弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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台湾訪問記その5・死刑制度廃止検討委員会視察 2019.9.2.-9.4 -台湾イノセンスプロジェクト

2019-09-16 09:04:44 | 日記・エッセイ・コラム

ランチを終えたら視察を再開。

まずは、台湾のイノセンスプロジェクトを訪問です。

台湾イノセンスプロジェクト(TIP)、現地で「台湾冤獄平反協会」と書きます。

漢字の国はいいですね。文字で書かれていると、おおむね意味がわかります。

Tシャツの「自由人」がとてもいい感じです。

台湾での冤罪事件の状況、TIPの活動、死刑冤罪事件の救済活動について話を伺いました。

TIPは多くの冤罪事件で無罪判決を獲得されています。

下のスライドは、再審で無罪となった事件を、台湾の地図の上に記したものです。

日本でも、いくつかの再審無罪判決は出ていますが、まだまだ再審は開かずの扉です。

台湾のほうが、再審が積極的に活用されている印象です。

TIPのような市民団体の活動や、あるいは、民主化・政権交代といった政治情勢も影響しているのかもしれません。

台湾では、近年、再審無罪判決がいくつも出ているのですが、冤罪原因に関する基本的研究といったものはまだなされていないということでした。

拷問による取り調べはあまり再審の理由にはなっておらず、やはり、科学的技術の進歩によって無実が証明されるケースが多いようです。

再審で無罪が明らかになっても、刑事補償がされるだけで、捜査機関や裁判官は何も責任追及されることがないというのは日本と同じです。

日本でも、台湾でも、冤罪が明らかになった時には、独立した立場の調査委員会で冤罪原因を究明し、責任の所在を明らかにしていくことが必要です。 

 

今回は、死刑制度廃止の視察ということで、死刑判決が確定している事件の冤罪救済について話を聞きました。

死刑は、いつ、誰が執行されてしまうのかわからない。

だから、まず、執行させないことが必要。

手続きとしては、再審、非常上訴、釋憲(憲法裁判所の大法官に憲法解釈を求める手続き)、監察院への申立てというのがあるそうです。

再審というのは、日本の再審と同じで、再審を請求する権利があります。

ただ、死刑確定者が2度、3度と再審請求していると執行までの時間稼ぎと思われて、2週間程度で却下されてしまうとのこと。

非常上訴も、よく使われる制度だが、検事総長の権限なので、あくまでも職権発動を促すことしかできない。

釋憲というのは、判断が出るまではすごく時間がかかるので、執行を遅らせて命を守るためにはいい制度だということでした。

 

また、日本にはない制度で「監察院」というのが台湾にはあります。

日本は三権分立ですが、台湾は五権分立だそうです。

日本は、国会・内閣・裁判所の三権ですね。

台湾は、立法院(国会)・行政院(総統以下政府)・裁判所(通常裁判所と憲法裁判所があります。)に加えて、監察院・考試院という二権があるということです。

監察院は、どうやら日本の会計検査院のような感じですが、会計監査だけでなく、行政・立法・司法について幅広い監査権限があるようです。

考試院は、日本の人事院の権限をさらに大きくしたようなところで、公務員の採用試験、弁護士試験、裁判官・検察官試験なども所管しています。

 

さて、冤罪救済に戻ります。

この監察院、近時では政治的影響力のない閑職に追いやられているようなのですが、冤罪事件では一定の役割を果たしているようです。

監察院に冤罪であるとの申立てがなされると、監察院でも調査をするようです。

そして、冤罪の可能性があるという結論が出ると、それが公表される。

そうなると、検察官から無罪を求めて再審請求がなされることがあり、実際、そういう形で無罪になったケースも多いようです。

また、死刑事件については、監察院がすべての死刑事件で調査報告書を出しているということでした。

死刑が確定していた事件で、これまでに再審が開始なった7件の事件でも、すべて監察院の調査が行われているということです。

「監察院」という制度は日本の刑事司法には全く出てこないシステムで、現地に行って初めて知りました。

今回の視察先には含めていなかったのですが、次の機会にはぜひ「監察院」も訪問してみたいものです。

(「監察院」は、私が宿泊していたホテルのすぐ近くにあり、実は台湾到着後何度も前を通り過ぎていました。)

 

TIJ訪問を終えて記念撮影です。

みんなが左手の平を横に出していますが、これがTIJで写真を撮るときのお決まりのポーズだそうです。

実は、この先の視察でも、こういうお決まりのポーズが各訪問先でいくつか出てきました。

記念撮影時のお決まりポーズを作るというのが台湾ではスタンダートなのでしょうか?

