ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

バイアスは和装でも使える「テ」です。

2014-11-07 20:02:17 | 着物・古布

 

本日、トップ写真なしですみません。

 

伸縮する素材がなかった時代、洋装は元々が人の体の曲線に合わせるように、

裁断と縫製をしていましたから、ぴったり合わせることはできたし、

例えばスカートのように膨らませたいものは、ギャザーをとれば、腰はぴったり下は広がる…とできました。

また下着などは、貴族階級ではコルセットが流行り、クジラの骨や金属などを芯にして、

編み上げ靴のように紐を掛けて締め上げる…というたいへん不健康なものがありました。

今は苦労なく、寄せてあげるの、ヒップアップのといろいろあります。これも「伸縮素材のおかげ」ですね。

 

和装は、元々が直線のモノを直線で縫い合わせるもの、

でも素材は伸縮しないけれど、作り方で絞る広げる…は、やっていました。

つまり「巾着の口」のようなものです。

たとえば「直垂(ひたたれ)」という衣装は、広袖(袖口がフルオープンのもの)の手首側と、

と袴の下に「紐」が通してあります。これは「くくり紐」と呼ばれるもので、

例えば急に戦わなければならなくなった…なんてときは、この紐をブラインドよろしく

ぴーっと引き絞ると、袖口がたたまれつつ絞れるわけです。

長く出た紐で袖口が緩まないように、ぐるぐると巻いて押さえて結ぶ…袴の下も同じです。

この紐は、後年戦などで着ることもなくなり、「籠括(こめくくり)」と言われる、表に出ないものに変化し、

やがて形式的になって、袖の一番下に房のようなもの(紐のはじっこだよ、の意味)だけ付けました。

これは「露」と呼ばれます。

 

そんなわけで、和装においては、スカートのように細かいギャザーを固定して使うことはなく、

あっても大きなタック、袴などですね、それ以外は「紐を引き絞ってギャザーを寄せる」

それを伸ばして布を広げる…だったわけです。

ただ、これはいちいちそれをせねばなりませんから、衣服で日常的に絞ったり広げたりするのは面倒です。

なので、先日の「股引き」のように、大きく作って包み込んで重ね、上を紐で縛る…という形に

なったわけですね。

 

では、伸縮するものは何もなかったかというと、ちょっとした工夫はありました。

伸縮…というと語弊がありますが、多少なりとも伸ばせる…です。

「バイアス」の利点を使ったんですね。

バイアステープは、縁取りなどに使われるものですが、生地の幅に対して45度でカットしてあります。

布というのは経糸と緯糸で織るわけですが、平織の場合、経糸は縦にまっすぐ(当たり前ですが)、

緯糸はそれに対して90度でまっすぐですから、しっかり目が詰んだ織物なら、

地の目に添って縦に引っ張っても横に引っ張っても伸びません。

でもななめ45度に引っ張ると伸びますね。これを利用した、つまりバイアスを利用したのが「捻袋」というもの。

昔の本でよく使われているのが「帯枕入れ」です。

これは以前「記事」にしていますので、そのまま写真を再出します。記事の方はこちらです。

 

細いものも太いものもできます。

布を細長く切ります。切るときは「バイアス」ではなく、普通にまっすぐです。

太いものが作りたいときは何本か並べます。そして45度でネジネジグルグルと巻いていくわけです。

これは見本に紙でやっています。 

細くした生地(ここでは紙)を、45度の角度で巻くと…黒い○印をつけて…

 

              

 

広げると点はこうなります。ネジネジの結果ですね。

 

      

 

色を合わせてこんな風にすると、太くなりますね。

 

      

 

この方法で、例えばガーゼのような薄いものや、使い込んだ古い帯揚げ(綸子など平らなものがいいです)などで、

これを作ると「帯枕を入れる袋状の紐」ができます。

縫い合わせが「バイアス」なので、これが「ほどよく伸びる」のですね。

これが「捩子袋」、これに帯枕を入れたり、旅するときに大事なものを入れて、

腰の後ろ、帯の結び目の上にのせたり、今でいうワンショルダーバッグのように、斜めに結んで使ったわけです。

 

バイアスというのは、ゴムじゃないけど伸び縮みする…という便利なものです。

日本人は、着物という「まっすぐのものをまっすぐ縫い合わせる」ものを衣服として着てきたけれど、

こういう知恵はちやんと培われていた、ということですね。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ネクタイ…この手ごわい相手? | トップ | 伸縮する素材 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2014-11-08 09:27:33
太って足りぐるしくなった帯枕の袋を
作ってみようかなという気持ちになって
きました。
返信する
Unknown (とんぼ)
2014-11-08 10:28:50
陽花様

ストッキングを代用される方もいますけれど、
ちょっと締まりすぎる気がしています。
これはガーゼで作るといいですよ。
縫いにくいけど…。
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事