最近の暮らしの中では「袱紗」をあまり使わなくなりました。
今、一番使うのは冠婚葬祭の時の「金封」を出すとき…これも今は「袱紗」といっても、
札入れや封筒のようなカタチに作られているものの方が、よく使われているみたいですね。
名前は変わらず「金封袱紗」と言いますが、本来の袱紗はただの四角い布です。
また「茶道」で使う袱紗は、大きさなどが決まっています。
使い方も少し違いますね。今回はものを包んだり覆ったりのほうの袱紗のお話です。
写真の桐の箱、袱紗の箱です。もう外側壊れてましたけど…。
何か書いてないかと、ひっくり返して調べましたが、残念ながら名前や年月日などの記述はナシ。
真田紐も太くて、汚れてはいましたがまだまだしっかり使えます。
蓋を開けるとこんな感じで入っていました。
箱の大きさは72センチ×30センチ、かなり大きいものです。
中の袱紗は大小二枚で、大は72センチ×68センチ、小は58センチ×53センチ。
袱紗の大きさは茶事のように決められているものもありますが、現在の普通の袱紗は「号」という大きさで
いろいろあるようです。コレも、この二枚では大小ですが、サイズからいくと「大・中」のようです。
柄はどちらも同じ「雅楽・胡蝶」です。
ちと外れますが「胡蝶」について…
少年が4人一組で舞います。
雅楽の説明は、とってもややこしくて難しく、私も「こんなもんらしい」程度です。
まず雅楽は日本古来のもの、大陸から伝わったものなどがあり、それが日本風にアレンジされたりで、
いろいろ種類がありますが、唐からのものを「唐楽」、左方(さほう)、高麗のものを「高麗楽」右方(うほう)といいます。
この左右が交互に出て舞うのを「番舞(つがいまい)といいます。つまりセット・メニュー?
この袱紗の「胡蝶」は、「童舞(わらべまい)」という内容のひとつで、成人していないものが舞う演目の
「迦陵頻(かりょうびん)」という舞の番舞です。 迦陵頻は「迦陵頻伽(かりょうびんが)」という仏教の想像上の生物、
下半身が鳥の姿をしていて、極楽浄土に住むたいへん声の美しいものとされています。
胡蝶は、そのまま「蝶」ですね。背中に大きな蝶の羽を背負って舞います。
ちょっと光の当たり具合がおかしくてすみません。大小の比較です。
柄をアップしてみますと…
大きさが違うと、ちと変わりまして…上がおおきいほうなのですが、眼…五木ひろしになってるし…。
裏は、大きな家紋が織り出されています。
四ツ目菱ですね。
本綴れで、たまたま呉服屋さんの奥さんがきたので見せましたら「いいとこのお嬢さんの嫁入り道具」とのこと。
綴れもたいへんいいものだそうです。傷もシミもなし…お買い得でしたー。使い道ないんだけどー…。
こんなふうに、専用おふとんつき、大切に使われたのでしょうね。
元々袱紗というのは…まず古い時代は「収納容器」として、箪笥ではなく「櫃(ひつ)」でした。
特に「唐櫃(からびつ)」が使われました。いまでいうなら衣装箱ですね。
この箱の上に日よけホコリよけにかけられていたのが「袱紗」です。
そののち、ヒトサマにものをお届けするとき、この唐櫃に贈答品を入れ、相手に渡すときは、
櫃の蓋をとってひっくり返し、そこに差し上げるものを載せて、その上から袱紗をかけました。
この「櫃の蓋」というものが、やがて「広蓋」とよばれて独立して使われるようになりました。
早い話がお盆みたいな役目です。
広蓋は元々衣装箱の蓋と同類ですから、反物とか衣服などを載せるものでしたが、
その後暮らしの道具の変化や、ものを送る習慣の変化もあって、小さい蓋も必要になり、
蓋から「盆」になり「万寿盆」あるいは金封専用の「切手盆」など小さいものが一般的になっていきました。
このそれぞれの蓋や盆にかけるのが袱紗、というわけで、まんま「掛け袱紗」といいます。
万寿盆は、京都のイトコなどは今でも使いますが「万寿」は「まんじゅう」で、
袱紗はその饅頭の上にかけるので「饅頭袱紗」といいます。
冠婚葬祭、イトコは必ず「でっかいお饅頭」を送ってきます。京都ですから薄味ですが、
それでも一人では食べきれない…小さいの10個くらいにしてくれないものかと、毎度思っています。
饅頭袱紗、私の嫁入りのとき持たされたのは、紫の塩瀬で五三の桐紋があるものでした。
掛け袱紗の大きさは、つまり下の蓋(盆)の大きさによってあるわけですが、
大きいものはただ「掛ける」もの、袷袱紗は、盆と一緒に使うもので、掛けるのではなく包みます。
豪華な袱紗の場合は、袱紗を掛けて、更にそれを風呂敷で包む…ややこしい。
一番小さいものは「手袱紗」といって、金封を包む小風呂敷のようなあれです。裏はついてません。
染の場合には、無地の表に染め抜きの家紋、裏は無地、最近は裏に名前を入れてくれるところもあるそうです。
喪服の草履と同じで、似たようなものをみんなが使うような場所では、名前入りがいいですね。
織りの場合は、紬地なども使われますが、やはり本来は塩瀬羽二重かちりめんが主流です。
織りの豪華なものは「綴れ」です。重厚な柄が織り込めるので、吉祥柄や「壽」などの字柄もあります。
裏には家紋が織り出されるのが一般的。
とまぁ、基礎知識としてはこんなもんなのですが、大きさも鯨からセンチになってややこしいし、
今大きな袱紗は、使われませんね。
昔はちょっと使う袱紗は自分で着物や帯のハギレで作りました。ヤフオクなどにも出てきます。
母も帯のハギレなどで作ってましたが、必要なのは「金封」のときだけ…で、
いつのまにか花瓶敷きになってたりしましたっけ。
ものを包む…というのは日本のステキな文化ではあるのですが、
たとえば同じ金封でも、お祝い事と、不祝儀では、包み方が違ったりしますから、
ついつい「札入れ式」みたいな方が、考えなくていいですから普及するんですよね。
また、受付などでの「間」といいますか、名前を書いたりあれこれするのに、懐から出して包みを開けて…
というより、さっとスーツの内ポケットから出せる方がスマート…なんてこともあるんでしょうね。
この袱紗、使い道は我が家ではおそらくありませんが、大切に保管したいと思います。
まちがってもバッグなどにはいたしませんので…。
片面は、松竹梅と反対側は壽でした。
娘の結納の時、家紋入りの塩瀬の袱紗や
広蓋一式誂えましたが、あまり出番が
ありません。というか・・・そんなに
ご大層にお祝いをする事が無かったと言う
べきか・・・
最近は夫婦紙や末広をつけてのお祝いも
少ないのではないかと思います。
式場でお祝いを渡すご時世ですからね。
そうなんですよね。
私も結納の時には扇箱、嫁入りの時には
袱紗のそろいを持たされましたが、
はて、どこにはいっているのやら、です。
日本の包みの文化とか、特にお祝い事のしきたりとか
ステキなものが多いんですけどねぇ。
味気なくなっています。
葬礼や法要の際に使うくらいで、そういったもの…とか
ついつい思っていました。
源氏物語でも、高台にのったおくりものの上にかかっていた布を
見ていたのに(^▽^;)意味を知らないとこうなるものですね。
勉強になりました。ありがとうございます。
実家に古い「ツルの刺繍」のものがあります。
もうお飾りですねぇ。
いい習慣だと思っていても、
実用的でないと、廃れてしまうのですよね。
さみしいものです。