写真は、母からもらった「銘仙」、
母が年頃になって初めて作ってもらった「絹」の着物だそうです。
時期的に「軍靴の響き」が近づきつつありましたから、
結局すりきれるほどまでは着られず、母はもんぺにするのが惜しくて隠し通し、
多少丈はたりませんが、まだ十分着られる状態で私のところにきました。
おんとし70歳の反物です。イトオシヒ…。
さて今日は「着物のメンテ」についての続きのお話です。
昨日書きましたことは、まずは「昔」の話、
それから「今自宅でするなら」というお話し、
そして「そうする場合の注意点」、
それから「プロに頼む場合」、でした。
こちらへお越しの着物好きの方々の中には、すでにご自分でやっておられる方、
プロに頼んでおられる方、どれがいいのだろうと迷っておられる方、
メンテについてよくわからないという方、さまざまだと思います。
それで順番に書いているわけなのですが、ではとんぼはどうか…と申しますと、
自分3プロ7、位の割合でしょうか。小物用の材料にするもの(つまりシゴト用)
自分で勝手に作ろうと思っているもの、つまり「和裁の本には載っていないもの」
それ用については、解いて洗って「伸子張り」しておりますが、
自分で洗っているものはポリ、木綿、ウール、ごく普段用の絹、までです。
あとはもう「プロ」まかせ、ですがプロに頼むのはお金がかかります。
昨日も書きましたが、呉服屋さんとつながりがあると、
細かい相談にも応じてもらえますので、私などは
「ちょっと洗い張りと仕立て直しが続いちゃうなぁ、お金かかるなぁ」
と思ったときは、持って行って相談します。
そうすると、着物の具合を見てくれて「一番洗い張り優先はこれ、
こっちは丸洗いでこれはもうひとシーズン着たら丸洗いにすれば?」
というように、安く済むように一緒に考えてくれます。
また、仕立て代がかさむときは、昨日の写真のもののように、
「洗い張り」までしてもらっておいて、また少し余裕ができたら
仕立ててもらう…というように、時間差でやってもらうときもあります。
呉服屋さん、というものが昔とはずいぶん様変わりしてしまっているわけですが
たとえば全国チェーンなどの大手のお店は、まず「販売」中心です。
もちろん「アフターケア」もやってくれますが、売るもの自体が
「振袖・訪問着」といった「礼装中心」ですから、
着るほうもめったに着ないわけです。普段着物中心のメンテを考えると、
やはり小回りのきく「地元の呉服屋さん・染屋さん」が、一番です。
町の呉服屋さんも振袖中心…のように見えますが、
実は、着物離れの今、そういうものしか売れないからそうしているだけで、
本来、呉服屋さんは普段着物中心の「販売・洗濯・染め直し・仕立て直し」
着物についてはなんでもやりますよぉ…のお店なのです。
これから長く着物を着続けていこうと思われるのでしたら、
勇気を出して、町の呉服屋さんと仲良くしてみてください。
文章ばかりでつまらないので、写真をひとつ…
私の浴衣、これくらいは自分で洗いまーす。仕立てなおしはつらいなぁ…。
モダン柄で、けっこうお気に入りの浴衣です。
反物で買ったのは25年くらい前、仕立てたのは8年くらい前です。
ウィスキーじゃないんだから、寝かせたって熟成しないっての…。
昨日、私が解きをするということを書きましたが、
理由はみっつあります。
ひとつは、手芸材料用なので、自分で解かなきゃならないんです~~。
もうひとつは「解く」ことによって、いろいろわかることもあるから。
着物を解くのは、縫った順番を逆に解いていきます。まず衿から…。
そうやって部分部分に分けていくと、着物の成り立ちがよくわかります。
また、昔の人の工夫をいろいろも見つけることが出来ます。
たとえば、とてもきれいな娘さんの着物、掛衿をはずしたら、
突然現れる「おっちゃん柄のモスリンの衿」…、
腰の部分、おはしょりで中に入って帯で隠れるところにだけ、
よく似ているけれど、違う布がはめこんである、
腰でついであるので解いてみると、もう擦り切れたり汚れたりした部分が
現れる、つまり後ろ身頃を腰で切って、上下をひっくり返したわけです。
こんなにまでして着ていたんだ…と感心しします。
みっつめは、ここから先はプロに任せる…という場合でも、
自分でとけば「解き代」が浮くから…。1000円から2000円、
お高いころでは、留袖など3000円くらいなんてところもあります。
わずかなお金ですが、チリも積もれば…です。
最近は自分で解く人はあまりいないからでしょう、料金設定には
だいたい洗い張りの中に「解き代」も含めて、という表示のところが
圧倒的に多いですが、私は昔からのところなので「解いてきた」というと、
その分はちゃんと引いてくれます。羽縫いまで自分でやると、もう少し…。
バサマに教えてもらったこと、「解きは天気のいい日、ひあたりのいいところで」
これは、実は絹糸は湿気るときしむからなんですね。
だから梅雨時は解きのシゴトはできるだけしません。
古着として買ったもの、たとえば昭和初期のものなどは、
湿度20パーセントなんていう真冬のストーブの前でもきしみます。
一目一目はさみで切って、ちょっとずつは泣きたくなるほどめんどい作業!です。
それでも全部バラけたときのの爽快感??は格別です。
ここでもう一枚、写真を…、友人が作っている「和布使用のブローチ」
私が解いた古い着物のはぎれで、こんなのを作ってもらえると
うれしいんですけど、彼女は自分が古着屋さんなんですー。
おっきいのと小さいの、500円玉で比較してください。
花びら一枚一枚に、ちゃんと筋がはいってます。
黒いほうは裏が真っ赤、留袖と緋ぢりめんの組み合わせです。
紫のほうはあんまり大きいので、帽子につけたりしています。
こんなのも作ってみたいんですけどねぇ、これまた「人任せ」…。
さて、着物についてのメンテはこれくらいでしょうか。
明日からは、メンテから見た「着物ライフ」を考えてみましょう。
どうしても洋服よりお金がかかるなら、
どうしたらお金をあまりかけずにすむか…。
昔の人の知恵も拝借しつつ、現代の着物事情に合わせて考えてみたいと思います。
私も紺地に白の花模様のしぼり風浴衣、何度か着て
家で洗っていますが仕立て直しはしていないです。
お母様のお着物の話、女心よく分かります。
はじめて大人用の着物、綸子の小紋に縫い取りの絵羽織を作ってもらったのを着て電車で母の実家に。
その銘仙のモンペはかされました。嬉しくてもんぺ恥ずかしいなんて思わなかったです。柄もしっかり覚えています。銘仙て弱い生地でしたが、ようこそ持ってらっしゃいますね。
このゆかた、実は身幅にモンダイが…。
なぜかちょっと細身なのです。
それで縫い直しかなぁと思いつつ、やってなーい。
まだまだ色柄的には着られると思うので、
なんとかせねば~~。
母は、京都でしたから空襲もなく、
身の危険ということはなかったようですが、
キリキリと締め付けられる暮らしは
本当に暗かったといってました。
戦後生まれでよかったですね、お互いに。
蜆子様
銘仙は、元々は丈夫なものなんですよ。
表が汚れたら裏返してまた着る、というくらいに・・・
戦中戦後に作られたものが、
だんだん品質が落ちていったんです。
母の銘仙は「いい銘仙」の、最後くらいかも
しれませんね。