 

 


台湾訪問記その4・死刑制度廃止検討委員会視察 2019.9.2.-9.4 -台湾大学ランチ

2019-09-15 21:35:57 | 日記・エッセイ・コラム

午前の視察が終了し、午後の視察までランチタイム

しばし、ブレイクです。

視察先の隣にある台湾大学の学食でランチをしました。

 

日本統治時代?と思えるような古めかしい建物があります。

 

立派な塔屋のある図書館、さすが台湾の東大です。

 

タイ料理が人気なようです。

 

学食だけあって、ボリュームも満点!

しかも、値段も300円くらいと安い!!

まあまあ美味しかったです。

 

さあ、エネルギー充電して、午後の視察へGo!!

 

 

 

 

 

 

 

 


台湾訪問記その3・死刑制度廃止検討委員会視察 2019.9.2.-9.4 -立法院訪問

2019-09-15 20:05:19 | 日記・エッセイ・コラム

さあ、いよいよ、真面目な視察のスタートです。

最初の訪問先は、台湾の立法院(日本の国会)です。

弁護士でもあり、人権問題に取り組んでいる尤美女立法委員(国会議員)を訪問しました。

議員会館です。

 

(1)女性進出は台湾の方がずっと進んでいる!

死刑問題に入る前に、台湾の女性進出について教えてもらいました。

現在の台湾総統は蔡英文氏です。そう、女性。

2012年に女性として初の副総統になり、2016年からは総統です。

アメリカでもヒラリー・クリントンは初の女性大統領にはなれず、日本では女性総理はいつのことやら、

台湾では国会議員も女性が38%を占めているということ、日本よりもずいぶんと進んでいます。

(ちなみに我々視察団の女性比率も約38%でした。)

尤美女議員も、弁護士としては、台北弁護士会で初の女性理事長となり、以後、台北弁護士会では男性と女性が交替で理事長を務めるようになったそうです。

そして、台湾では同性婚を認める法律が成立しました。

そこでも、尤美女議員が尽力されたそうです。

尤美女議員です!

 

 

(2)死刑廃止と世論

「台湾は、国際的には公式な国家として認められておらず、国連にも加盟できない。

それゆえに、国連の人権規約を国内にも率先して取り入れ、海外の学者を招聘して学んでいる。

その結果、台湾政府としては死刑廃止の方針にある。

他方で、台湾世論は死刑存置が多数で、凶悪事件が起これば死刑を支持する声は強まるし、飲酒運転や児童虐待による悲惨な事件が起こると重罰化、死刑導入という意見も出てくる。

そこで、死刑廃止という基本的な方針ながらも、社会的な対立を生まないようにステップバイステップで死刑廃止の方向に向かっている。」

ということだそうです。

政治においても、総統は直接選挙で選ばれ、国会議員選挙も2年ごとに実施されるので、どうしても世論は気にしなければならないとのこと。

死刑廃止を言っていると、凶悪事件が起こったときに、「そんな甘いことを言っているからこんな事件が起こったんだ」とプレッシャーがかかり、

尤美女議員のところにも夜中に、一般市民から死刑廃止を非難する電話がかかってきたそうです。

 

 

(3)死刑廃止に向けて

台湾では、そんな世論に配慮しつつ、段階的に死刑廃止に向けて動いているということです。

その一つとして、「私たちと悪の距離」というテレビドラマが作られ、被告人と家族、被害者と家族、マスコミの問題が取り上げられ、死刑の問題を考えるきっかけになっているということです。

