このところ日本の登山人口が増えてと言われている。
なんとなく雰囲気で考えるのではなく、きちんとデータでみるとどうだろうか。
登山人口について、若干、古いデータではあるが、日本生産性本部の「レジャー白書2013年」によると、2012年は860万人で、前年比+50万人になったとしている。東日本大震災後にレジャー人口が全体的に減った影響もあり、ピークだった2009年(1,230万人)には及ばないが、回復の兆しが出てきたようだ。
また、登山人口のうち60歳以上の割合は4割を超しているようである。余暇時間がとれ、意欲も体力もあるという中高年の人たちは、新たに山登りやトレッキングなどのアウトドアレジャーに興味を持ち始める人も多く、登山人口も更に増える可能性がある。
さて、では初めて登山をする人はどうすればいいのか。「どんな準備が必要なのか。」「どこに行ったらいいのか。」「誰と行くか。連れて行ってくれる人は、」など、どうしていいか皆目わからないという人だっている。本を読んで得られる知識ばかりでは、行動につながらない。
初めての人が知りたがっていることは、山田淳さんによると「情報」「道具」「きっかけ」であり、これが整えば、登山愛好家になることができるのである。
しかし、山業界は、横のつながりが薄い。旅行会社、登山ガイド、山小屋、メーカー、小売、それぞれが〝一国”を成し、それぞれの顧客が違い、目的も違い、情報共有がされていない上に顧客サービスの工夫や競争原理が働いていない。
例えば、個人顧客として、それぞれにコンタクトした場合、ここそれぞれの目的に沿った動きをしている。そのレスポンスをみると、丁寧で分かりやすい説明をしてくれるところ(人)もあれば、ぶっきらぼ うで「お前はそんなに偉いのか?」と思うような横さまとも思えるところもある。このように、具体的に行動をとった場合、なんとなく違和感を感じたりするよ うな場面を経験した人は少なくはないだろう。
こんなことが、これから登山を始めようとする人には、"障壁”となっているといっても過言ではないだろう。これでは、真の顧客をみていないで、それぞれが自己都合で利益を追求する旧態業界といわれ兼ねない。
では、どうすればいいのだろうか。
登山をしたい人=顧客が求めるものは何か?お客様が納得していただけるのにはどうするか?
登山を始めたいと思っている人が知りたいことを、もう一度、整理してみよう。
① 装備:登山にどういった装備が必要か。
② 情報:行き方、宿泊、山の特長や留意事項など
③ きっかけ:行こうと思っていただく工夫。
⇒ この3つの視点で、安全、安価で、ニーズに合ったものをお客様に提供することがポイントになってきそうである。山業界に関わる人たちには、全体を理解しながら、それぞれが連携し、自身のポジションで顧客との距離を近づける工夫が求められている。
特に中高年の方の安全登山については、そのコーディネータ、緩衝材役としての旅行業の役割は小さくない。
屋久島・縄文杉
八ヶ岳・赤岳山頂より