写真は「腹合わせ帯」裏表モスリンです。
柄に一目ぼれで買いました。12月にご紹介すればよかったですね。
「討ち入り」の色紙や千社札の図柄です。裏は更紗風。
この帯については、のちほど・・。
帯そのものの歴史については、以前にも書いていますので、
今日は近代の帯?について・・。
昨日お話した「丸帯」は、もちろん今でも作られてはおりますけれど、
やはり高級品であり、礼装用が主流です。
現在よく使われている帯は「袋帯」「名古屋帯」ですね。
袋帯というのは、本来、文字通り「袋」に織られたものをいいますが、
最近では、2枚の帯を縫い合わせた「縫い袋」と呼ばれる帯が多いようです。
全通(ぜんつう、ぜんとおし)と六通(ろくつう、ろくとおし)があり
全通は、帯全体に図柄が入っています。六通は、手先やたれ、前など、
外にでる部分にだけ図柄があるものです。胴に巻くとき、
内側に入るところには、柄がありません、。手抜きのようですが、
実は柄がない分、薄手になりますし、締めやすいものです。
ただし、途中に柄がありませんから、変わり結びなど、できないものがあります。
「しゃれ袋」と呼ばれる袋帯は、礼装にも使えるものもありますが、
全通、六通、おたいこ柄もあり、オールマイティです。
ただし元々が「オシャレ着用」、つまり小紋や紬など気軽に着る着物向き。
さまざまな変わり織りや、漆を使うとか、焼箔とか、手法を凝らしたり
裂取(パッチワーク)を施すとか、或いはあっさりざっくりの紬とか、
もっぱら趣味的な感じのする帯です。
名古屋帯は、全体に柄のあるもの、「おたいこ柄」と呼ばれる、
前に来る部分と、おたいこ部分だけに柄のあるものがあります、
おたいこを作るとき、帯山になる部分の少しあとのところから、
帯が半分に折られて縫い合わされています。
結びの簡略化にもなるし、帯の布も少なくてすみますから、
大正期から爆発的にはやりまして現在に至ります。
実は名古屋帯の仕立てもいろいろありまして、
今一番よく見るのは、単純に「名古屋仕立て」、上に書いたもので、
途中から半分になり、全部縫い合わされています。
「松葉仕立て」と呼ばれるものは、半分に折ってとじるのは「て」の先だけ。
どれ位の長さ縫い合わせるかはお好みです。芯をいれ裏布にモスなどを使います。
それから「東京仕立て」、これは手の先までどこも袋にしません。
ウラもつけないので、広げると「帯芯」がそのまま見えます。
「昼夜仕立て」、これは東京仕立てのものに裏をつけたもの。
「開き名古屋」「お染仕立て」ともいいます。
「ひらきなごや」・・この言葉を聴くと思い出す、若かりし頃の「ああ、勘違い」
ある日母が隣の部屋で「名古屋帯」をだしてきて、たとう紙を開けながら、
「これは確か『開き』やったなぁ」と言ったのを聞いて、
「今夜のおかず、アジの開き?あたしサンマの開きのほうがいいなぁ」と言った、
以来「開き名古屋」という言葉を聞くと、反射的に「干物」が思い浮かぶのです。
これもトラウマってやつか・・・。えーと、「干物」じゃなかった、
「開き」のいいところは、前の帯幅が変えられるということ。
体格や身長で、普通に半分に折った幅では貧弱に見えることがありますから。
袋名古屋、と呼ばれるのは「八寸」帯。これは帯芯をいれません。
両端の「みみ」をかがるだけなので「かがり帯」とも呼ばれます。
名古屋帯は「九寸名古屋」とも呼ばれますが、これは元々九寸の帯を両端を
綴じ合わせて作るから、八寸は綴じ合わせではなくそのままだから。
つまり、九寸のほうには「縫い代」がふくまれている・・ということです。
「八寸」は、スリーシーズンOKの重宝な帯ではありますが、
