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昔ながらの「ベンジン」です。家に必ず一本はありました。
母のは着物専用で「衿ジン」なんて名前が付いてたと思います。
これは染み抜きなどにも使われますが、今回はドーンと思い切って使う方法です。
実験用に「薄汚れた帯締め」でもないかと…探してみましたが、それほどのものはさすがにありませんで…。
とりあえず「やり方」のご説明だけ、致します。
広口の大きなガラス瓶を用意します。上のベンジンの容器、実はプラなのですが、
プラの種類によっては変質する素材もありますから、一応やめたほうがいいです。
ガラス瓶はクチがしっかりしまるもの、フタのところから液体が漏れないことを必ず確認してください。
それと割り箸一膳、古いタオル、新聞紙。
ここから先の作業は「 換気と火気 」に、十分注意してください。
できれば屋外の火気のないところをお勧めします。
先に新聞紙の上にタオルを広げておきます。
瓶にベンジンを入れます。量は、洗うものの大きさによりますが、まぁ中で動かせる量。
こんな感じです。これは蜂蜜の大瓶、高さ20センチくらい、ベンジンは半分より少し少ないくらい。
ここにきれいにしたいものを入れます。
今回実験用には、私物の古い帯締めを使いました。トップ写真のものです。
目だって汚れてはいないのですが、まぁ古いのでなんとな~く手垢がついてるかな、と思って…。
これを瓶の中に入れます。なんか「標本」みたいですが…。ネクタイなどは丸めて入れます。
ここからは「シェイクシェイク!」
音楽ならびにダンスをご利用の方は「ルンバ、サンバ、チャチャチャ」などを…「盆踊りおよび演歌」系はあいません。
万が一液ダレするといけませんので、さかさまにするのは、やめておきましょう。
中で洗濯機のように液がグルグル回る感じで。
で、一曲踊り終わりま…あ、チガッタ…ある程度シェイクシェイクが終りましたら、フタをあけて割り箸でモノを取り出します。
ここで少し液ダレを待ちます。広げておいた古タオルの上に置き、くるくる巻いたり押さえたりしてベンジンを取ります。
もちろん全部はとれませんが、揮発性が強いので、あるていど押さえるだけでOK。
帯揚げなどの場合はしずくが垂れることもありますからきをつけて。
そのあとは自然に乾くまで、風通しのいいところにつるすとかかけるとかします。
帯締めなどは、芯まで乾くように時間をかけてください。薄い布ならすぐ乾きます。
においはほとんど残りません。
気になるようなら、そのあと匂い袋とか香りのいいお線香などをいれた箱でしばらく置いてください。
この「シェイク」方法は、小物に限りますが、特にネクタイとか帯揚げ帯締めなどは、便利です。
洗剤で洗うように、わーっきれいになったー!という実感はあまりないのですが、さっぱりはします。
あまりはっきりしないのですが…ツヤのあるなしはライトの加減です。
上が洗う前、下が洗ったあと。なんとなく白っぽくなっている気が…程度です。
ベンジンと言うのは「石油」からできるもの、早い話がガソリンですが、染み抜き用などは洗剤成分が入ってたりします。
写真のベンジンは
「汚れ落とし…エリ、ソデ、器械、器具の油」
「その他…油性マジック落とし、シールはがしに」
と書いてあります。お分かりのように「油脂系の汚れ落とし」、つまりドライクリーニングと似ていますね。
手垢汚れと言うのは、手のアブラ分に汚れが付いたものですから、落ちるわけです。
ネクタイのちょうど結び目の辺りの薄黒い汚れも、手アブラですから。
着物や小物のメンテは「一にこまめ」「二に慎重」です。
着物を着て帰ってきたら、まず着物も小物も風を通して体温や汗の水分を飛ばす。
水溶性のシミ、油脂性のシミ、よく探して見分けて、それぞれにこまめに対処。
できてたら問題はありません。でへへ。母はほんとにこまめにしていました。
というより、着物のある暮らしをしていると、それなりの作業はアタリマエだったわけです。
それは今の時代の私たちが「今日パスタ食べて、ケチャップ飛ばした!」とか「コーヒーこぼした」とか、
「タバコのにおいがしみついちゃった」とか、そういうときにあれこれ考えてやるのと同じなわけです。
その選択肢のなかに「ベンジンで」と言うのがない…のは、今いろんな洗剤がありますからねぇ。
クリーニング店もいっぱいありますし…。
ドライ・クリーニングは、ベンジンで洗うのと同じ(ベンジンそのもので洗っているわけではありません)で、
ドライ用の「有機溶剤」を使っているわけですが、これがおみせによって違ったりします。
洗剤成分を入れるところもあれば、水溶性汚れを落とすのに水を使うところもある…。
大きなチェーン店などでは、規定のものを全部の店で使う…。
その場合、溶剤の管理がしっかりしているかどうか、と言ったこともあるわけです。
よく、ドライに出したら臭くて臭くて…という場合がありますが、あれは溶剤の管理が悪い場合が多いです。
