『世界が死んだように静まりかえった。』
陸小鳳は突然、俗世から墓の中に転がり落ちたようだった。
『何事が起こったんだ?』
「冷姑娘、冷姑娘」
彼は堪えきれずに叫んだ、ところが返事は返って来ない、部屋の中には、たくさんの人が居るはずなのに、まさか全員の口が縫い付けられたのではあるまい?
陸小鳳は、ついに目隠しをしている布を取り払った、そしてすぐに全身が凍りついたように硬直する感じを覚えた。
部屋の中には人っ子一人、居ない無人であった。
つい先ほどまで、ここに居たと思われる人たちはいったい何処へ行ってしまったのだろう?
この一瞬の時間に、人々がすっかり立ち去る事はありえない。
この不可能な出来事はどの様にして、起こったのだろう?
部屋の中は、決して広くは無く、一つの寝台と一つのテーブルが有り、テーブルの上には酒と料理が並べられている。しかし、その料理と酒には手をつけられた様子が無い。
陸小鳳は、この部屋の中で突然起きたまったく不思議な出来事に、ついに耐えられなくなって身震いをした。
事実、誰が見てもこの部屋の中には、つい先ほどまでも、まったく人など居なく、一人の人さえも存在しなかったようにしか見えない。
しかし、陸小鳳はつい先ほどまで、明らかに多くの人たちの声を聞いたのだ。
彼自身、自分の目で見たことを信じ、己の耳を疑った。しかし、彼の耳はとても鋭く、病気などではない。
『何がなんだか解からない?』
人気の無い部屋で、様々な音がするはずも無く、音がする事は更にありえない出来事だ。
このありえない出来事が起こってしまい、しかも陸小鳳、自信があいにく出遭ってしまったのだ。
『まさか、化け物屋敷とでも言うのだろうか?』
神様は彼の出遭った不思議な出来事が、まだ足らないとでも思ったのか、彼を本物の幽霊に出会わせたのです。
陸小鳳は突然笑った。
彼は、この不思議な出来事を、考えても解からないので、そんなことより先に外へ出る方法を考える事にした。
彼は出られない。この部屋には最初から窓が無く、四方をなんと分厚い鉄板の門で囲まれている。
陸小鳳は、再び笑った。
つづく
陸小鳳、最大のピンチなのでしょうか?笑ってる場合じゃないぞ!