生かされて活かされて 痛さん&さなさんのブログ

おのれを忘れて他を利する。
穏かで慈悲のこころに満ちた生活を送りたいものですね。
日々のできごとをお伝えします。

再び浜松へ

2015年04月03日 | ドライヴ
1998.12.28~29
 午前5時。前日に仕掛けておいた目覚ましのブザーに驚いてモゾモゾと起きだし、ザッとシャワーを浴びた。今年は記録的に年間平均気温が高かったそうだが、さすがに12月も終わりの朝は冷え込んでいる。
「なぜそんなに早起きしたのか」って?
そう、今日はワイフと二人、1泊2日の「格安バスツアー」で浜松へ出かける朝なのだ。

 年末のバスツアーは今年で4回目。最初の年は今回とほとんど同じルートの浜松ツアーで、2日目に焼津の魚センターに寄っての正月用魚介類の買出しだった。その次の年の年末は仙台~松島~塩釜漁港へのバスツアー、そして去年は木曽路へバスツアーと、この時期ならではのお一人様1万円を切る料金での「格安バスツアー」なのだ。

 定刻の午前8時。我々ツアー客1行46名を乗せた近畿日本ツーリストの観光バスはJR横浜駅西口の天理ビル前を発車。次の乗車場所であるJR町田駅前を目指して走り始めた。今回のツアーの乗車場所は2ヶ所。横浜と町田になっている。

 バスは首都高の横浜西口から首都高速狩場線、南保土ヶ谷バイパスと経由して国道16号線へ入り、東名入り口を右折して町田街道へと入って行く。40分ほどでJR町田駅前に到着。「出発時刻は9時20分」との案内を確かめて、私とワイフは目の前にあった喫茶店「ルノアール」へ入りモーニングをオーダーした。

 やがて予定の出発時刻となり、バスは一路最初の目的地「可睡斎(かすいさい)」を目指して出発した。東名横浜町田ICから東名高速へ入り、ひたすら袋井ICを目指す。最近は「帰省ラッシュ」と言う言葉は死語になりつつあるのか、数年前まで帰省の車で大渋滞していた道路はガラガラ。適度な振動と、ウラウラと差し込む日の光に睡魔が襲う。それを破るかのように良くしゃべるガイド。でも、ついに眠気が勝って意識が遠のく。と、突然のガタガタと響くワダチの振動で「フッ」と我に返る。何度かそんなことを繰り返して、愛鷹PAでトイレ休憩となった。

 約15分の休憩の後、再び走り出したバスは東名を快調に飛ばし、予定通り袋井ICで一般道に降りた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

萬松山可睡斎(ばんしょうざんかすいさい)
 遠州三山の一つに数えられる可睡斎(かすいさい)とは寺名で、山号を萬松山(ばんしょうざん)といい、応永8年(1401年)恕仲天閣禅師(じょちゅうてんぎんぜんし)により開山。曹洞宗屈指の古刹である。
 11代住職仙麟等膳和尚は、幼い家康とその父を戦乱から救い出した事があり、その後、浜松城主となった家康公は旧恩を感謝し、和尚を浜松城へと招いた。そして夜っぴいての昔話のその席上で、コックリと居眠りを始めた和尚を見て家康公は笑顔で喜び、『和尚我を見ること愛児のごとし。故に安心して睡る。我その親密の情を喜ぶ、和尚睡る可し』と言って、それ以来『可睡和尚』と愛称し後に寺号も東陽軒から『可睡斎』と改めたそうである。
 可睡斎に奉祀する秋葉総本殿は、明治6年に神仏合体から三尺坊大権現さまのご本躰が秋葉山より御還座された事から、火妨霊場として秋葉総本殿三尺坊大権現鎮座道場と呼ばれるようになり、名実ともに東海における禅の大道場として知られているということだ。



 「約10万坪の境内では、ぼたん苑や放生池、本堂をはじめ、70にもおよぶ大小の建造物があり、中でも総檜造りの瑞龍閣(ずいりゅうかく)は、安土桃山式書院造りを形どり、大広間には壮麗な天井画が描かれております。」と案内にある。



ツアーの最初の観光場所はこの「可睡斎」。前回来た時にはただ勝手に見て回っただけであったが、今回は現在この寺で修行をしているというお坊さんが説明してくれた。
「オンピラピラケンピラケンノンソワカ」
これが火防の真言(しんごん)だそうだ。この真言を何度か繰り返して唱えると火防のご利益があるのだそうだ。

