本日、トップ写真なしですみません。
伸縮する素材がなかった時代、洋装は元々が人の体の曲線に合わせるように、
裁断と縫製をしていましたから、ぴったり合わせることはできたし、
例えばスカートのように膨らませたいものは、ギャザーをとれば、腰はぴったり下は広がる…とできました。
また下着などは、貴族階級ではコルセットが流行り、クジラの骨や金属などを芯にして、
編み上げ靴のように紐を掛けて締め上げる…というたいへん不健康なものがありました。
今は苦労なく、寄せてあげるの、ヒップアップのといろいろあります。これも「伸縮素材のおかげ」ですね。
和装は、元々が直線のモノを直線で縫い合わせるもの、
でも素材は伸縮しないけれど、作り方で絞る広げる…は、やっていました。
つまり「巾着の口」のようなものです。
たとえば「直垂(ひたたれ)」という衣装は、広袖(袖口がフルオープンのもの)の手首側と、
と袴の下に「紐」が通してあります。これは「くくり紐」と呼ばれるもので、
例えば急に戦わなければならなくなった…なんてときは、この紐をブラインドよろしく
ぴーっと引き絞ると、袖口がたたまれつつ絞れるわけです。
長く出た紐で袖口が緩まないように、ぐるぐると巻いて押さえて結ぶ…袴の下も同じです。
この紐は、後年戦などで着ることもなくなり、「籠括(こめくくり)」と言われる、表に出ないものに変化し、
やがて形式的になって、袖の一番下に房のようなもの(紐のはじっこだよ、の意味)だけ付けました。
これは「露」と呼ばれます。
そんなわけで、和装においては、スカートのように細かいギャザーを固定して使うことはなく、
あっても大きなタック、袴などですね、それ以外は「紐を引き絞ってギャザーを寄せる」
それを伸ばして布を広げる…だったわけです。
ただ、これはいちいちそれをせねばなりませんから、衣服で日常的に絞ったり広げたりするのは面倒です。
なので、先日の「股引き」のように、大きく作って包み込んで重ね、上を紐で縛る…という形に
なったわけですね。
では、伸縮するものは何もなかったかというと、ちょっとした工夫はありました。
伸縮…というと語弊がありますが、多少なりとも伸ばせる…です。
「バイアス」の利点を使ったんですね。
バイアステープは、縁取りなどに使われるものですが、生地の幅に対して45度でカットしてあります。
布というのは経糸と緯糸で織るわけですが、平織の場合、経糸は縦にまっすぐ(当たり前ですが)、
緯糸はそれに対して90度でまっすぐですから、しっかり目が詰んだ織物なら、
地の目に添って縦に引っ張っても横に引っ張っても伸びません。
でもななめ45度に引っ張ると伸びますね。これを利用した、つまりバイアスを利用したのが「捻袋」というもの。
昔の本でよく使われているのが「帯枕入れ」です。
これは以前「記事」にしていますので、そのまま写真を再出します。記事の方はこちらです。
細いものも太いものもできます。
布を細長く切ります。切るときは「バイアス」ではなく、普通にまっすぐです。
太いものが作りたいときは何本か並べます。そして45度でネジネジグルグルと巻いていくわけです。
これは見本に紙でやっています。
細くした生地(ここでは紙)を、45度の角度で巻くと…黒い○印をつけて…
広げると点はこうなります。ネジネジの結果ですね。
色を合わせてこんな風にすると、太くなりますね。
この方法で、例えばガーゼのような薄いものや、使い込んだ古い帯揚げ(綸子など平らなものがいいです)などで、
これを作ると「帯枕を入れる袋状の紐」ができます。
縫い合わせが「バイアス」なので、これが「ほどよく伸びる」のですね。
これが「捩子袋」、これに帯枕を入れたり、旅するときに大事なものを入れて、
腰の後ろ、帯の結び目の上にのせたり、今でいうワンショルダーバッグのように、斜めに結んで使ったわけです。
バイアスというのは、ゴムじゃないけど伸び縮みする…という便利なものです。
日本人は、着物という「まっすぐのものをまっすぐ縫い合わせる」ものを衣服として着てきたけれど、
こういう知恵はちやんと培われていた、ということですね。
作ってみようかなという気持ちになって
きました。
ストッキングを代用される方もいますけれど、
ちょっと締まりすぎる気がしています。
これはガーゼで作るといいですよ。
縫いにくいけど…。