ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

呉服の三越

2016-05-13 01:31:03 | 着物・古布

 

三越の歴史については細かいのでここでは省略いたしますが、

今、江戸東京博物館で「近代百貨店の誕生 三越呉服店」という展示をしています。

友人が行ってきましたよとアップしてくださったので、いろいろ写真など見せていただきました。

15日、今度の日曜日まで開催しています。私は…行かれませーん…(ーー;)

 

とりあえず、その三越展で過去のポスターや冊子など、見られるそうなのですが、

私の手持ちの「古本」の中に、その「冊子」があります。

展示場では、当然ガラス張りの中での公開でしょうから、

きらーくに見られる私の手持ちのボロボロ本をお見せいたします。

 

私の手持ちの「三越関係冊子」、もう5~6年前の入手だと思うのですが、

ヤ○オクで、さしたる値もつかずで落札。まぁこんなものは興味のある人、少ないでしょうから。

ボロボロ状態で、初期のもの、大阪三越のものなど合わせて10冊ほどあります。

気を付けてみないとページがどんどん外れるし、手は薄汚れるし…のシロモノですが、私にとっては「お宝」。

で、トップにのせたのが「時好」というタイトルの冊子。

お客様向きの冊子で、いわば「通販カタログ」です。「時好」とは「一般的に好まれるもの」、

平たく言えば「今の流行」みたいな言葉ですね。

郵便制度が確立して、郵便振替と言うものができるようになったための「通販」開始ですね。

こちら、別本の「後ろについてる振替用紙」、これに書きこんでお金を送ったわけです。

 

       

 

この「時好」は、明治の終わりに「みつこしタイムス」と名前をかえました。

こちらは「みつこしタイムス」になってすぐと思われる「臨時増刊号」、

明治44年9月のものです。

 

               

 

この最初のページには製品の生地見本が貼り付けてあります。「ホンモノの生地」です。

手間かかってますね。どれくらいの部数だったかはわかりませんが…。

 

           

 

次のページには「通販はこんな風にやってます。顔を合わせないお買い物でも心配ないですよー」のアピール?

細かい四角の戸棚は「御註文のお手紙入れ」

 

        

 

店員さんも着物が多く、なによりこのころはひたすら「人海戦術」だったのですね。

このカタログになると、呉服だけでなく様々なものが販売されています。

こんなのも…女性用は右上の編上げのみ。ハイカラさんはこれに袴…だったのでしょうねぇ。

このほか、懐中時計、簪、化粧品、洋服、洋装肌着など、扱う商品は多岐にわたります。

このころからこんなだったなんて、ちょっと驚きですね。

 

           

 

ちょっと戻って、トップ写真の「時好」、もう一度出します。

 

         

 

大阪支店の開店の広告がありますので、明治40年かと思います。

これの裏表紙がこちら。読み辛いですぅ。最後のとこなんか全部漢字。時代を感じます。

 

       

 

この号は季節先取り(当たり前ですが)で、浴衣の販売生地ばかり。

例えばこんなのばかりが並んでいて、さかんに「中型がはやっている」とあります。

 

            

 

中型と言うのは「柄の大きさ」で、こまかーい小紋と、大きな花がポンポン飛んでるような大型との間、の意味。

浴衣で細かい柄と言うと、昔おじいさんやおばあさんが来ていたような藍染め(紺白)の浴衣。

細かい柄は、どうしてもジミ目になります。また大きな朝顔や蝶が飛んでいたりすると、これはもう若向き。

なのでその真ん中あたりの小さからず大きからずのものは、色や柄の種類を選べば、

幅広い年代に受け入れられて使いやすい…と言ってるわけですね。

更にこのころからすでに「染めの技術」「染料」が日々精進…でよくなってきていましたから、

「色があせない」「色落ちしない」と、自画自賛しております。

 

そして、笑っちゃいけないけれど…の記事がこちら。上半分だけですが…

 

       

 

タオル浴衣…要はバス・ローブですがな。

ローブそのものは「ワンピース型の外套」のことですが、これはしっかり「バス・ローブ」と書いてあります。

なんたって「土耳台湯(とるこゆ)」に用いる…云々。

「トルコ湯」、私たちの若いころの風俗関係「トルコ風呂」ではありませんですよ。

いやぁこれ、詳細は私にもわかりません。サウナかなぁとも思ったのですが、

実際のトルコの公衆浴場では、半身浴とか岩盤浴、プラスあかすりの専門職がいる…サウナともちょっと違うのですよね。

いったいどんなお風呂だったのか…これが必要…なんとも不思議なお話ですが、これ写真つき。

サザナミローブという名前がついています。なんか文豪風の紳士…がベビー服を着ているよーな…

売れたんですかねぇ…コレ…。

 

        

 

ちなみに、上の文のなかで「六ケ敷い」と言う言葉が何度も出てきます。これ「難しい」のことです。

ちょっと年取った人が「こんなのム『ツ』カシイ」って言うのきいたことありませんか?

