は今でもいいますね。
人間の体の一番上にあって、しゃべったりものを見たり、飲んだり食べたり、
脳の入った大切な部分が「頭(かぶ)」です。
そこから、ヒトの上に立つことも「かしらになる」などというわけですが、
この「頭」の古語、「かぶ」から、「蕪」は縁起柄となりました。

地は「手綱取り」、つまり斜めに仕切った柄です。
かわり格子柄には家紋を散らし、青地のほうには蕪が顔を出している。
「家紋をいただく家の、頭(かしら)となるように」という親心ですね。
そういうわけで、子供の着物に限らず、和服に蕪の柄はたまに見かけます。


「アタマ」つながりで、ついでに「鉢」のことを。
鉢、というのもアタマの別の言い方です。せとものの「鉢」のこと、
単純に形からいったものですが、この「鉢」というものをアタマと見立てての言葉も
いろいろあります。たとえば「かぶと」のかぶる部分のことも「鉢」といいます。
また、時代劇などで、額のところに金属の板を縫い付けたり、
少し出っ張らせた、そうですね、いまどきのカップ型のマスクみたいな…、
そういう形のものをとめつけた鉢巻を「鉢金(はちがね)」といいます。
何もついていない布が文字通りの「鉢巻」ですね。
額が出っ張っているヒトをでこっぱち、なんていいますねぇ。

和服の柄というものは、本当に何でもアリですが、
ただ形がきれいとか面白いとかだけではなく、ひとつひとつの絵について
いわれとか見立てとか、そういうものがあるのが、私はとても好きです。
これは「言葉の文化」にも通じるものだと思うのですが、
たとえば漢字の国「中国」では、読み方(発音)が同じであるところから、
吉祥の柄になったりしています。私の好きな「蝙蝠」がそうですが、
中国語で「福」と「蝠」が同じ発音であるため、蝙蝠は吉祥紋となっています。

また、先日の「青海波」ですが、同じ波柄でも「波頭紋(はとうもん)」と呼ばれる、
リアルっぽく波としぶきを描いたものなどは、喪服の帯などに使われます。
これは同じ「波」でも「次々生まれて続く」方ではなく、
「次々生まれてはきえていく」方を意味としてとらえたものです。
また、水の国日本では、水は清いものであり、流れるものであり、
浄化とか悠久をあらわします。つまり、宗教的な意味も絡んだりするわけですね。

古典柄、と呼ばれるものには、ただ美しい花だからとか、めでたい色だからとか、
それだけではない、いろんな意味や思いが隠されていることが多いです。
野菜や果物つながりでいうなら、稲は当然日本の主食ですから「豊穣・繁栄」、
ざくろは「子宝」、あの中の実一つ一つがタネをもっているからですね。
桃は、特に女性にとっての吉祥紋とされています。
「おせち」に使われる「クワイ(慈姑)」は蕪やざくろなどのように、
それだけで絵になるような形とは、ちといいにくい…です。
葉っぱは「オモダカ科」ですから、細長いハートのような独特のいい形をしていますが、
葉だけを柄にすると「オモダカ柄」になってしまいます。
クワイそのものは、コロンとしたお芋からひょこっと熊のツメのような芽が出ている…
ちょっとおかしな形なんですが、それでも羽裏などには使われます。
おせちに使われるのと同じ「芽がでる」ことで、出世や繁栄を意味するからですね。

さて、この蕪柄、帯にしてみたら…こんな感じ。
やっぱ解くかなぁ…。


     


今日はひっさしぶりの大雨です。気温が低いのはいいのですが、
今度はべたーっとしてます。なかなかうまくはいかないものですが、
水遣りがいらないだけラクですし…ありがたやありがたやと、感謝、です。


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8 コメント

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Unknown (とんぼ)
2010-07-30 20:57:31
りら様

古語なんていっていても、今私たちの使っている言葉も「古語・死語」になるんでしょうね。
ますますわからなくなっていきますねぇ。

ピーマン柄…大きさとか形とか…
けっこう難しいですよねぇ。
見てみたかった…。
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Unknown (とんぼ)
2010-07-30 20:55:43
陽花様

親の重いが伝わりますねぇ。
今こんな柄がないのが残念です。

こちらも雨になりましたが、蒸しました。
頭痛、こういうとき起こりやすいですよね。
お忙しいのですから、ご無理なさらず、
お大事になさってください。
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Unknown (とんぼ)
2010-07-30 20:53:49
えみこ様

私もかぶら付けとか蕪のクリーム煮とか、
食べでありそーと思っちゃいました。
半幅でもいいですねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2010-07-30 20:52:37
ゆん様

こちらも雨が続いて、草木は一息ついてます。
「ヤギ柄」はめったにでませんからねぇ。
まして羽裏となると…。
残念でしたねぇ。
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「カブ」は「かしら」 (りら)
2010-07-30 03:40:46
また一つ勉強させていただきました!!
蕪の柄、今では全く見かけませんけれど、昔のものにはありますよねぇ。
帯にしたイメージ画像、良いですねぇ・・・

因みに・・・ピーマン柄の帯が出品されてまして、しかもなんだか中途半端な位置と大きさなんです。
思わず、笑ってしまいました。
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Unknown (陽花)
2010-07-29 21:33:10
家紋をいただく家の、頭となるように・・
そういういわれの柄なんですね。

帯にされてもいい感じになりますね。

今日はこちらも久しぶりの雨で、湿度が
高くおまけに頭痛、不快指数100%でした。
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ツボです(笑) (えみこ)
2010-07-29 15:21:29
おいしそうな…(つい食い気に(^_^;A)
色具合が何ともすてきです。
半幅でしめたい!
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Unknown (ゆん)
2010-07-29 15:07:06
こんにちは!
 今日はとても過ごしやすくて「湿気はありますけど)、こんなしみじみといいお話も すんなりと弱いかしらに入ってきます~^^

 いいですね…この帯。


 所で~~!!微妙な山羊の羽裏!!夕べは長女のお稽古で、帰ってからバタバタとしてるうちに終了してたんですよぅう!!誰や~!!私以外で 着物とヤギが好きなのは~~!!

 山羊の長じゅばんに続いて、また悪い夢を見そうです
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