格としては、名古屋帯よりワンランク下、趣味的な要素の強い帯ですので、
着物との格に気をつけてください。
腹合わせ帯、これは今あまりありません。江戸時代から明治にかけては、
帯といえばこれがほとんどだったのですが、名古屋帯などの台頭と、
現代では、着物を着るのは「特別な日」という感じになってしまい
「袋帯」のほうが重宝であるため、今ではすっかり見なくなりました。
裏と表で違う色柄のものを縫い合わせるので、一本で二度おいしい?帯です。
モノトーンのような表裏では「鯨帯」、明暗の組み合わせは「昼夜帯」と
呼ばれていました。時代劇によく出てくるのは、裏が黒繻子のもの。
今でも古着ではでてきます。実は別々のものをあわせる・・というのが、
リフォームには最適だったわけで、最初から昼夜として作られていなくても
使い込んで傷んできた帯を、いいほうだけとって二枚あわせたり、とか、
古くなった着物と、喪服の古い帯(黒繻子)を合わせたりとか・・。
この手法は、今でも使えますね。古い帯には、昨日の「引き抜き」で結ぶとき、
表側と、裏が見える部分のコントラストなど考えて、そこだけいい色合いのもの、
傷んでない綺麗な部分、などを使った「昼夜もどき」の帯もあります。
この他に、半幅とか男物の角帯、兵児帯、子供用の帯(幅が狭い)などがあります。
付け帯、作り帯とも言います。これは、最初から「付け帯」として作られたものと
帯や着物のリフォームとして作られたものがあります。
最初から付け帯として売られているものは、とかく「簡便品」というイメージで
実際「化繊モノ」が多いのですが、作り帯自体は便利なものです。
以前女優の淡路恵子さんが、どんな高級な帯も全て付け帯にしている・・
というようなことを雑誌でお話しておられました。今でもそうなのかな・・・。
あまり高級なものには、私自身はお勧めしませんが、
とりあえず、手作りなら単純なおたいこばかりでなく、角だしも結べるように、
とか、一本の帯を切らずに縫い合わせて作る付け帯、とか、いろいろあります。
また一反の反物からは羽織と付け帯が作れますから、おソロもいいものです。
帯のリフォーム、或いは帯以外の素材で、帯の分だけの布量がないときなど、
作ってみるのも楽しいものです。旅行のときなどにも便利ですね。
着物縫うよりははるかにカンタンですから、作ってみたらいかがでしょうか。
意外に素材として使えるのが「ふろしき」と「カーテン地」です。
ふろしきは、普段用なら「レーヨンちりめん」でも十分ですから、
市販の半幅にはないような、ちりめんの染め柄の「矢の字」の付け帯なんか
けっこう楽しめると思います。
おしまいは写真の帯の説明です。
上にも書きましたが「腹合わせ帯」、素材は裏表ともに「モスリン」です。
非常に地味な色柄ですので、どちらも男性の襦袢ではないかと思います。
モスですので、しつかり「虫食い」があります。コンナ感じ・・。
幅は30センチありません。かといって色柄から言っても
「子供の帯」とは思えませんので、残った布でつかえるところだけ・・
だったのではないでしょうか。表のど真ん中にはぎ目があります。
実はこの帯、芯がはいっていません。
紬などなら、芯がなくても少しははシャキッとしますが、
なんせ「モスリン」です。帯というより「ショール」みたいです。
どうやって締めたのかと首を傾げますが、おそらく年配の人が、
半幅帯、あるいは兵児帯のようにくしゃっと結んでいたのかもしれません。
虫食いがひどいので、私も角帯の幅くらいに折って、
兵児帯のようにちょうちょ結びでもしてみようかと思っています。
(使う気でいる・・・)
追記でーす!