これは明治にはよく使われた書き方らしいです。

 

またちょっと戻って「中型」のところの説明ページの最初のところ…

 

               

 

一部を拡大します。

 

        

 

上流社会、普通人士…「人士」とは、一応教養ある人とか地位のある人と言った意味がありますが、

ほんとは「庶民は」とか「そのへんのおばさんおねぇさんは」って、そんな感じですよね。

「令夫人」なんて言葉も出てきます。

本当は上流では夏も絹(絽とか紗とか夏紬とか帷子とか)で、木綿の浴衣なんて庶民の夏着だけど、

今は夏の着物では差がなくなってきているから、令夫人も浴衣に黒繻子の帯など締めて、

当時や旅行に出かけるようになってきている…夏に黒繻子の袷帯かい…。

なんだか気を遣ったように見えて、実はまだまだ「階級」が残っているということがわかります。

今こんなこと書いたら「別にぃあたしなんかセレブじゃないしぃ。いいわよ、ユニ○ロもイオ○もあるしぃ」ですね。

 

カタログの中には、庶民向けの銘仙などもたくさん出てきます。

銘仙は、高い絹が買えない「階級」の人が気楽に変える絹物として、一世を風靡したものです。

元々「掛売なし」「対面販売」、そういう「デパート商法」を広めようというコンセプトで始まった

日本初の百貨店ですから、結果的に段階を踏んで「庶民でも買いやすい」にしていったのだと思います。

社会の変化というものは、こんなところでもおもしろいものです。

かつて「今日は帝劇 明日は三越」の、歴史に残るキャッチコピーを出した三越ですが、

今のキャッチ・コピーは「飾る日も 飾らない日も 三越で」。

むしろ今の方が、「普通人士」の呼び込みを一生懸命している感がありますねぇ。

 

というわけで…ほんとはポスターのお話なども書きたかったのですが、長くなりましたので(いつものことじゃん)

このへんで…あ、ひとつだけ…高島屋もデパートとして開業したわけで、

当時のポスターは高島屋も三越も、たいへん美しいものを遺しています。

今のようにテレビやパソコンなどの媒体がありませんでしたから、もっとも大切な宣伝手段だったのですね。

京都高島屋は、その絵に有名な日本画家を起用しました。

例えば北野恒富など、一方三越は「新人とか新進気鋭と言われる人」を起用しました。

最初のポスターは橋口五葉、このポスターで人に知られるようになったわけです。

また途中からポスターや「みつこしタイムス」の表紙を飾ったレトロモダンなイラストは杉浦非水。

この人は日本で「グラフィック・デザイナー」という横文字の仕事を本格的なものにした人です。

そんなことでも、明治大正という時代は、なんだかわくわくするものが、たくさんあったように思います。

あと二日しかありませんが、行かれる方、ぜひ江戸東京博物館へ…、あ、別に館の回し者ではアリマセン…。      


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2016-05-14 11:20:18
子供の頃、反物の行商に来られていた記憶は
ありますが、このような冊子が有ることも通販
されていた事も初めて知りました。
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Unknown (古布遊び)
2016-05-14 12:34:23
明治から通販があったとは!びっくりいたしました。生地も本物が貼ってあったのですね~

浴衣のお話も興味が尽きません。近かったらぜひ行きたいものですねえ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2016-05-16 00:38:29
陽花様

私もこんなに古くから…と驚きました。
昔は行商とか、何かの修繕とか、
いろいろな人が来ていました。
便利になった分、そういうお付き合いが減りましたね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2016-05-16 00:40:26
古布遊び様

さすがトーキョー…ですねぇ。
たくさんの人が、専門で対応していて、
すごいものです。

江戸東京博物館は、常設展示だけでも面白いです。
何度も行きたいなぁというところの一つですよ。
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