吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

車の救出

2008年02月05日 | 
雪の時によくある車の救出のこと、ご参考までにちょっと細かい内容を。

八ヶ岳から伊那の仕事場へ。
このところの雪は自宅では特にトラブルはありませんでしたが、問題は留守にしている作業場です。
この前直した便器のために、トイレにはヒーターを入れておいたのでそこについては大丈夫だと思われるのですが、積雪量も多いので、何が起こっているのか心配です。
まあ、火が出る要素はないので、こんなにユルいことが言っていられるのですけれどね。やっぱり火事が一番恐いですから。

ええ、今度は何が起こっているのか楽しみよ!(なんていうと本当になるよっ)

夏タイヤ+チェーンというダルい装備のままですが、国道を走ればまあ行けるでしょう。
恐らく問題は杖突峠の諏訪側と、仕事場周辺だけと予測して発進。
何年か前には除雪仕事の下働きなんぞもやっておりまして、このあたりの除雪の進捗については大体想像がつくのです。

で、予測にたがわず、杖突峠諏訪側に雪が多少残っているくらいでした。
峠の上りの先行車は岡山ナンバーの大型トラックでした。
ノロノロなのはやっぱり雪道の経験が少ないのでしょうか。地元車は結構普通に走りますから。
後続の乗用車が結構車間を詰めて来るのでちょっとうっとしかったのですが…。

道幅が広くなったところで、前方の大型トラックがハザードランプを点けて減速、追い越していいよのサインです。
追い越したあとこちらもハザードを点けます、ありがとうのサインです。
さらに後続の乗用車も来ました。

順調に上っていくと、後続の乗用車がミラーから消えました。ちょっと気になって後ろを確認すると、路肩の雪に刺さっているじゃありませんか。
あーあ、やっちゃったのね。年配のご夫婦のよう。う~ん。

Uターンして救助に向かいます。
とりあえず落ち着いてもらって、愛用の除雪板で車体まわりの雪をどけます。
このくらい大したことじゃないのですけど、ちょっとパニックになっていらっしゃいました。
車は後輪駆動の大型乗用車、雪道では最低の乗り物ですね。
ちなみに最弱は二輪駆動の軽トラですが、軽くて駆動力が弱い分深みにも嵌まりにくいし、救出もし易いのです。
四駆かFFなら大抵手で押し出せるのですが、結構深く雪の山に突き刺さっていることもあり、この場合、車で引っ張ることも考えなければならないところです。
そこに先ほど道を譲ってくれた大型トラックが来ました。
そこで、そのトラックに引っ張ってもらいながら、同時に人力で押し出すことにしました。

さて、スタックした車の引っ張り出しの注意点です。

あ、悪路などで車が埋まったりして動けなくなることをスタックといいます、四駆乗りはよく使う言葉です。固着するという意味のスティックの過去分詞による名詞化ですね、固着してしまった状態いうニュアンスです、ぐぅ~zzz…。

僕は多い時で年間10台くらいを救出したりしますが(オフロード遊びを含みません)、牽引はほとんどしません。
事故の危険性、車の損傷の可能性などを考えると出来るだけ避けたい方法です。

まず、大抵の車には前後にループ(わっか)が付いていますが、これは基本的にタイダウン用(運搬時の固定用)で、良路上での最低限の牽引くらいが限度です。
悪路での牽引や、しゃくり(牽引ロープをたるませて、勢いをつけて引っ張ること)をやると、結構簡単に千切れます。
千切れると、そのループだの牽引具のフックだのが飛んで来て大変危険です。
引っ張る前にその方向の障害物、この場合は雪を極力除けます。
引っこ抜く時はさらに反対側から押します。
これらは、車のループに掛かる負担を減らすためです。
サスペンションのアームに掛けた方がより強力な牽引には良いのですが、ブレーキラインを傷めたりするので注意です。
ジープの感覚からすると、普通の乗用車ってガラス細工のように脆い感じがします。

路肩に寄せられた雪は僕の腰の深さですが、この時期、緊急事態を想定して、いつも全天候作業服に身を固めているので平気です。
ちょっと濡れたり汚れたりを避けて下準備を怠ることが、意外なほどのリスクの増大に繋がります。

牽引には僕のロープを使いました。
日本には牽引用のとても優れたロープがあるのですが、今回は普通のロープです。
ワイヤーは伸びきったときの衝撃が大きいので、お勧めしません。
ロープを結ぶ時は、僕は、もやい結びのオリジナル変形を使います。牽引に使うとしっかり締まってほどけなくなるので。
さらに締まりそうなときには、結び目にドライバー等を刺しておくと、ほどくとき楽です。

で、引っ張るときにはその車のドライバーさんに乗ってもらって、軽くタイヤを駆動するのとハンドル操作をしてもらいます。万一の時の保険関係のこともあるので運転者本人が良いのです。本人がパニックのときは別ですけど。
それから、直接作業をする人達以外には安全な場所に離れてもらいます。
特に、スタックした車の同乗者は手伝おうとするものですが、却って危ないことが多いので、離れてもらいます。

後続車の交通整理だとか、書くときりがないほどの注意点があるのですが、とにかく安全第一です。

なんなく車の救出に成功。

次は離脱です。実はこの後が一番苦手です。
今回、道具の収納をしていたところで捕まってしましました。
「お礼を」
とお金を差し出されたりするのです、これが面倒なのです。
別に大したことではありませんし、お金をもらうほどのこともないのですが、特に年配の方ほどお金を差し出す傾向があるようです。
場合によってはプライドがかかっていたりして、お金の受け取りを断ると怒られたこともあります。

今回も結局、千円を受け取ることになってしまいました。
受け取らないなら受け取らない、受け取るならば気分良くということで、さわやかにお礼を言って、最後に注意事項。

今はまだ路肩に寄せられた雪が柔らかいですが、これが何度か融けて凍ってを繰り返すと固くなります、乗用車の外装が壊れるほどになるので要注意です。

その後は予測通り雪もなくスムーズでしたが、これまた予測通り作業場へのアプローチの急坂はまったくの新雪で、チェーンを掛けて上ったのでした。
最後の最後で、ああ面倒くさいこと!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