また場合によって、ちゃんとしたドライなら起きない縮みや、なんかちっともきれいになってない感じ…なんてことも。
また、水分が混じったりすると、ドライなのに縮みも起こったりします。
セルフ・ドライの乾燥は、60度くらい…だと、プロの人が書いていました。
溶剤では縮まなくても、熱で縮むものはありますからね。そんなところもきをつけるポイントです。
着物関係、特にセルフ・ドライは自己責任ですから、これは大事に着たい…と思うものは、
ちゃんとプロにお願いするのが一番です。
それを踏まえて…この「ベンジン・シャカシャカ法」も、場合によって色落ちしたりがありますから。
帯揚げやハギレなどは、はじっこでお試しをやってからにしてください。
そしてもう一度、くれぐれも「火気厳禁」です。あっというまに引火します。静電気も注意です。
ほんの少量でしたが、指先燃やしたことがあります。ヤケドまで行きませんでしたがパニくりました。
洋服に引火したらたいへんですからね。
暖房器具、タバコ、灰皿など、周囲をよく見てください。
それとベンジンは匂いますし、大量に吸い込むと要するに「シンナー中毒」みたいになりますので、
換気・通気もしっかり考えてやってください。
最後に、保管するときはクチをシッカリ締めて、冷暗所、ですね。
しっかりしめていてもよほどの密閉容器でない限り、徐々に揮発していきます。
長く使わないと「あれっこんなに少なかったっけ?」なんてこともありますから、時々見てください。
おまけですが、シワシワになった帯締め房の直し方。ご存知だとは思いますが…。
こんな帯締め、あまりに赤すぎて奥の方でヨレてました。
やかんにお湯を沸かして沸騰したら、湯気に当てます。なぜか湯気が写ってないんですが、シュンシュンでてます。
しっかりあててください。しんなりして、少し湿るくらいまで。
やけどに注意、それと帯締めの本体の方が、ガス台のうえに落ちて汚したり焦がしたりしないように。
急いで平らなところにおいて、やさしく櫛でときます。(置いてあるのはカッコつけの飾り櫛、はははです、すみません)
櫛は普段使っているものはアブラが付いていたりしますので、プラ製のものをよく洗うといいです。
とくと、はずれそうなのや抜けているもの、切れているものが出ます。
そのあとこんなふうに人差し指と親指でぎゅっと握って、上の余分な糸をカットします。
ここでもう一手間、もう一度湯気に当てて、今度は少し引っ込み目に握ります。
熱が取れたらそっとおろして、形を整えます。十分湿気を飛ばしてください。残っているとカビ生えます。
このあと、房専用のプラにはめ込むとか、紙で巻くとかしてください。
というわけで、ちょっと一手間…のお話しでした。
追記…
おもしろい組み方…と言っていただきましたので、アップを載せます。
なんともフシギな組み方なんです。丸くなっていますが、糸をタオルのループのようにふくらませたものを、
ちょうどカッコ、つまり「( )」の形に向かい合わせてあります。
ド・アップにしても、私にはどこがどうなっているのかわかりません。
汚れものを探して、やってみたくなります。
帯締めの房はボリュームを出す為に足し房
してあると、年月で糸が緩み、抜ける事が
ありますね。
変わった組み方の帯締めですね。
以前使っていたものがなくなって、
しばらく買わずにいたのですが、
また取り寄せました。
この帯締め、40年以上経っていると思います。
機械組みの安物ですが、おもしろいでしょう。
アップ写真を「追記」で載せましたので、
ご覧下さい。
糸がどう動いているのか分からない
不思議な組目です。
そうなんですよ。ルーペでしげしげ見ても、
どこからどこに糸が渡っているのか、
皆目わかりません。
今度おあいするとき持って行きますわ!
かわいくて好きだったんですが、
さすがにねぇ…赤すぎます。
まだ一度も使っていません。ってかなんか着物に自分で処置するのがなーんか怖くて。
でも小物は、特に帯締めの房の整え方は一応知ってはいたので、きちんとする時はお湯を沸かして.....なんて思ってましたけど、今回、こんな風に丁寧に公開してもらって初めて(ああ、良かった!)って思いました。
知識としては自分の中にあっても、実際やってみた事がない者には手順もなにも解りませんもの。
感謝・多謝です。
にしましても複雑な組み方の紐ですね。
美しい赤!!!!
ベンジンとか、或いは洗剤などで染み抜きをしたとき、
「跡が輪ジミになって残ってしまう」というのを耳にします。
あれは、ぼかし方がたりないわけで、まずはシミ落としするものの下にタオルを置く、
それから水で絞ったタオルをそばに置いて、
ベンジンなどを使った後、絞ったタオルの水分で、
下のタオルに汚れを写すわけですが、広く叩くんです。
狭く叩くから輪ジミが残りやすいんです。
どれくらい…というのは、ハギレで実験しておくといいですよ。
房直しは、昔はいつも火鉢にやかんがかかっていましたから、
すぐできたし、やかんの胴体の部分で、毎日使うリボン(おさげでしたので)を
すーっとあててアイロンしてました。
いまじゃわざわざお湯沸かす…手間ですねぇ。