澤田ふじ子著の祇園社神灯事件簿シリーズの第3巻『真葛ヶ原の決闘』も選挙準備中に読んだ。この作品は「僧兵の塚」、「真葛ヶ原の決闘」、「梟の夜」、「鳥辺山鴉心中」の章からなり、それぞれが独立した物語である。この事件簿の主役は祇園社に属する神灯目付け役植松頼助だ。祇園社の警護役であり、祇園社境内だけでなく、四条をはじめ市中の各所に点在する御旅所など、同社にかかわる様々な施設も見回りにもあたり、同社の氏子ともいえる京の人々の安寧を守るという役目も負わされている。かつては、祇園社にも犬神人(いぬじにん)や僧兵などの武力集団を抱えていたというが、江戸期になってもその役割の一部を受け継いで神灯目付け役が担っているということのようだ。頼助は従三位左中将・植松雅久の庶子で、馬庭念流の使い手である。今回も、頼助らが次々と事件を解決していく。
佐伯泰英の鎌倉河岸捕物控の21巻目にあたる『春の珍事』を、やはり選挙準備期間に読んだ。岩手2区はとにかく広い地域(四国の半分ほどの広さ)であり、宮古地域での事前遊説に1泊しないと、活動時間がほとどとれなくなってしまう。そこで、宮古へは前日に入り前泊もして2日間かけて全市町村を回った(「久慈茂雄のブログ」参照)。いつもだと家で晩飯の支度をしたりで用事がるのだが、宿に入ってしまえばすることがないし、テレビもあまり見たい番組がないので、勢い本を読むことになる。政策の勉強でもすれば良いのだろうが、やはりせない。
『春の珍事』では、金座裏の飼い猫・菊小僧が行方不明になることから話が始まり、若親分・政次の同門の町奉行所同心の親戚の子息が行方不明になり、その捜索に携わることになる。その後、船頭殺しが重なり、金座裏一同の活躍が描かれる。いつもながら、人情味あふれる事件の解決が行われるのだ。このあたりが佐伯作品の面白さだと思う。