こんなドラマのようです。「我們與悪的距離」

また、代替刑についても議論されていて、人権規約違反にならないように終身刑を導入するにはどうすればいいか、終身刑になった後も3~5年に見直す制度であれば人権規約違反にならないのではないかといった見当も進めているということです。

被害者支援についても、現状はお金を渡しているだけでしかない。被害者遺族は「なぜ、こんな事件が起きたのか?」を知ることを一番に望んでいる。

そのためには、刑事司法手続への被害者参加や修復的司法を考えるべきであるという議論がされているということでした。

最後に、10年後、台湾には死刑はあるだろうか?と尋ねたところ、

「難しい質問だが、同性婚も立法化できた、死刑も必ず廃止できると信じている。」と言ってくださいました。

 

 

さあ、ここから視察がスタートです。

さらに、視察は続きます。

 

 

 

 

 

 


台湾訪問記その2・死刑制度廃止検討委員会視察 2019.9.2.-9.4 -まずはこれ

2019-09-13 13:57:37 | 日記・エッセイ・コラム

台北に到着

まずは昼食、台湾の定番、油條、大根餅、肉まんです。

 

油條は豆漿(豆乳)に浸して食べます。

 

そして、視察が始まるまでに、あちこち観光名所を巡ります。

まずは、ホテル近くの中正紀念堂です。蒋介石を顕彰する建物です。

 

蒋介石さん(もちろん人形)です。

 

そして、故宮博物院へ

 

一番人気の白菜です。

色がついてしまったB級の翡翠(玉)を見て、この色合いは白菜にぴったりと思いついて作られたそう。

 

白菜の上には、イナゴとキリギリスが鎮座しています。

 

象牙を削り出して作られたそう。

真ん中の円球部分は17層以上あるらしいですが、いったいどうやって作ったのか?

17層以上ということは、まだ誰も正確には何層なのかは知らないってことですよね。

 

こちらは二層になった壺です。

外層の窓部分から、金魚が見えています。

上部を持ってくるくる回すと、内層に書かれた金魚が動いていくそうです。

 

そして、いよいよ視察団の結団式。

台北で一番有名な台湾料理店「欣葉」に集合です。

 

名物料理の蟹おこわです。おこわの上に、わたりカニが乗っています。

台湾ビールも飲んで、

さあ、いよいよ、明日から視察です。

つづく。

 

 

 


台湾訪問記その1・死刑制度廃止検討委員会視察 2019.9.2-9.4 -出発

2019-09-13 13:38:02 | 日記・エッセイ・コラム

9月2日から4日までの3日間、京都弁護士会 死刑制度廃止検討委員会で、台湾(台北)に死刑制度廃止の視察に行ってきました。

なぜ、死刑制度廃止の視察で台湾なのか?

台湾は、日本と同じく、今でも死刑制度が残っています。

執行数は日本よりもずっと少なく、執行のない年が4年続いた後、年4~6名が執行されていましたが、この3年間では2人しか執行されていません。

死刑はどんどん縮小傾向にはあるのですが、今もなお、死刑制度が生きている国です。

そんな台湾で、死刑制度がどのようにとらえられているのか、死刑廃止に向けてどのような動きがあるのかを調査し、日本での死刑制度廃止を考える参考にしようという目的です。

視察先は、立法院(台湾の国会)、台湾イノセンスプロジェクト、台北弁護士会、台湾死刑廃止連盟、法務部(台湾の法務省)などです。

国会議員、弁護士、裁判官、政治学者、法務副大臣、検察官、えん罪救済・死刑廃止に取り組む市民団体の方などからお話を伺います。

 

ということで、まずは、台湾へ出発です。

連絡橋を渡って関空へ!

 

台北へは中華航空です。

 

約3時間のフライト、機内で「翔んで埼玉」を視聴。

「ファミリー・マート」が日本だけでなく、海外にもあちこちにあるのは、日本、否、世界埼玉化計画の一環だったのだと、真実に驚きを禁じ得ませんでした。

恐ろしすぎる...

かろうじて映画一本を見終えることが出来る時間で到着です。

そして、桃園国際空港に到着です。

はじめての台湾、視察はもちろんですが、台湾訪問も楽しみです。

 

ということで、次回に続きます。