
こういうものを見つけてしまうと、今のはねぇぇぇと、いつものセリフがつい出てしまうのです。
この絵の「元絵」がわかりません。
たぶん芝居か物語が、ゼッタイあるとおもうのですが…。
ご存知の方、教えてください。
第一ヒント…違うって、例えばこちらは裾の方にある柄です。
全体の感じ。右側に女性、真ん中の若衆が手にしているのは刀ではなくムチ(乗馬の)のように見えます。
それぞれのアップです。
一番下のヒト、特徴的でしょう?ヒザにつけているのは「奴さん」がつける「三里紙」とか「三里当」といわれるもの。
元々は身分の低いヒトがヒザを付くのにカバーしておくとか、ここがツボなのでこれで締めると足が疲れないとか、
いろいろ言われています。お芝居ですと、侍でも例えば袴の裾をたくし上げて旅をする場面…とか、
お供としてついていくとか、いわゆる「アウトドア」な感じだと、これをつけています。
で、元に戻りまして、後回しになりましたが、今度は背中の「上の方の柄」。
トップに出した絵の全体、これが背中です。(上の黒いのが半衿)
そして左袖がこちら。なにやら裕福そうな男性が、ごろ寝でキセル…。
大店の主人が、ごひいきの役者の到着を待っている…感じです。
家とか樹木、後ろの遠目の滝なんかはよく描かれてきれいだとおもうのですが…
この絵、なぜか家の中のここだけは、どうも「手抜き」みたいに思えるのです。アップしてみると…
着物の縞模様もいい加減だし、カオものっぺりで、調度品や小物の描き方も雑。
おまけにそばに座っている小姓なのか、なんなのか、左手も左足も「すごく不自然」でヘン。
ここまで描いてきたら、つかれちまったからもぅいいや…みたいな?
まぁ私にはここまでも描けませんから、ケナすのはこのへんにして…。
最初に書きましたように、何かの場面、物語とは思うのですが、わかりませんので衣装のお話しを。
このじゅばん、題は「時代役者風景」となっていました。
ん~~芝居の一場面だ…というなら、確かに役者さんが演じているところ…になりますが…。
衣装だけで考証してみると、まず、傘を差しかけられている人、差しかけている人、
両方、アタマに紫色のものをつけています。これは「紫ちりめん」。「野郎帽子」ともいいます。
これをつけているのは確かに「役者」ですが、本来女形がつけるもの。また歌舞伎役者は帯刀を許されていません。
名字帯刀を許された役者は「能・狂言」の世界の人です。
この、紫ちりめんは、月代(さかやき)を隠すためのもの。
元々歌舞伎の始祖は「出雲阿国」といわれていますが、当然「女性」です。
彼女が男装で、少女と舞台で絡むのが大ウケしたわけですが、これをお上が「風紀上よくない」と
女性が歌舞伎をすることを禁止しました。そこで今度は男性が男装のまま、まだ前髪のある美少年に、
女装させて舞台にあげた…と、今度はこれもまた「ダメ」が出て「前髪立ちの者」、つまり元服前ってことですね、
それを使ってはならない…になりました。
そこで舞台に上がるものは、みんな元服過ぎたにぃさんおじさんばかりで、当然のように「月代」は剃りあげています。
そこで、舞台挨拶などでも「こんな月代青々した無粋な『野郎』ばかりで、申し訳ありません」と、
月代隠しに、紫ちりめんをのせて、髷にとめつけたわけで、このころの歌舞伎を「野郎歌舞伎」と言いました。
つまり、この絵の傘の中の人は、歌舞伎役者のようなのに、しかも女形だと思うのに、
刀、それも二本挿し…。あれっ??なわけです。
刀と言うのは、えーこれまた専門的になりますと、ムズカシイので…。
簡単なお話しをしますと、日本の武士が持つのは「大刀小刀」で、
「大刀」は、だいたい55~60センチ前後。 (本来は尺でいいます)小刀は40~50センチ内外。
「こがたな」と呼ぶときは、あの細工をする肥後守みたいなのをいいます。
「小刀」は「脇差」と呼ぶことの方が多く、本差(ほんざし)が、戦いで折れたり刃こぼれたりしたとき、
かわりに使うものでしたが、後年は刀を交えることなどほとんどなくなりましたから、
刀身の軽いお飾りみたいな刀を差すこともあったようです。
なんで二本差したか…、これは、庶民にも刀を使っていいという場合がありましたので、その時は一本、
それで「武士」は武士である証として必ず二本、とこれは武家諸法度で決められました。
庶民の刀は、脇差タイプで、武士の使う大刀よりは小さいもの、例えば旅をするときの護身用など。
時代劇などで出てくる「やくざ」は、長脇差、を差していますが、これは大刀と同じくらいの長さがあったそうです。
ヤクザ映画によくでてくる「長ドス」と言う言葉、これは刀身を白鞘に納めた、鍔のないもの。
武家ではこれで刀身を保管したりもしました。刀として使うときは、それに装飾を施すわけです。
刀は「刀身」と外装の「拵え(こしらえ)」からなり、拵えは「柄、鍔、鞘」に分かれます。
刀身を柄に止める「目貫」、手裏剣のように投げたり、いわゆるナイフのように使った「小柄(こづか)」
髪をかいたりするための小道具の「笄(こうがい)」を、同じ細工で揃えることなどがはやり、
揃ったものを「三所物(みところもの)」といいました。女性の笄も、元はこれです。
なにしろ洗髪もできない状況では、アタマかゆくなりますからねぇ。
さて、そうしてみると、この傘の中の人、すんごい立派な大小ですよねぇ…。
ん~~やっぱり絵として美しくあるように…描いたのかな。
ちなみに、江戸時代、庶民が羽織というものが着られるようになっても、女性は着られませんでした。
女形は舞台では女の姿専門であっても、男性でしたから、華やかな羽織を着ることができたわけです。
この絵は、お芝居や物語が思いつかない分、ナゾが一杯で楽しいのですけれど、
本当にステキなのは…たった一人、左袖の前側に描かれたこちら…です。
ほれ込んでますー。いいでしょう…と押し売り。こちらは刀、一本しか差してませんね。
残念ながら、羽織の袂のあたりご覧のとおりの大きなシミなんです。カオじゃないから許しちやう?
