写真の衣装敷きは、生徒のMさんのものです。新しくてきれーだ…。
母は「衣装敷き」を「敷き紙」と呼んでいましたので、私もつい言ってしまうのですが、
字で書けばともかく、言葉で言うと「シキガミ」…で、友人に「アンタは陰陽師か」と笑われました。
なので「衣装敷き」と言えるよう、がんばりまっす!
最近の衣装敷きは、素材もいろいろですが、サイズもいろいろ…。
基本的には畳一枚分くらい100×180…ですが、100×150の小ぶりのものもあります。
衣装敷きは必ず使え…と母がいいました。
それはもちろん「汚れやホコリをさけるため」ですが、もうひとつ「衣装敷きの中で着なはれ」です。
当時使っていたのは母のもので、大きさはたぶん100×180。
母は、着物も帯もそれを着るのも締めるのも、その中で収まるように…と言いました。
それがどうした…といわれそうですが、着物は洋服とは「着方」からして違います。
洋服を着る時、自分で着るときも、誰かが後ろから着せ掛けてくれるときも、
必ず「手」から着ますが、着物は「肩にのせる」ところから始まります。
この肩にのせるのを洋服のように立ったまま、袖から通そうとすると、
体よりはるかに大きい着物が、ばっと広がります。
それをすると、母は「火消し半天じゃあるまいし、仁王立ちして着なや(着るな)!」と言いました。
「着物は身ぃを縮めて、チマッと肩にのせるもんや」と。
今日は、「着方教室」でして、いよいよ実際に着物を着はじめる準備、に入りました。
といっても、まだ着物はきません。
着物を着るには、着物を畳めないとね、ですから、まずシキガミ…いえいえ衣装敷きを広げ、
着物の畳み方からスタート。たいへん覚えがよく、また言わなくても「もう一度やらせてください」と、
自分から言ってくださいますし、私が言ったポイントもちゃんと「○○だからここを…」と、
繰り返していました。あっという間にクリアです。
今、着物関係はみな実家においてあるというので、私のゆかたを一枚渡して、畳み方の基本は同じだから、
家で忘れないように繰り返してね、とお願いしました。
「着物を着る」ということ、ここをこう押さえて、ここで紐を締めて…、と、それだけなら一日で教えられますし、
覚えられます。でも、「着物を着ようと思ったら」、前準備から始まります。
なので、着物の畳み方のツギは「着るための前準備」のお話をしました。
私は母から教わったことしか教えられませんので、それをお話するわけですが、
話しながら、母のことを思い出していました。あぁこんなカオして、こんなふうに言ってたなとか、
これを言うときはいつも「ばぁば(祖母のことです)がよう言うてた。○○はこうやねんで」と、言ってたなとか。
生徒のMさんは、ひとつひとつメモを取りながら、そうかそうかなるほど…と。
今日は彼女のお母さん、つまり私の友人は急用で送迎だけだったのですが、
迎えに来た友人に「とんぼさんのお話って、ほんとおもしろい」と言ってくれました。
次回は実際に着物を着ることに入ります。
二人が帰った後、やっぱり母のことを思い出し、よくまぁ教え込んでくれたものだわ…と、
あらためて感謝したわけです。
「着物はな、動き小さく、流れるように着たら、ダンナが新聞読んでるうしろでも、
知らんまに着られるもんや。畳一枚の上で全部終わらせるのがじょうずやねんで」と言われたっけ。
「まるやの大仕事」と、コレも母の言葉なのですが、「まるや」というのは「まる屋」、
たぶん母の実家近くにあったお店だと思うのですが、履物やさんだそうです。
母は「オマエが何か始めると、ほんまに『まるやの大仕事』になる」と言いました。
昔の履物やさんは、下駄や草履の鼻緒もすげたし、田舎のことですから当時は「藁草履」なども
作ったらしいです。つまり、下駄や草履は小さいものだけれど、それをどうにかするときは、
だいたい胡坐をかいたり、足を伸ばしたり、体を大きく広げて作業します。
それはそういう仕事なのですからアタリマエですが、私のことを言うときには、
「たったそれだけのことをするのに、なんでこうもあちこち店がひろがるのだ」という意味。
確かに…縫い物すれば、お膳のまわりに裁ち落としの布が散らばり、たまに糸が転がっていたり、
布を切ったハサミが座布団の横に置いてあったり、縫い終わったパーツがあらぬ方に置いてあったり…。
狭い家の中で、なんでそう大掛かりに広げるのだと、いつも叱られていました。
着物を着るときは、最初にそれを言われて「敷き紙の中からでたらあかんで」と。
おかげさまで、今は一番小さい衣装敷きのなかで着られるようになってます。
私がどれだけMさんに伝えられるかわかりませんが、今日の課題、
「着物を着る前準備は、実はその前に着物を着たときの後片付けから始まる」という意味を
よく理解してくれました。余分な知識がない分、素直に聞いてくれてありがたいです。
次回は「着装」にはいります。あらら、まず着せて見せなきゃ…ですからねぇ、
自分も着物一式、出しておかねばなりません。よかったよぉ、涼しくなってきていて…。
「まるやのおおしごと」など上手に例えて
とんぼ様に色々伝授されたんですね。
何しろ女の子の一人っ子でしたからねぇ。
全神経集中して「総攻撃」でしたよぉぉぉ。
昔 お店で着せて頂く時に 持って行くよう
母に言われて買い求めました。
とんぼさんのお母様が仰る通り
着物を肩に乗せてさらっと着るのが理想
判っているものの 今や衣装敷きも使用せずに
自宅でバッサバッサと色気なしに着物を拡げ着ております
衣装敷きを拡げるスペース無し
ここでも 片付け問題が
我が家も、着方を教えるのに?衣装敷きのスペースを
なんとか確保しようと、お片づけにもチカラはいったんですわ。
おかげさまで…です。
しのばせてありました。
その後の使用は何回あったでしょうか。
家族のこと、両家両親のこと、
着物の出番はお正月だけだったと
思い出しています。
今は時間もありますので、
楽しむことはできるのですが、
簡単な洋服がよくなっています。
忙しいのに着物で過ごしていた母が
不思議でした。
いろいろお勉強をなさるお嬢さん、
よい先生を身近にお持ちで
お幸せですね。
親はできるだけのものを持たせようと、
ほんとによくしてくれました。
あのころはお正月は着物って、それだけはまだ
ありましたね。
お嬢さん、母親である友人が「あんなに着物が
好きになるなんて思わなかった」って、言ってました。
先生というほどのものではありませんが、
がんばりたいとおもっています。