プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 小林恭二「宇田川心中」

2022年11月23日 | ◇読んだ本の感想。
タイトル的に歌舞伎、浄瑠璃だなあと思ったら、まさにザ・歌舞伎な小説でした。
考えてみればここまで歌舞伎的な小説は珍しいかもしれない。
この人、歌舞伎好きだもんね。いろいろ手引き的なものも書いてるし。

逆にいえば、単なる時代小説のつもりで読むと、読み進むうちに飽きるというか、
辟易するかもしれない。コッテリ因果の世界ですから。
なので、知っている人は歌舞伎的世界を読む心構えをして読んで欲しいし、
歌舞伎を見たことがない人は、時代小説に、……なんですかねえ?
因果……因果……ちょっと違うけど、横溝を通俗的にしたテイストを
加えたみたいな?そのあたりの心積もりをして読んで欲しいと。

現代と江戸末期と鎌倉時代初期を描く話なので、頭を切り替えるのが少々手間でした。
2日にわたって読んだが、2日目は話を思い出すのにちょっとかかった。
現代部分は最初と最後のほんのちょっとだけ。なんだったらなくても良かったかも。

しかし読み終わってけっこう驚いたんですけど、これ新聞小説だったんですねえ。
長いとは思ってたけど、内容的にも実際的にも、まさか新聞小説だとは思わなかった。
きっちり締まったとまでは言えなかったが、新聞小説にしては
うまくコントロールされた話だったと思いますよ。
この人、わたしは決して器用な小説家だとは思っていないけど、
実は器用なのかもねえ。作品はバラエティに富んでいるし。

小林恭二の一作目としては全くおすすめしないが、面白かったです。
何冊目かにどうぞ。





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