ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

衣装敷き

2013-09-25 18:00:42 | 着物・古布

 

写真の衣装敷きは、生徒のMさんのものです。新しくてきれーだ…。

 

母は「衣装敷き」を「敷き紙」と呼んでいましたので、私もつい言ってしまうのですが、

字で書けばともかく、言葉で言うと「シキガミ」…で、友人に「アンタは陰陽師か」と笑われました。

なので「衣装敷き」と言えるよう、がんばりまっす!

 

最近の衣装敷きは、素材もいろいろですが、サイズもいろいろ…。

基本的には畳一枚分くらい100×180…ですが、100×150の小ぶりのものもあります。

衣装敷きは必ず使え…と母がいいました。

それはもちろん「汚れやホコリをさけるため」ですが、もうひとつ「衣装敷きの中で着なはれ」です。

当時使っていたのは母のもので、大きさはたぶん100×180。

母は、着物も帯もそれを着るのも締めるのも、その中で収まるように…と言いました。

 

それがどうした…といわれそうですが、着物は洋服とは「着方」からして違います。

洋服を着る時、自分で着るときも、誰かが後ろから着せ掛けてくれるときも、

必ず「手」から着ますが、着物は「肩にのせる」ところから始まります。

この肩にのせるのを洋服のように立ったまま、袖から通そうとすると、

体よりはるかに大きい着物が、ばっと広がります。

それをすると、母は「火消し半天じゃあるまいし、仁王立ちして着なや(着るな)!」と言いました。

「着物は身ぃを縮めて、チマッと肩にのせるもんや」と。

 

今日は、「着方教室」でして、いよいよ実際に着物を着はじめる準備、に入りました。

といっても、まだ着物はきません。

着物を着るには、着物を畳めないとね、ですから、まずシキガミ…いえいえ衣装敷きを広げ、

着物の畳み方からスタート。たいへん覚えがよく、また言わなくても「もう一度やらせてください」と、

自分から言ってくださいますし、私が言ったポイントもちゃんと「○○だからここを…」と、

繰り返していました。あっという間にクリアです。

今、着物関係はみな実家においてあるというので、私のゆかたを一枚渡して、畳み方の基本は同じだから、

家で忘れないように繰り返してね、とお願いしました。

 

「着物を着る」ということ、ここをこう押さえて、ここで紐を締めて…、と、それだけなら一日で教えられますし、

覚えられます。でも、「着物を着ようと思ったら」、前準備から始まります。

なので、着物の畳み方のツギは「着るための前準備」のお話をしました。

私は母から教わったことしか教えられませんので、それをお話するわけですが、

話しながら、母のことを思い出していました。あぁこんなカオして、こんなふうに言ってたなとか、

これを言うときはいつも「ばぁば(祖母のことです)がよう言うてた。○○はこうやねんで」と、言ってたなとか。

生徒のMさんは、ひとつひとつメモを取りながら、そうかそうかなるほど…と。

今日は彼女のお母さん、つまり私の友人は急用で送迎だけだったのですが、

迎えに来た友人に「とんぼさんのお話って、ほんとおもしろい」と言ってくれました。

次回は実際に着物を着ることに入ります。

 

二人が帰った後、やっぱり母のことを思い出し、よくまぁ教え込んでくれたものだわ…と、

あらためて感謝したわけです。

「着物はな、動き小さく、流れるように着たら、ダンナが新聞読んでるうしろでも、

知らんまに着られるもんや。畳一枚の上で全部終わらせるのがじょうずやねんで」と言われたっけ。

 

「まるやの大仕事」と、コレも母の言葉なのですが、「まるや」というのは「まる屋」、

たぶん母の実家近くにあったお店だと思うのですが、履物やさんだそうです。

母は「オマエが何か始めると、ほんまに『まるやの大仕事』になる」と言いました。

昔の履物やさんは、下駄や草履の鼻緒もすげたし、田舎のことですから当時は「藁草履」なども

作ったらしいです。つまり、下駄や草履は小さいものだけれど、それをどうにかするときは、

だいたい胡坐をかいたり、足を伸ばしたり、体を大きく広げて作業します。

それはそういう仕事なのですからアタリマエですが、私のことを言うときには、

「たったそれだけのことをするのに、なんでこうもあちこち店がひろがるのだ」という意味。

確かに…縫い物すれば、お膳のまわりに裁ち落としの布が散らばり、たまに糸が転がっていたり、

布を切ったハサミが座布団の横に置いてあったり、縫い終わったパーツがあらぬ方に置いてあったり…。

狭い家の中で、なんでそう大掛かりに広げるのだと、いつも叱られていました。

着物を着るときは、最初にそれを言われて「敷き紙の中からでたらあかんで」と。

おかげさまで、今は一番小さい衣装敷きのなかで着られるようになってます。

 

私がどれだけMさんに伝えられるかわかりませんが、今日の課題、

「着物を着る前準備は、実はその前に着物を着たときの後片付けから始まる」という意味を

よく理解してくれました。余分な知識がない分、素直に聞いてくれてありがたいです。

次回は「着装」にはいります。あらら、まず着せて見せなきゃ…ですからねぇ、

自分も着物一式、出しておかねばなりません。よかったよぉ、涼しくなってきていて…。


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6 コメント

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Unknown (陽花)
2013-09-25 22:15:17
とんぼ様のお母様は「はっちょうみとこ」や
「まるやのおおしごと」など上手に例えて
とんぼ様に色々伝授されたんですね。

返信する
Unknown (とんぼ)
2013-09-25 22:22:57
陽花様

何しろ女の子の一人っ子でしたからねぇ。
全神経集中して「総攻撃」でしたよぉぉぉ。
返信する
Unknown ()
2013-09-25 23:58:57
衣装敷きは2枚ほど持っている・・・はず
昔 お店で着せて頂く時に 持って行くよう
母に言われて買い求めました。

とんぼさんのお母様が仰る通り
着物を肩に乗せてさらっと着るのが理想

判っているものの 今や衣装敷きも使用せずに
自宅でバッサバッサと色気なしに着物を拡げ着ております

衣装敷きを拡げるスペース無し
ここでも 片付け問題が
返信する
Unknown (とんぼ)
2013-09-26 00:46:03
惠様

我が家も、着方を教えるのに?衣装敷きのスペースを
なんとか確保しようと、お片づけにもチカラはいったんですわ。
おかげさまで…です。
返信する
あるわ~。 (akkomam)
2013-09-26 09:26:30
お嫁入りの和装ダンスに
しのばせてありました。
その後の使用は何回あったでしょうか。

家族のこと、両家両親のこと、
着物の出番はお正月だけだったと
思い出しています。

今は時間もありますので、
楽しむことはできるのですが、
簡単な洋服がよくなっています。

忙しいのに着物で過ごしていた母が
不思議でした。

いろいろお勉強をなさるお嬢さん、
よい先生を身近にお持ちで
お幸せですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2013-09-26 22:27:27
akkomam様

親はできるだけのものを持たせようと、
ほんとによくしてくれました。
あのころはお正月は着物って、それだけはまだ
ありましたね。

お嬢さん、母親である友人が「あんなに着物が
好きになるなんて思わなかった」って、言ってました。
先生というほどのものではありませんが、
がんばりたいとおもっています。
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