共働きだと、子供が愚図った時に周囲から言われがちな言葉がある。
「母親の愛情不足じゃない?」
何とも理不尽で、根拠が欠ける言葉である。
そーゆーあんたは、どんな立派な教育をされてきたのかと、私は内心嘲笑うようにしている。
どんな統計結果をもとに、その言葉を発しているのか。
私の義母(姑)は、全ての子供を三歳まで自宅で丁寧に育てたことを自負している。
まー、専業主婦だからできたことだが、それはそれとしてただお疲れ様でございましたってな感じである。
そんな姑が先日、私の息子が愚図っているのをみて言った。
「お母さんに、ギューとハグされたいんだよねー」
最初は、彼女の思想と言論の自由を尊重し、聞き流していたが、彼女は再度めげずに繰り返してきた。
「お母さん、ハグしてちょーだい」
よく、ババアたちが、まだ喋ることが出来ない赤ん坊の代弁者を自らかって出た時の、あの口調で言ってきた。
「お母さん、ハグしてちょーだい」
こっちは仕事と家庭の両方に追われているときにだ。
カチンときた私は言った。
「お父さん(夫)がやればいいんだよ。」
もしも夫が、定時に退勤するような職で食事の準備から洗濯、掃除までやってくれるなら、そりゃ世の妻たちだってソファーにゆったり掛けて、子供が嫌がるくらいとことん抱きしめられるわな。
でも、帰りが遅い夫に家計も時間も頼れず、仕事で疲れた体にムチをうち、子供に夕飯を作って与える。洗濯や最低限の掃除をし、子供と風呂に入ると、もう子供を寝かしつける時間。でも、朝焦らないように、保育園に持たす荷物一式や自分と子供の明日着る服も準備するという細かい作業もあったり。ベットの上で、子供をギューと抱きしめるだけでやっとである。
もしあなたが、姑というお立場になる予定なら、自分の息子(嫁からすると夫)が早めに帰宅したり、料理も洗濯も妻以上に出来ないならば、本文冒頭にあるような、根も葉もない教育者もどきな発言はお控えになったほうがいいだろう。
「子供はたくさん抱きしめましょう」などという教育本の常套句を切り取って発言したところで、上記の我が家の例のように、抱きしめていないのではなく、母子家庭並みに時間がない場合は、抱きしめたくても余裕があまりない。抱きしめたところで、お腹を空かせている我が子の食が運ばれて来るのか。
何事にも良かれと思って発言したことが、まったく別の方向に作用することがある。
母親を追い詰めては子供にも家庭にもいいことは何ひとつとしてない。