ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

重陽の節句

2012-09-09 17:14:13 | 着物・古布

 

まぁなんのひねりもなく「菊柄」です。

紋錦紗のハギレ、袖3枚分くらいしか残っていません。黒に近いほど濃い紫地に、カラフルな菊。

こっちの万寿菊もかわいいでしょう。時々柄の名前を間違えて売られていますが「みかん」ではありません。

 

   

 

こちらは小菊、こっちもかわいいです。

 

     

 

 

ではまず「重陽の節句」を含めて「節句」のお話から。 

一年のうちに「節句」とつく日は、5回あります。1月7日の「人日」、以下3月3日、5月5日、7月7日、9月9日…。

「人日(じんじつ)」と言うのはあまり聞きませんね。暦を見れば載っていますが、元々は中国の…、

これを書くとほんとに日本という国は、どれだけ大陸文化のお世話になっていることかと思いますが…。

とりあえず、かの国も大きいことと歴史が長いことで、さまざまなものが生まれては消えたり混じったり…。

そんなわけで、伝わってきた暦の元「陰陽五行説」なども、元は別々そのうち交じり合って…が、

日本に渡りますとこれがまた日本の風土や思想にあったように…という変化があるわけです。

元々「人日」は中国の古い習慣、1月の1日から7日間、それぞれの日によって動物を当てはめて占いをする…

だったそうです。1日は「鶏」だったと思いますが…とりあえず羊だの牛だのを当てはめて占い、

その日はその動物の殺生をしない…つまり、元日にはケンタのフライドチキンは食べられない…コラコラ。

で、7日が「人間」、この日は罪人の裁きや刑罰を行なわなかったそうです。

今の日本では、1月7日と言えば「七草」、お正月のご馳走に疲れた体をいたわって…ですね。

 

次の3月3日、桃の節句といいますが、これは桃の花が咲くころ…のことで

元は「上巳(じょうし)の節句」、上巳は本来は3月の最初の「巳(み)の日」のことをいいます。

つまり、本来「日」は固定されていなかったのですが、これを「魏」のころに3月3日と決めたそうです。

でもって、日本では最初は要するに「無病息災」を祈る宮中の行事であったと言われています。

桃は「生命の源」と言われる木ですので…。

同じように端午も、本来は5月の最初の「午(うま)の日」、これも魏のころに日が固定されたそうです。

こういうことというのは、元をたどっていくと…というのがあって、実はまったく違うお話だったりするのですが、

いきつくところ、人の願いは「無病息災」「不老長寿」「家内安泰」「子孫繁栄」…なんですね。

特に、乳幼児の死亡率の高かった昔は、まずは子孫繁栄のためにも「子供を守る」ことが、

大切な行事となっていったわけです。

 

7月7日は「たなばた」といいますが、実際には「七夕」とかいて「しちせきの節句」

これがまた、いろんなものが融合しております。本来は7月7日の夕方から夜にかけての、「盆」の行事、

「たな」は「棚」で「精霊棚」のこと、今もちゃんとやるところでは(ウチはちゃんとやってないもんで…こそこそこそとカクレル)

お盆に棚(机など)に飾り物やお供え物をして、盆ちょうちんや灯篭をまわしたりしますね。

あの棚や中国などではよく見かける「幡」、あれを飾って、先祖供養をすることでしたが、

それに女性が裁縫や「機(ハタ)」の上達を願う祭りも合わさりーの、

物語の「織姫・牽牛」の話が合わさりーの…という、実は「元はなんだったんだい…」の節句です。

牽牛や織姫なんて関係ないじゃん、みたいに思いますが、農耕民族の日本では、

牛使いは「農耕」、織姫は「養蚕」にも通じるわけで、要するに豊作豊穣の祈りも合ったわけです。

 

さぁやっときました9月9日、これはまたまた陰陽道で、奇数が「陽」、偶数が「陰」、

9はひとけたの奇数のなかで一番大きい数字、それが重なってめでたい…で「重陽」です。

本当は、重なって重すぎて悪い日…だったのだそうですよ。まぁ「大吉は大凶に通ず」みたいなもんでしょうか。

それがやはり「めでたいでいいんじゃないの?」になったそうで…。人間っていいほうに考えたいイキモノですもんねぇ。

これも今の暦ではなく旧暦で言うと「菊の盛りのころ」 。

菊はこれまた中国で交配によって作られたもので、野生種はありません。(イエギク、という種類になります)

豪華で美しく、気品がある菊が中国から伝来して、宮廷でもてはやされたわけです。

菊の花びらを浮かべる菊酒や、きせ綿(被せ綿ともいう)は、日本独自の風習といわれています。

きせ綿は、9月8日の夜のうちに菊の花に綿をかぶせておき、翌9日の朝、菊を露を含んだ綿を集めて、

これで顔や体を拭くことで、不老長寿になる…というもの。

元々「菊」には「菊慈道」などのお話が伝わるように「不老長寿」の霊力があるといわれるところから、

そういう風習もうまれたのでしょう。

今、菊節句は、ほかのお節句より忘れられて何もしないようですが、

これはひとつには「宮中での公式行事」という意味合いが強かったから…といわれています。

つまり、桃の節句や端午の節句のように、ショミンまで届いて広まらなかった…ということなんですが、

実際には廃れたのは明治のころ…といわれています。江戸時代なんかは結構やっていたみたいです。

実は、明治で暦がかわったら、菊節句のころに「菊はまだ咲いてないし~露も降りる時期じゃないし~」

という、現実的なことも起こったから…なんて事じゃないかという説もあります。わからんでもない…。

私はこっちの「きせ綿」がいいなぁ…。

今じゃ逆に、真夏でも菊、あるし…若い友人が「菊って仏様のお花でしょ」…あらら、専用ではないんだけれど、

あの豪華な白菊なんかはそんなイメージも定着しつつあるんですかね。お正月にも飾るんだけど…。

まぁ厳かな菊より、華やかなスプレー菊や、ポットマムなんかのほうが今の暮らしにはあっていますかね。

我が家の「菊」、ムーンライトは暑さでへたってましたが、ここへきてようやくつぼみがつき始めました。

なるほど菊節句には間に合わんねぇ。

 

