無関係画像で、すみません。トップは生協で届いたシャクヤクです。
プックリおデブちゃんでかわいいです。
シャクヤクって着物の図柄になるの、わかりますねぇ。きれいです。
さて、今は衣更えの時期…お天気と相談と言うこともありますが、5月は衣服を入れ替える季節ですね。
このところ夏のような暑さが来たかと思うと、まだ夜は少しひんやりしたり、
忙しい季節でもあり、まだ長袖のTシャツはしまっていません。
着物は5月末までは袷ですが、今の時代そんなこと言ってたら、熱中症で倒れそうになりますから、
早い方はすでに単衣でおすごしです。「昔ながら」がもう通用しない状況なのですから、
それでいいと、私も思っています。
またmixiの方のお話なのですが、ある方が伊集院静氏の著書「志賀越みち」のお話を書いておられました。
ラブ・ストーリーだそうですが、主役は「京都の四季」である…と評されておられます。
文が抜粋で載っておりました。その文が衣更えのお話でした。
古都に夏がやってきた。
昔から京都の人々はこの暑さに耐えるためにさまざまな工夫をしてきた。更衣(ころもがえ)である。
何より変わるのは人々の服装である。
中でも女性の着物は着る素材そのものもかわる…
五月までの袷が単になる。
六月は縮からはじまり、上布、帷子、絽、紗と慣いに従ってあざやかに移って行く。
京都というところは、まだまだ古い慣習を遺しており、ちょっとした町家でも、
ふすまや障子を葦戸に替える、すだれを提げるなど、夏のしつらえにかえます。
6月30日には「水無月」を食べ、夏越祓いにでかけます。
着物ももちろん、伊集院氏の文のごとく変わっていきます。
もっとも、着物に関しては日本中、時期は少々ずれても同じように変えるんですけどね。
ただ、よく御存じだな、さすが…と思った次第です。
ひとつ…文は「上布、帷子、絽、紗、と慣いにしたがって…」とあるところ。
上布、絽、紗は「素材」です。でも「帷子」は違いますね。なんでしょう。
「帷子」は「かたびら」、今は広義で「単衣物」とされています。がまだ「麻の単衣だけ」を指すこともあります。
元々は「麻の単衣の小袖」のことだったためです。
かつての日本には、絹と麻、それ以外のものが主流で、木綿は安土桃山をすぎてから栽培が奨励されて、
広く衣料素材として広まったものです。昔、絹はあっても当然貴族や富裕層のものでしたから、
一般庶民は「麻」とそれ以外、「それ以外」というのは、その土地で繊維がとれるもの、であり、
当初は「ほかにないから」だったものが、今や「希少」になっています。科布、葛布、南では芭蕉布など。
とりあえず…貴族などにとっては、麻の単衣小袖(これも以前に書いていますが、小袖とは袖口が小さく
なっているもの。貴族の衣装のように袖が下までフルオープンのものが大袖)は、一番下に肌着のように着るものであり、
入浴の際に必須のものでした。「湯帷子(ゆかたびら)」といいます。当時の風呂は「サウナ式」でしたから。
今の「ゆかた」と言う言葉は、この「ゆかたびら」が語源と言われています。
つまり、昔は帷子は「麻の単衣の小袖」ということだったわけです。
後年、麻以外にも単衣ができましたので、麻に限らなず「単衣物」という意味になりました。
でも、単衣は単衣と言いますから、今耳にする「帷子」といったら、亡くなった人に着せる「経帷子」くらいですかねぇ。
では、素材の名前になんで「帷子」が…と思ったのです。
まず文の最初にある「上布」ですが、これは「上質の麻」です。
元々古来より日本が栽培して使っていたのは「大麻」ですが、これはあのマリファナのような成分のないものです。
ところが、戦後アメリカの…これを書くと長くなりますので、とにかく栽培は許可制になり、やたらと作れません。
「麻」って実は「眷属」がとても多い植物で、いわゆる「分類」でいくと「アサ科」「イラクサ科」など、
細かく分かれますが、結局繊維をとれるものはみな「麻」と、まるっと総称したわけです。
後年外国の「麻」も入り、例えばマニラ麻とかヘンプとかリネンとか…。
なのでややこしいのですが、日本で「上布」と呼ばれる麻は「苧麻」「カラムシ」「青そ」などと呼ばれる「麻」です。
上布では越後上布、宮古上布、能登上布、八重山上布などが有名です。
文中でこの上布の次に「帷子」がきているということは、単衣物の中で「麻」ではないもの、
更に絽、紗とでてきますから、この場合の帷子(単衣物)は、おそらく「生絹(すずし)」のことではないかと思います。
「すずし」という呼び名も、なんとも日本的ですよね。
すずし、は「生絹→きぎぬ」です。
蚕からとった糸は「生糸(きいと)」、それを精練したものは「練糸(ねりいと)」、
生糸で織ったものが「生絹」、練糸で織ったものが「練絹」です。
生糸は断面図を見ると、糸の中心にフィブロンという繊維があり、そのまわりにセリシンという物質があります。
包んでいるわけですね。このセリシンは、蚕が繭を作るときのいわば接着剤の役目もあり、
真ん中の糸を保護する成分です。本当は、ついたままの方がたとえばヤケなども起きにくい…
保護しているのですから当たり前ですが、劣化なども防げる素晴らしいガードなのですが、
衣服にしたときの肌触りとか、染色しづらいなど、いわばヒトサマにとっての勝手な理由で?精練をするわけです。
方法はいろいろで、薬品を使うとか、今は高温高圧なども使われます。
精練された生糸で織った「練絹」が、普段目にしている着物などの絹と言うわけですが、
「すずし」は、精練しないままの生糸を使って織られたものです。
紗ほどではありませんがハリがあり、薄くて軽く、いかにも夏向きの生地になります。
オーガンジーといったら、わかりやすいですね。なので平安貴族の夏の衣装に使われました。
絽と紗はいわゆる「絡み織」で、糸は練糸ですが、織り方の工夫で折り目に穴をあけたり、目を粗く見せたりしています。
というわけで…「上布、帷子、絽、紗」という一行に、ちょっといろいろ思いを巡らせたことでした。
着物好きは、細かいことにうっさいのですーははは。
昨日たまたま「帷子」とは何ぞや?という話になって、とんぼさんのブログに載ってたあとさっそく読み返しました(笑)。
なんとなく字ではみていた「帷子」「生絹」など
なるほどそういう事かとよくわかりました。
すずしというのも。
いつも勉強になります。
先日は「近江上布」がテレビで出ました。
手間かかっていますねえ。
良いな~と思いながら観ていました。
サマーウールの反物があるのですが、まだ手が疲れるので縫わないままになっています。
今夏間に合わないわ。
ほんとに歴史が長いのだなぁと思うことが多いです。
母の葬儀の時も、葬儀屋さんが「故人様のお衣装」と、
そんな言い方で説明するので、
「経帷子は…」と私が言ったら、あちらの方が驚いてました。
しきたりそのものもだけど、ちょっと前なら通じる言葉が
通じないんですよーって。
すでにわからないもの…が増えていて、
私も知識だけで、現物がなかなか見られないものも
いろいろあります。
すずしは…お高くてねぇぇぇ、ははは。
縫い物、ゆーっくりですよ。まだ来年も再来年も、
毎年「あっつーい」夏は来ますよってに。
(暑いのきらいだー!)。