捕食を忘れた青サギ
緑地公園内のフエンスに囲まれた池の周りを歩いていると、青サギが飛来し
てきた。翼開長は2m近くあり優雅に舞い降りた。
近くで見ると目の上から後頭部にかけて、黒い冠羽が垂れ下がっている。
くちばしも顔も細い脚もみんな黄色である。体長は90センチくらいはあり
そうだ。青サギは池の獲物を狙っているのではない。青サギの目線を追っ
ていくと釣り人を凝視している。暫らくすると青サギは釣り人に近寄った。
青サギは釣り人の赤い日傘の中に入り、釣り上げる魚をおねだりしょうと仲良く
並んだ。あたりがなくて、なかなか釣れないが青サギは辛抱強く待ちつ づけている。
「今日は釣れないの」青サギが話しかけると「うん、釣れないな」と釣り人も ひんぱんに
餌を取り替えながらなんとか釣り上げようとしている。青サギも待ちくたびれたのか、き
ょろきょろと細い首を伸ばして辺りを見回し始めた。
青サギの気持が伝わったのか、隣の場所に座っている白い日傘の男にあたりが来た。
ばちゃばちゃと水音をたてながらヘラブナを引き寄せている。青サギは大きな翼をバタバタ
させながら隣の男の所へ走り寄った。男が魚を池に放そうとすると青サギは悲しそうにさらに
翼をばたつかせた。赤い日傘の釣り人がその魚をサギに与えてくれないかと頼み込むと、男は
あっさりOKしてひっかけ棒を釣り人に渡した。
釣り人は 男から引っ掛け棒を受け取ると釣り針をはずして、草叢の上に
魚を投げ出した。意外に大きい、ヘラブナの2、3年ものくらいか。
青サギはなんとか飲み込もうとするが、大きすぎてもてあましている。
結局、青サギはその場では飲み込もうとはせずに、くちばしにくわえた
まま白と黒に鮮やかにコンントラストした翼をいっぱいに広げて、大空
に飛翔していった。赤い日傘の釣り人は満足そうに見送っていた。