森村誠一の「吉川英治文学賞」受賞作品『悪道』を読んだ。
『悪道』は徳川綱吉の時代の物語である。綱吉は柳沢吉保を寵愛し、側用人にして大老格に遇し、吉保宅をしばしば訪れていた。物語は、吉保宅での綱吉が能を舞っている時に起こる。綱吉が急死(心不全か何かかな?)し、吉保らは「影」を綱吉の代わりにたてるが、「影」が権力者の自覚をもってしまい、「生類憐みの令」などの改変を始める。綱吉急死の近くにいた、医師や籠そばにいた伊賀者(流英次郎)、のほか、「影」を育てた役人などの抹殺をはかるが英次郎らは逃れる。英次郎と医師の娘〈おそで〉らを消し去るために、吉保は殺人者集団「猿蓑衆」を派遣。芭蕉の奥の細道をたどって死闘が繰り広げられ、やがて「影」と英次郎らが合流し、吉保の専横を抑えていくという話だが、もちろん森村誠一がつくりだしたフィクションの世界である。
話のスケールが大きく、どのような結果になるのかわからないので、一気に読まされてしまう作品であった。