
平絹のじゅばん地、袖片方分しかありません。
毎度のセリフですが、昔のものはどうしてこう楽しいんでしょう。
まずはアップ写真を…。

女性は一人、前帯がいますね。被衣(かつぎ)は全員かぶっています。
挟み箱を担いだお供の向こうには「裃の武士」、
正確な時代考証をしているかどうかはこちらに置いといて、
これだけの絵から見ると「元禄」のころでしょうか。
右の女性のひとりは、振り向いて隣の女性になにやら耳打ちしているような。
「ねぇちょっと、今のヒトの着物の柄見たぁ?年の割りにケバくない?」
「見た見た!あの年であの柄はないわよねぇ」…、
んでもって、向こうのお店の主人と使用人(かっこはそうではないんですが)は
「ちょっと、ヒトのことなんかいいから、よっていきません?お安くしますよ」
とかなんとか言ってるように…みえませんか?
さて、この絵を見て、どんな状況なのか推理してみましょうか。
左の前帯婦人と挟み箱や提灯を持った三人、それに武士一人、
これはグループ?それとも「武士とお供三人」と「女性」はべっこ?
「女性」の位置的に、グループのようなきがしますねぇ。
提灯持ったひとが、ちょっと女性の方を見ていますし…。
では、武士と女性の関係は?「夫婦」ではないと思います。
なぜなら、理由その一「当時は夫婦でも『同行』はなかったから」、
同じところへ行くのでも、妻は離れて歩きました。
理由その二「右の女性が後ろ結び」ということは「両方の結び方が混在していた」
そのころ前帯だったのは「身分が高い奥方」か「年寄り」でした。
お供を連れ、一番後ろから悠然と行くのは「奥方様」、
で武士はつまりは「ぼでーがーど」…というのが推理なんですが、
ただねぇ、お供を連れて歩くときは、奥方様が「先頭」だと思うんですよ。
提灯は前だったとしても「挟み箱」担いでるのは本来「うしろ」…。
こちらが別の一団、主人が先頭、後ろにお供、挟み箱、ですね。
前髪立ちのお小姓までついてます。これってアリ?それとも息子?

なぁんて、ほんとはそこまで時代考証だの、構図だの、
考えて描かなくたって自由ですから、ただの「お出かけ集団」でいいと思います。
でも、ひとつの柄を見ながら、そんなことを考えるのも、楽しいものです。
お次は「大道芸」、今でいう「ジャグリング」やってます。
筒の両端に房のついたもの、どこかの「踊り」でありましたね。
今まさに、子供たちが駆け寄ってきています。

左の男の子が持っているのは「張子の馬」、棒の先に馬の頭(かしら)がつき
棒の下には小さな車輪がついていて、棒にまたがり馬に乗ったつもりで、
はいどうどうと遊ぶんですね。それよりも「大道芸」の方がおもしろい!
と、すっ飛んできた…というカンジですね。旅人がひとり、見とれています。
早く行かないと日が暮れちゃいちゃいますよぉ。
五枚目は「店先のようす」、「扇子屋さん」のようです。
男性が一人、扇子をもっています。その向こうにおいてあるのは「地紙」、
それにしても、商売っ気のない店ですねぇ、お客ほったらかしで店員がいません。
奥へ別の商品でもとりにいったのでしょうか。

このお店ののれんの柄、これは「宝尽くし」の中にも出てくる「蔵の鍵」柄。
蔵というのは古い時代は、実際には鍵というより「内鍵」が使われていました。
つまり、現代の雨戸なんかに使われる「こざる」と呼ばれる方式。
外からはあけようがない…。蔵は、横にあけた小さな差込口から、
この鍵、正確には「鍵開け棒」を差し込んで
「こざる」のもっとややこしいようなものを、引っ掛けてはずしたわけです。
こういう鍵だと、外からは開けられませんから「蔵の守り」として、
「大切なもの、宝尽くし」の中に入れられたわけです。
財産を守ると同時に「蔵の数が増えますように」という願いもあったのでしょう。
着物の図柄には、こういうところでもとにかく「めでたい柄」が使われます。
この一枚のなかにも、のれんの柄は「鍵」「松」「打出の小槌」など、
またところどころの植物も「松」「梅」など。
この絵、こういうものはたいがいそうですが、
決して上手な絵ではありません。さらさらっととりあえず
「それがなにであるかわかればよい」くらいの、雑な絵です。
それでもちゃんと柄になっていますし、楽しい物語がつまっています。
昔の日本のどこかの町の街道風景、こんなふうに、私たちの先祖は
日々を暮らしていたのでしょうね。
大反省!一つの柄を時代考証しながら、また
推理しながら見ると本当に楽しいですね。
とんぼ様の想像力ほんと!たのしいで~す。
昔の浮世絵などは大事がられてるのに(よくは知りませんがそう思うのですが
なんか自分が街道を歩いてる気分?!
昔の柄は楽しいです。
麻の葉様
昔はこんなのが当たり前だから、
どんどん着倒したのでしょうね。
せめて残っているものだけでも、
捨てないでほしいものです。
けっこう捨てられちゃうんですよ。
お舅さんやお姑さんの着物がじゃまなので
廃品業者にお金払って処分した…なんて
友人から聞くと、卒倒しそうになります。