 次に訪れたのが、小高い丘陵の上に立つ法多山尊永寺。「可睡斎」からそう遠くない。
 『ここは「はったさん」と呼ばれ、多くの人に親しまれています。神亀2年(725)聖武天皇の勅令により高僧行基上人が、この地に正観音菩薩を安置したのが始まりと伝えられています。本尊正観音菩薩は浅草観音とともに由緒ある厄除(やくよけ)観音として知られています。天空にそびえ立つ本堂は鎌倉様式を現代技術で力強く再現した独特の風格が漂います。仁王門(国指定重文)は桃山時代の様式を伝え、非常に雄大豪壮であります。
 初詣は、東海一円から人がおし寄せ、県下では一、二位を競う賑わいぶりです。桜の名所としても人気が高く「遠州祭りばやし大会」などのイベントも開催され、華やぎを見せてくれます。』
と、案内にある。
 ふもとの駐車場から土産物を売っている店の並びを抜けて山門(仁王門)をくぐると杉の木立の中を通って参道が続いている。



 しかし我々は2回目でもあり、参拝は失礼して前回食べそびれた「厄除けだんご」を求めて参道の途中にある売店へ一目算に行ってみた。が、しかし、今年もやっぱりダメだった。年末のせいらしく店が開いていないのだ。もう元旦の準備に入っているのだろう。ガラス戸には白いカーテンが掛かっていて、中を覗くこともできない。しかも「厄除けだんご」はここの売店にしか置いていないのだ。帰りに門前の店屋さんを探してみたが、やはりどこにもなかった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 そろそろシートに座り疲れた一行を乗せて、バスは初日の行程を終え今夜の宿泊地「グランドホテル浜松」へ向かって走り始めた。

 我々にとって今回のツアーの最大の楽しみは、実は今夜にあるのだ。それは趣味で始めたスクーバダイビングに関連したメーリングリスト(インターネットを介した電子メール友達の輪)で知り合ったUさんが静岡の地酒でおいしい料理を楽しめる店を案内してくれることになっているのだ。で、直前のメールでUさんが仕事で遅れるのでYさんと飲んで待っていることになっているのだ。しかも、UさんともYさんともメールを交換しただけで初対面ときている。チョット「わくわく」してしまう。

 浜松駅界隈の渋滞を抜け、バスは「グランドホテル浜松」に到着した。我々は早速荷物をほどき(と言っても洗面道具を出した位のものだが)、ホテルからタクシーで待ちあわせ場所の「浜松駅新幹線改札口」へと出かけた。
 約束の午後6時になって、若い女性から声を掛けられた。
「あのぅ。痛さんさんですか?」
「そうですけど…」「もしかしてMさん?」と、私。実はもう一人「都合がつけば来る」と言っていた女性がいたのだ。それがMさんだった。
「女の子が来てくれて良かったァ」とワイフ。
お互いの紹介が済んだ頃にYさんがやって来た。YさんとUさんはインターネットのホームページに写真が載っていたので印刷して持って来たのだが、その写真と印象がチョット違う。話しているYさんは大柄な体躯とは不釣り合いな、やんちゃで優しい雰囲気を発散させていた。

 無事に会えて、「さて、どこへ行こうか?」という段になって、我々が3年前に浜松に来た時に飛び込んだ飲み屋を探してみよう、ということになり、ウロ覚えの道をウロツクことになった。
 大体の場所は見当がついていたので、駅前のロータリーを左の方へとブラブラと歩いていった。そしてネオンのきらめく繁華街の通りを歩きながら(何となく見覚えがあるゾ)という裏通りに目をやっていると、何本目かの小道でワイフが突然「あっ! あそこ!」と声を上げた。
「えェ? そうかァ? 道がキレイすぎる気がするけどなァ」
と、半信半疑でその小道を奥へ行ってみると、まさしく見覚えのある店の前に出た。
「あった! ここだ!」
「良く解ったね」
「3年の間に道がキレイになったんだァ」

