写真は、かなり前に使った写真の再出。まだ着物のカタチが確立していないころの衣装ですね。
先日「おぉっ」と気づいてあわてて座り込んでみたのが、あの世界のクロサワの黒澤監督のご長女、
黒澤和子さんのドキュメンタリーでした。彼女は「映画用衣装」を数多く手がけています。
その時代にあった衣装を作ることも時代考証のひとつです。
今回の番組は、来年の大河ドラマ「麒麟が来る」の、衣装のお話しが中心でした。
時代考証といっても、実はそれをどこまで正確に使うかは、映画にもよります。
たとえば、昔の東映全盛時代の時代劇、あのころの衣装は「ほぼウソ」が当たり前にありました。
それは映画が大娯楽で、映されるものは夢の世界だったことも多かったからです。
有名なエピソードは市川歌右衛門主演の「旗本退屈男」。
お生まれもお育ちもよい設定…で、毎度着て出てくるのが豪華な着物の着流し。
エピソードのひとつに、彼が建物に入ったりして角ひとつ曲がると違う着物で出てくる…
これ、ウソかホントかわかりません。でも、それを指摘したら、
歌右衛門氏は「お客様は、きれいな衣装もみたくて映画を楽しまれている。
だからたくさん見せたほうがいいのだ」と言ったとか言わなかったとか…。
まぁ実際、舞台となっている江戸時代で、いくら「えぇとこの御曹司」でも、あの着物はありません。
そんなウソはみんな知っていての「楽しいウソ」だったわけです。
映画やお芝居を作る裏方さんには、黒澤和子さんのように「衣装」を担当する専門家がいるわけですが、
時代衣装だからと言って、古い着物を探してきて作り直す…という作業ばかりではありません。
今の素材で古く見せる…というのも、時代衣装係りの腕の見せどころ。
最近の映画やドラマは、なにかにつけ「リアル」を追求しますから、たいへんだと思います。
古びたり、傷んでいる感じを作る技術は、着るものに限らず「汚し」といいます。
壁のシミとか、缶のサビなどもうまく作るんですね。
着物の場合は、軽石でこするとか、漂白剤を使うとか、ロウをたらしてこするとか、
実際にドロや砂の中でもむとか…さまざまな技法があるそうです。
テレビがハイビジョンだの4Kになって、毛穴まで見える…なんてことになってきましたから、
汚しもたいへんですよね。
私が、あ、そういうこともするんだ、と思ったのは、それを着る人のイメージを想像して、
柄まで染めたりするということ。そのあたりは別のプロがいるのだと思っていたのですが、
黒澤さんは、息子さんと3人で、そのあたりのことからやっていらっしゃいました。
「麒麟が来る」は、明智光秀の物語だそうですが、すみません、あまり見たいと思っていなくて…。
でも衣装見ていたら、衣装だけ見たい…なんちゃって。
メイキングのとき、こちらの衣装を(すみません、こちらお借りした画像です)、役のイメージから
柄のはんこを作り、木版そのままでもようをつけていました。そこまでするんだ…とびっくりしました。
衣装のカタチとしては、当然時代考証で光秀さんは「素襖」、烏帽子は「侍烏帽子」。
いろはハッデェですが、これが「麒麟が来る」の光秀のイメージ…ということなんですね。
こちらもお借り画像、鮮やかな水色ですね。
こういうドラマでは、当時のその人の立場とかで「創作」もしますから、
こんなの当時はない…みたいなのも出てきたりします。それがまた楽しいんですね。
実はこういう「冒険」は、普通に着物を着るときだって、使える「テ」ではあるのです。
ただ、だからといって「なんでもいい、なんでもあり」では、ただのコスプレになってしまう…。
そこがどうも、うまくいかない面が見られて、ちとチリチリとしてしまう私です。
さてさて、麒麟が来る…は、たぶんゆっくり見る間はないと思いますが、
「麒麟」は架空の霊獣、麒は雄、麟は雌、だそうです。
麒麟は、その地の王となる器量と運命を持ったものの前に現れるといいます。
麒麟が「ヒトを選ぶ」んですね。光秀は選ばれそうで選ばれなかった?
物語はわかりませんが、視聴率など気にせず、オリンピックに負けず?放送してください。
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