避難所から避難、疲弊 先見えず「もう勘弁」 九州豪雨
07.11 06:00
西日本新聞
食べかけの弁当を抱えて逃げる女性、子どもの手を握り締めて車に乗り込む母親。福岡県朝倉市杷木古賀では10日、上流にあるため池が決壊の恐れがあるとして周辺住民約650人に一時、避難指示が出された。避難先からさらなる避難を迫られた住民たち。自宅の復旧作業をやめて走りだした人もいる。「もう勘弁して」。災害に振り回される人々たちに、心身ともに疲れがのしかかる。
同市杷木古賀の朝倉光陽高。午後1時ごろ、携帯電話から一斉に警報音が鳴った。「えっ、ため池壊れるの」「はよ逃げな」。避難者に緊張が走った。近くの「上野ため池」が決壊する恐れがあり、避難所の同校を含む地域に避難指示が出された。「急いで避難します」。職員の声で、避難者たちは市のバスや警察の車両、マイカーに乗り込み、数キロ離れた「再避難先」に向かった。
「慌てて出たけん、何も持ってこれんかった」と肌着姿の上野宗一さん(60)。豪雨が襲った5日以降、家族で同校に身を寄せていた。校舎での寝泊まりに慣れてきたばかりだった。「ため池も危ないんじゃないかと心配していた」。70代女性はタオルを口元に当て、目を潤ませた。「避難生活はもう嫌だ」
農業の島田一幸さん(43)は柿畑や田んぼの様子が気になり、自宅に戻っていたときに携帯の警報音が鳴った。「はよ逃げるぞ」と妻と息子に声を掛けて車で学校へ。さらに別の場所への避難を指示された。「雨が小降りになってきていたから少しほっとしていたのに。いつまで続くのか」
再避難先となった多目的施設「サンライズ杷木」(同市杷木久喜宮)。既に受け入れていた避難者約130人に加え、同市杷木古賀からの避難者100人超が入ることになり、支援物資の保管場所だった部屋が開放された。
「こっちは大丈夫」。家族に電話をかけ無事を報告する女性。入り口前の階段では男性が座り込み、汗を拭っていた。部屋の隅では高齢女性がバッグを抱きかかえて眠っていた。「まだ避難せないかんとか」「もう疲れた」。口々に愚痴がこぼれた。
ため池決壊の恐れがなくなったとして、避難指示は午後7時10分に解除された。50代の男性は洋服や貴重品をバッグに詰め直し、車に乗り込んだ。自宅に戻るという。「行ったり来たりできつかった。今夜は家でぐっすり寝たい」。塚本英喜さん(74)は、より安全なこの施設に残ることを決めた。「家は電気も水も通らず、土砂まみれ。風呂は入れてない。本当は家を早く片付けたいが、また避難するのはつらいし、怖い」
先行きが見えない被災者たち。11日は現地に再び激しい雨が降る恐れがある。
=2017/07/11付 西日本新聞朝刊=
07.11 06:00
西日本新聞
食べかけの弁当を抱えて逃げる女性、子どもの手を握り締めて車に乗り込む母親。福岡県朝倉市杷木古賀では10日、上流にあるため池が決壊の恐れがあるとして周辺住民約650人に一時、避難指示が出された。避難先からさらなる避難を迫られた住民たち。自宅の復旧作業をやめて走りだした人もいる。「もう勘弁して」。災害に振り回される人々たちに、心身ともに疲れがのしかかる。
同市杷木古賀の朝倉光陽高。午後1時ごろ、携帯電話から一斉に警報音が鳴った。「えっ、ため池壊れるの」「はよ逃げな」。避難者に緊張が走った。近くの「上野ため池」が決壊する恐れがあり、避難所の同校を含む地域に避難指示が出された。「急いで避難します」。職員の声で、避難者たちは市のバスや警察の車両、マイカーに乗り込み、数キロ離れた「再避難先」に向かった。
「慌てて出たけん、何も持ってこれんかった」と肌着姿の上野宗一さん(60)。豪雨が襲った5日以降、家族で同校に身を寄せていた。校舎での寝泊まりに慣れてきたばかりだった。「ため池も危ないんじゃないかと心配していた」。70代女性はタオルを口元に当て、目を潤ませた。「避難生活はもう嫌だ」
農業の島田一幸さん(43)は柿畑や田んぼの様子が気になり、自宅に戻っていたときに携帯の警報音が鳴った。「はよ逃げるぞ」と妻と息子に声を掛けて車で学校へ。さらに別の場所への避難を指示された。「雨が小降りになってきていたから少しほっとしていたのに。いつまで続くのか」
再避難先となった多目的施設「サンライズ杷木」(同市杷木久喜宮)。既に受け入れていた避難者約130人に加え、同市杷木古賀からの避難者100人超が入ることになり、支援物資の保管場所だった部屋が開放された。
「こっちは大丈夫」。家族に電話をかけ無事を報告する女性。入り口前の階段では男性が座り込み、汗を拭っていた。部屋の隅では高齢女性がバッグを抱きかかえて眠っていた。「まだ避難せないかんとか」「もう疲れた」。口々に愚痴がこぼれた。
ため池決壊の恐れがなくなったとして、避難指示は午後7時10分に解除された。50代の男性は洋服や貴重品をバッグに詰め直し、車に乗り込んだ。自宅に戻るという。「行ったり来たりできつかった。今夜は家でぐっすり寝たい」。塚本英喜さん(74)は、より安全なこの施設に残ることを決めた。「家は電気も水も通らず、土砂まみれ。風呂は入れてない。本当は家を早く片付けたいが、また避難するのはつらいし、怖い」
先行きが見えない被災者たち。11日は現地に再び激しい雨が降る恐れがある。
=2017/07/11付 西日本新聞朝刊=
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