 その店は「出世」という屋号の居酒屋で場所的には静岡銀行の裏手になるそうだ。「出世」という屋号は浜松城を別名「出世城」と呼ぶことから付けたのかも知れない。
 まだ6時を過ぎた頃だというのに店はかなり混んでいた。3年前に来た時は二人でカウンターに陣取ったのだが、今日は5人になることでテーブル席を陣地と決めた。「先ずはビールで乾杯」と思って店のお姉さんにビールを注文したら、Yさんが「アルコールはやらない」と言うのでビールの他にウーロン茶をオーダーした。
「つまみは何にしよう」と言ったら
「この店に来たらやっぱり"ワニ"でしょう」ということでワニ肉の焼き物と、
「カエルとダチョウも注文しよう」と、Mさんのリクエストでそれを頼んで、その他に野菜サラダとかをオーダーした。

 飲みながらの話題はもっぱらスクーバダイビングの話しで、お互い潜ったポイントの話しとかで初対面ということをすっかり忘れて盛り上がっていった。Mさんはチョット丸顔で長い耳をつけたらニックネームの通りのウサちゃんになりそうな雰囲気の女の子。リゾートダイバーで国内はまだ潜っていないという。Yさんはダイビング歴2年で200本近く潜っているという猛者(もさ)。大きな体で我々酔っ払い相手にウーロン茶で付き合ってくれている。

 8時頃になってようやくUさんが登場した。Uさんはインターネットの写真と同じ顔で
「まだ仕事中なので、"食事に行ってくる"と言って出てきました」と笑って言った。
(仕事があるのに付き合わせちゃって悪いことしたなァ…)と思いながら、全員揃った所で改めて乾杯する。
 この頃には我々はビールから既にお酒に変えていて、メニューにある静岡の地酒を順番に味わっていた。「磯自慢」「初亀」はフルーティな薫り高い銘酒で、女性受けする日本酒であった。前に来た時には「おんな泣かせ」という、これもおいしい地酒があったのだが、今はメニューに載っていない。

 ダイビングの話しを肴に結構盛り上がって、9時半頃にお開きになった。Mさんは途中で帰ったので、Uさんと店の前で別れ、我々夫婦はYさんの後について駅へと向かった。そして何とYさんの駐車場までブラブラと歩いてくると「ホテルまで送ります」と言ってくれる。Yさんは初めからそのつもりでいて呉れたようで、遠慮を知らない我々はお言葉に甘えてホテルまで送ってもらってしまった。

 こうして浜松の夜は更けた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 翌朝は9時に「グランドホテル浜松」を出発。袋井ICから東名に入り静岡ICで一般道に降りた。途中お茶の製造工場を見学して「日本平」へと向かう。このルートは3年前のツアーとまったく同じだ。

 やがて「日本平」へバスは到着した。ここで約2時間、昼食と見学の時間となった。他のツアー客の多くは久能山へケーブルで渡って久能山東照宮を見学に行ったようだが、我々は以前に行っているので、別行動で展望台へ登ってみた。バスの駐車場から少し坂道を登った所が展望台になっているのだが、北風が強くて寒くって暇つぶしはできそうも無い。ただ、見晴らしはすごく良い。遠くに富士が浮かんでいる。



 30分ほどブラブラして昼食にした。ケーブル乗り場のある建物に入っているレストランに入り、定食の食券を買う。ワイフはエビフライカレーにした。そして見晴らしの良い一番奥のテーブルにつくと隣でビールを飲んでいる。
「こっちもビール飲もうかなァ」
「飲めば」
「チョット食券買ってくるワ」
と、ビールの食券を買いに席を立つ。

 小1時間かけて昼食を済ますと後は何もすることが無い。レストランの窓越しに見る駿河湾は陽光を反射してキラキラしている。外に出ると北風におもわずダウンのホックを掛け直して肩をすぼめる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 見学時間が終わり全員が集合すると、バスは一気に「日本平」を降りてツアー最後の目的地「清水魚センター」へと走り始めた。30分ほどで到着した「清水魚センター」は魚専門のスーパーって感じだった。これまで何回か「魚センター」という場所へ行ったが、もっと規模の大きい場外市場みたいな場所だったので、チョット感じが違う。それでも割と広い駐車場は車で溢れていて、近隣からの買い物客が多いことをうかがわせる。
 我々も早速センターに入り、色々と物色した。正月用の伊達巻を買った。紅白の蒲鉾も買った。そして今夜のつまみ用にとマグロのカマを買った。



 やがて出発の時刻となり、思い思いの買い物を済ませた人達がバスへ戻ってきた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 こうしてバスは正月用の魚介類と疲れて眠っている一行を乗せて、清水ICから再び東名へ入り、一路横浜を目指して走り始めた。