大規模噴火時の広域降灰対策の基本的な考え方については、富士山の宝永噴火規模の噴火をモデルケースにして検討したものです。
何故「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ(WG)」 を立ち上げ、被害予測と対策を議論し始めたのか?富士山の噴火は間近いのか?
ひとまず、富士山の噴火の歴史を見てみることにしました。
気象庁の資料(古文書の情報に加え地質調査 )によれば、781(天応元)年、桓武天皇即位の年に噴火し降灰している。それから現在まで噴火27回。地震は5回。となっている。
1240年間に分かっているだけで32回の噴火や地震が起きていることになる。単純に計算すれば100年に2回から3回の火山活動となる。根拠は古文書の情報や地質調査によっています。
特に規模の大きな噴火を見てみる。
800~02(延暦19~21)年・・・噴火場所は北東山腹。足柄路は埋没。
864~66(貞観6~7)年・・・噴火場所は北西山腹。
長尾山付近から溶岩流出(青木ケ原溶岩)、北西に流れたものは本栖湖に達し、また「せのうみ」を精進湖(しょうじこ)、西湖(さいこ)に二分、北東に流れたものは吉田付近に達する。
937(承平7)年・・・溶岩流。
1033(長元5)年・・・溶岩流。噴火場所は北山腹。
1435または1436(永享7)年・・・ 溶岩流。噴火場所は北山腹。
1707(宝永4)年 宝永噴火
12月16日噴火(宝永噴火)。軽石・スコリア降下。噴火場所は南東山腹(宝永火口)。
噴火1~2ヶ月前から山中のみで有感となる地震活動。
噴火1~2ヶ月前から山中のみで有感となる地震活動。
十数日前から地震活動が活発化、前日には山麓でも有感となる地震増加(最大規模はM5級)。
12月16日朝に南東山腹(現在の宝永山)で爆発し、黒煙、噴石、空振、降灰砂、雷。その日のうちに江戸にも多量の降灰。川崎で厚さ5cm。
噴火は月末まで断続的に起きたが、次第に弱まる。家屋・農地が埋まった村では餓死者多数。
初期はデイサイト、その後玄武岩のプリニー式噴火。江戸にも大量の降灰。噴火後洪水等の土砂災害が継続。
噴火は月末まで断続的に起きたが、次第に弱まる。家屋・農地が埋まった村では餓死者多数。
初期はデイサイト、その後玄武岩のプリニー式噴火。江戸にも大量の降灰。噴火後洪水等の土砂災害が継続。
明治時代からの火山活動も見てみよう。
1895(明治28)年
1897(明治30)年
1914(大正3)年
1923(大正12)年
上記はいずれも噴気?となっている。よくわかっていない。
1926(大正15)年
地震。震央は富士山南東麓。
1987(昭和62)年
山頂で有感地震4回(最大震度3)。
2000(平成12)年および2001(平成13)年
深部低周波地震の多発。
2008~10(平成20~22)年
GPS連続観測から地下深部の膨張を示すと考えられる伸びの変化が観測されたがその後終息。
2011(平成23)年
静岡県東部(富士山の南部付近)でM6.4。その震源から山頂直下付近にかけて地震が増加。その後地震活動は低下しつつも継続。
明治大正時代まで噴気が見られたけど、その後97年ほど地震はあるけど噴火の気配はない。これほど長く噴気が見られないのは珍しい。1083年から1427年までの間、1511年から1704年まで、1709年から1825年まで記録がない。この3回の間、単に記録がないだけなのか(現代でも記録を残さなかったり、記録を廃棄したり改ざんしたりしている。あっ!これは政治の話か!)?本当に活動がなかったのかは分からない。ただし、地震の研究が進みこれまでは分からなかった富士山の地下の活動が分かり、1987年以降の地震が多いのには気になる。
富士山=富士火山は死んでもいないし、休んでもいない。もしこの期間にエネルギーをため込んでいるとすれば・・・と思うと怖くなる。
地震は怖いし被害も甚大なものになる。一方で噴火による火山灰の降灰被害はどうだろうか?私たちは経験していないから甘い考え方をしていないだろうか。風向きにより富士山から都心まで非常に広範囲に火山灰が積もる。
鹿児島の桜島の火山灰被害を知っている方から聞きましたが、
「まず外には出れない。真っ黒な灰が帯状になってやってくる。ざぁっ~と音を立てて降りかかる。頭の中から顔から鼻の中、服に入り込んでこびりつくようにはたいても落ちない。ほんの少しの量でも生活に大きな影響を与える!サッシの少しの隙間からも家の中に入ってくる。歩けないし自転車なんか無理。車も灰だらけ。滑って危なくて乗れないし故障する。大変なことになる!すべての物に降りかかるんだから!」
ということで大変さが伝わってきた。
富士山の活動の歴史が少しは分かった。ずっと活動している。はるか昔のことも分かった。記録を残すのは大切だ。最近の地震の多さも気になる。何か関係があるのか?
続く