      

 

イエギクのほうの菊は、江戸時代の「ガーデニング・ブーム」のときにも、さまざまな菊が作られました。

ずらりと並んだ大輪の一本立ての菊を見ると、すごいなーと思うのですが、

やっぱりごちゃっと咲いてる小菊のほうが、私にはあっている気がします。

 

さて、なんもせずにおわりそうな、本日重陽の節句ですが…せめてハギレ眺めて「夏バテ退散」を祈りましょう。


コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蹴鞠柄コート | トップ | 宝船柄 »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
菊花は美味~ (まあや)
2012-09-09 19:50:56
万寿菊をお饅頭の形の(饅頭菊)だと、最近まで思い込んでいました。

小学生時代は「菊は香りが良い、好き」と言う祖母に、やだ~、嫌いと答えていたのに、[もってのほか]という名のピンクの食用菊を好きになってから、黄色もふくめて天ぷらーおひたしで毎年パクパク、菊は眼によいとも聞き益々…

最近は何かと祖母のことが、納得-同感しております……年齢的なものですよね~~
小菊を少々育てていますけれど、花はまだ。
おかげさまで、とんぼさんのこのページで重陽の節句が叶いました、心なぐさめていただきました、m(_ _)m

昨日の蹴鞠、透かして見ていらしたとのこと、楽しい (^_^)/ 元気をいただきました。 
返信する
うははー (べにお)
2012-09-09 22:06:00
万寿菊、おもいっきり「みかん」だと思っておりました!
は、はずかし~~~~!
いただきものの帯揚げが、クリーム色に橙色の万寿菊なのです。これは…だって…みかんに見えても仕方ないですよね…?(おそるおそる)
重陽の節句、勉強になりましたー! いつも有り難うございます♪
返信する
Unknown (陽花)
2012-09-09 22:22:06
色とりどりの菊の花、きれいですねぇ。
5節句はかろうじて言えても、いわれまでは
とても説明出来ません。
とんぼ様は何でもよくご存じといつも感心
しています。
返信する
小菊 (アゲハ)
2012-09-10 08:29:57
の方が柄としては私は好きだっ!!!!
万寿菊は何故か知ってましたが、あまり好きじゃないので、着物にも帯にもありません。

日本では(4)とか(9)は忌む数みたいに言われるようですよね。
それが中国ではメデタイ日になるんですね。

節句って皆奇数の重なりですね。

省略され忘れられた習慣が多いんだなぁと、詳細に記された歳時記など読んだりするとき思います。
返信する
Unknown ()
2012-09-10 18:33:31
万寿菊は ころっとしていて可愛いから
同じ ころっとした私には 柄としては 合わず という事で
避けていました

菊のお浸しは大好きで 季節を感じつつ 頂いています。

「重陽の節句」
またここで 季節が一区切りですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-09-10 18:42:19
まあや様

饅頭菊でも、間違いではありません。
饅頭では…と、かえたというような経緯です。
光琳菊という呼び方もあります。

以前友人が毎年「もってのほか」をくれたのですが、
私はちょっと苦手でして…。
大人の味…と主人に言われて(お酒のアテにはいいらしいですね)
どうせ私はおこちゃまよと…。高級食材、ただいまは友人が遠く離れてしまい、
いただくことができません。

あの鞠、どうにもフシギですよねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-09-10 18:44:50
べにお様

これと橘は、よく「みかん」と間違えられます。
大丈夫、プロでも「とんでもマチガイ」がありますから。

日本の四季の歳時には、いろんな意味や背景があって、
面白いこともたくさんあります。
消えてしまったり、廃れてしまったりすることが増えてきて、
ちょっと残念に思っています。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-09-10 18:46:14
陽花様

本当は、こんな色の菊はありませんけれど、
柄にするとかわいくてきれいですよね。

いろんなことが忘れられていく日本、止めたいことも多々あります。
どうしたものかと…。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-09-10 18:49:36
アゲハ様

光琳菊は、これだけまとまると、またかわいいものですよ。

中国の偶数好きは、そんなに古いことではないようですね。
たまたま今日の記事にそんなことを書きました。
4と9は、根強く日本では言われます。
つい最近まで、病院には4階がなかったり、4のつく病室がなかったりしました。
今でもあると思いますよ。
外国では13階がないビルとかがあるそうで…。
なんでもこだわるとキリがありませんが、だからといって無視できないのが、
人というものなのでしょう。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-09-10 18:51:06
惠様

菊は見るほうが好きですわー。

もう重陽の節句…と思ったのに、なんなんでしょ今日の暑さ。
七夕のころだってこんなに暑かないわい…と、毒づいてました。雨、ほしいですねぇ。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事