羽織の裾をたくし上げているのは、足裁きをよくするため。
ちなみに八丁堀同心は、黒羽織の裾をクルクルと巻き上げて、帯の下に差し込んでいました。
これを「巻羽織」といいますが、下手人をとっさに追いかけるときなどに備えていつもそうしていました。
中村主水さんもしてますよー。
というわけで、男ぶりのいい若衆と、なんかワカランおじさんたちや小姓、
忘れられそうな美女…あらら、ほんとに彼女の説明何もなしですわ…えぇっと、着物の柄きれいねっ(これだけ)、
というこのじゅばん、さてどうしたものかと…またまた思案中です。
ひざ下の三角布は三里当とか
野郎帽子など知らない事ばかり
です。
私は刀の下げ緒につい目が・・
本当に見せて歩きたい素敵な
柄ですね。
これを襦袢で着ていたなんて、なぁんと勿体無い!と思いながら拝見しました。
どういう男性が着ていたんでしょう?
役者さんでしょうか?
妄想が膨らみますわぁ。
うっとりです。
こんな贅沢な物を着ていたのは一体だあれ?
こうして物語を解説して頂くへえ~~と知らないことだらけでとても参考になりました。
こうして物事を知っているのと知らないのでは見え方は全く違ってくるものですねえ~~
いつもこうして教えていただいて本当に感謝です。
一つ気になったことを質問です。
紋が入っていますが、かなりの大きさですがこれはデフォルメして書いたのでしょうか?
それともこれぐらい大きいく入れたりしたのでしょうか?ふと、疑問に思って・・・
ほんとに贅沢です。誂えて書かせたのだと思います。
どんな人がきていたのでしょうねぇ。
刀の下げ緒、長くてステキですよね。
色も着物に映えるようにかえてあって細かいです。
芝居好きの大旦那ってところでしょうか。
コリに凝ってますね。
誰にも見せないものなのに、
お金の使いどころが…ウラヤマシイ…です。
最後の一人若武者、帯にしたいんですわー。
物語のあるものは、特に面白いですね。
それにしても、この上に着ていたものは、
極上の大島かなんかだったんだろうなぁ、なんて
思ったりしています。
紋については、おっしゃるとおりデフォルメされていると思います。
役者さんや花魁は、自分の紋を柄にしたりしましたが、
これみたいに紋だけ大きいってのは、なかったと思うのですが。
それと、傘を差しかけている人と、最後の一人若衆の紋は
「向こう梅」という紋ですが、これって菅原の道真の家系とか、
天神様に関わる、或いは信仰している家系が多いんです。
梅柄紋全般にそうなんですけどね。
それと、傘を差されている人には紋がありませんが、
太鼓と冑、太鼓には巴紋、袖の柄は三階松…これって赤穂浪士の紋なんですよ。
もしかしたら「芝居」「役者」ということで、芝居を書くと言うことは天神様、芝居は「忠臣蔵」と、
そんなふくみもあるのかな…なんて思っています。
また 見つけちゃったのですね
最初の写真の着物柄は 太鼓に兜・・・と思ったら
まぁまぁ いろいろとありますねぇ
ようござんすねぇ
羽裏などに使えないんでしょうか???
二枚分
みつけちゃったのよぉぉぉです。
羽裏も考えました。
下の3人がいいかな…なんて思っていますが、
ちとモノがよくて地に厚みがある感じ…。
いいですよねぇ、チラリとみせたい…。