パチパチパチ。手を叩く春子がいて、何かしらひんやりと背筋に下がる。幸男は股に幼い鼓動のような居心地の、背筋の恥じらいを忘れさせる肌ざわりを感じている。何も幸男らの日常を理恵は壊したいわけでないだろう。そんな思いを強く抱く時、「チビが悪い犬たちに勝ちました。皆で力をあわせたからです。いつもなかよくしていたから」とテレビの声を無意識的に耳にする。幸男は今日のあの夏子から、頭の隅でうずくまる一種の悔しさを残している。
「話さなければこっちが危なくなる」
(「おしのび」つづく)
「話さなければこっちが危なくなる」
(「おしのび」つづく)