とかくに人の世は・・・

智に働いてみたり情に棹さしてみたりしながら
思いついたことや感じたことを徒然に記します 
  nob

「無我」なのかな。

2009年05月08日 | つれづれ
数年前から丈母が認知症になり介護施設のお世話になっています。年々症状が進んでいるようで物忘れの度合いがひどくなってきています。まだ家族や親戚、知人のことはしっかり覚えているようですが、日時のことや今のことが覚えられないようです。今日が何月何日であるとか、時間的経過がわからない、また食べたことを忘れるといったような症状がでてきています。
発言の内容がとても拙いというより幼くなってきました。よく人間、年をとると子供に帰るといわれますが、いまそれを実感しています。

丈母が入所している施設へときどき面会に行きます。そこに入所されているのは大半が認知症の方なのですが、同じ認知症でも様々な症状があるようです。一日中じっと座っているひと、始終独り言をいうひと、なにかを叫んでいるひと等。

そのなかに黙々と歩きつづける男性がいます。伝え聞くところによると、そのひとは教職に就かれていたそうです。現役時代はどんな先生だったのだろうと想像をめぐらせてみたり、いま何を思いながら歩いているのだろうと考えながら見ていると、なぜか胸が熱くなり涙が出そうになりました。この思いは何だろうかと今度は自身の中を覗いてみました。この男性に対する同情だろうか、哀れみか、いやまったく違う感情です。いわば尊敬というほうが近いような思いだろうと。

その男性にとってはいま歩くことが生きることなのでしょう。無我、悟りを開いた高僧のように要らぬことは考えず、ただ歩くだけ。それを続けるだけ。健康のためとか体力の維持とかそんな目的はないのです。歩くことが生きている証なのです。それが人間の原点であって到達点でもあるのかなと思った一日でした。

丈母もこのまま認知症が進めば歩くだけの日々がくるのでしょうか。

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2 コメント

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こんばんは (berry)
2009-05-08 21:00:21
おひさしぶりです。

お話読んで、私も少し泣きそうな気持ちになりました。

何かわからないけれど、人間って
本当に奥深いものだというような・・・

この方は歩くことで、何かを無意識のところで
清めてらっしゃるようにも思えますね。

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おひさしぶりです (nob)
2009-05-09 09:39:42
berryさんコメントありがとうございます。
この男性や施設のほかの方を拝見することでいろんなことを感じさせてもらうことができます。老人介護施設なんて「姥捨山」のように思われることがありますが、入所されている方々は私たちにそれぞれの方法でメッセージを送ってくれているのです。そう考えると世の中に不要な人間、もっというと生き物なんてひとつもないんだなと思います。

berryさんお引越しされたんですね。こんどのは写真がたくさんで楽しいですね。
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