写真は、今年使っている「日本の伝統色」カレンダー、日めくりではなく「週めくり」。
もう週末ですから、この色も今日でめくられてしまいますが「新橋色」です。
今日はこちらは一日曇り…めくるときになって、あぁ爽やかな色だなぁ…と思った次第です。
かつての日本の染色では、とりあえず「自然材料」から染めることしかなかったわけですから、
今「草木染」と言われている染めに使われる染料が、いわば日本古来の染料。
明治に入って、それはそれはもうすごい勢いで、いろーんなものが入ってきたわけですが、
その中に「化学染料」も、ありました。
正確には、江戸末期から入っていましたが、多用されるようになったのは明治になってから。
染める、と簡単に言っても、実はいろんな染め方があります。
染めるといいますか「色を布に定着させる」ですね。
これをきちんとできないと、ムラムラに染まったり、染めたのに洗うと色落ちがひどかったり…。
最初はそれを知らずに、草木染よろしく、溶いた染料の中に浸けただけで完成としたために、
あとあと色落ちや褪せがひどくて、大きな問題になった…なんてこともありました。
ともあれ、やっとあれこれ「化学染料」との付き合いがうまくいくようになって、
いままでにない色が現れたり、染の新しい方法が進むなど、いいこともたくさん始まったわけです。
新橋色は、明治中期ごろに入ってきた色と言われています。
初夏から夏向きにいい、爽やかな色ですね。洋名だと「ターコイズ・ブルー」。
わずかに緑みを感じる薄い青。実は、母が大好きな色でした。
「新橋色」という名前は、このちょっと粋な爽やか青みを、新橋の芸者さんたちが好み、
競って身に着けたところから…と言われています。
新橋、は、東京の地名で、関東の人間ならだいたい「あのへん」とわかるところ。
今のJRだと、東京から二つ目が「新橋駅」です。駅の近辺はサラリーマンのパラダイス?
ちょっと帰りに一杯…という居酒屋さんなど、食べログなどにも多数紹介されている場所ですが、
「芸者さん」、つまり「花街」というなら、実際の「新橋駅」から少し離れた銀座の端が「新橋芸者」の本拠地。
新橋のほかにもうひとつ、台東区に「柳橋」があり、実は花街としてはこちらの方が古く、新橋は「新興勢力」。
明治期は、柳橋の芸者さんの方が、格が上だったのだそうです。
明治大正期には「柳新二橋」と言われて、政財界の大物さんたちがごひいきにして…。
今ならとんでもないスクープになるでしょうけれど、華やかな世界があったわけです。
やがて大戦の影響などもあり、結局「柳橋」は衰退してしました。
まぁ今の時代、どこの花街も昔の隆盛はありませんが、それでも新橋は元気で残っています。
さて、その「新興勢力だった新橋の芸者さん」が好んで着た色」が「新橋色」なわけですが、
もし、これがはやったころ「柳橋」の方がずっと勢力強くて、両方の芸者さんが競って着ていたら、
もしかして「柳橋色」とか「(柳新)二橋色」なんて言われたかもですね。
梅雨前の、ちょっと一息…の今の時期、こんな色の着物…はムリだから、
せめてTシャツとか着て、うっとおしい梅雨に備えたいものだなぁ、なんて思いながら空を見上げました。
今年の梅雨は?、今年の夏の暑さは?…苦手な季節が近づいてきます。
それですよね。
その時代に「何」を見るか…で、イメージが変わる…。
時代が変わると「なんでこんな名前?」なんてのが
いろいろ出てくることもあるわけです。
新橋色なんて、その代表かもしれません。
かつて「新幹線ブルー」なんてありました。
元々の青と白の車体から来たようですが、
今や新幹線に「青」はほとんどありませんねぇ。
この色はとても爽やかな感じですね^^