いつもコメントを下さる「うまこ様」が、ご自身のブログに載せておられる
「引き抜き帯び」の結びかたあれこれ、すごーいお知恵を授けてくださいました。
そーなんです、これなんです。
お許しいただきましたので、アドレス掲載致します。
うまこ様、ありがとうございました。
あっ、すみません、私リンク苦手なんです。コピペしてください!
http://umacco.at.infoseek.co.jp/obimusubi/hikinuki.htm
http://umacco.at.infoseek.co.jp/obimusubi/tunodasi.htm
http://umacco.at.infoseek.co.jp/obimusubi/nagoyahikinuki1.htm
http://umacco.at.infoseek.co.jp/obimusubi/nagoyahikinuki2.htm
http://umacco.at.infoseek.co.jp/obimusubi/hikinukitunodasi1.htm
http://umacco3.exblog.jp/3914720/
イラストを見て、その疑問がとけました
長年、気になっておりました
今度、大きな顔をして、誰かに説明しますわ
でも今製造の丸帯はそうではありません
今はそのような結び方はだれもご存知ないのもねそれにしても今更ながらトンボさんの知識の深さに驚愕です
その知識の源は?
私も商売がらもっと学ばなければと反省しきりです。
開き:私もいつも開き仕立てですが、ぶらっと入った某呉服屋さんで「開きにしてるんですが」といったところ、「恐れ入りますが、そういったものはお取扱いございません」といわれたことがあります。そんなんでええんかいな?と首フリフリでしたが、考えてみれば開き仕立てなんて少数派だからなあと半ばあきらめ・・・。
私の場合は、単なる「好奇心」です。
おまけに母がうるさい人でしたから、
ちょっと反発心もあったりして、
ムキになって調べたりしてたわけで・・。
ガンコおふくろに感謝・・ってとこでしょうか。
百福様
これはモスですから、それほどでも・・・と
思います。木綿の和更紗の大正モノなんかだと
「も・もめんなのにぃ~」と、思います。
今、ちょっとほしいなぁ・・と思っているのが
これなんですが、まだ値があがりそうで・・。
1メートルしかないんですけどねぇ。
http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h40144873
以前年下の友人が「松葉仕立て」を持ち込んできて
「これヘンなのよ、手抜きよねぜったい、
途中までしか縫ってない!」と憤慨するのを
説明してなだめたことがあります。
お姑さんがくれたらしいのですが、
「できそこないをくれた」と思ったわけで・・。
ため息ですねぇ。ちゃんと折りあともついてたのに。
(お染め仕立て)にすればいいのですが、それだと、もう少し加工賃も・・・
それに9寸を袋かな?と見えるように(比翼仕立て)と(トンネル仕立て=お太鼓の部分のみ表、裏合わせないで、それぞれ裏地をつけてトンネルのように仕立てます)等も有りますよ。
トンネルですか、なるほど。
沢山持てるなら、ひとつずつ作ってみたいものです。
自分でやってみよっ!
ところで、本日のコメント、
2回とも「てちゃん」になってますー。
モスリンていうとすぐ長襦袢なんて
思ってしまいますが、モスリンで
帯とは想像もしなかったです。
モスリンの生地はほんとに気をつけて
いないとすぐに虫に穴あけられちゃいますね。
まるで「もよう」のようにあいてます。
また、集中してあけるんですよね。
モスリンは、戦時中とか、それ以前には
羽織などもあります。ウールとはいえ、薄いですし、
やっぱり「モノ」がない頃の工夫でしょうね。
モスの帯は、オークションには時々出ます。
虫食いのないものなんてない!です。
9寸のトンネル、はじめて伺いました。興味津々です。比翼ってどの位の幅にするものなのでしょうか?教えてくださいませ~。
帯については、てっちゃん様がご専門ですので・・。
和更紗については、マニアいますねぇ。パッチワークに使われるようです。モスの襦袢は、時々でますが、ありきたりの柄が多いのと、なかなか状態のいいのがありません。そんなこんなで、とんぼは毎日「モノ探し」しております。