漫トラ日記

現実生活空間&脳内妄想空間を日々マンガに浸食される主婦の怠惰な日常

浜 たかや『太陽の牙』 

2008年02月06日 18時56分49秒 | 
 浜たかや「太陽の牙」(偕成社)

『精霊の守人』みたいな読み応えのあるファンタジーを探してたら、これに当たりました。
こういう時、密林さんのお奨め順検索は便利ですな~
さすが☆5つ!
児童文学の枠を越えて、非常に深い物語でした

<ストーリー>
紀元前5~2世紀、中央アジア、ウラル地方で
鉄器を武器に周辺部族を征服していく騎馬民族ユルン族
そのユルンに征服されたケタイ族の少年ケイナンが主人公。
ケイナンは同じ年頃のユルンの少年オキュレンに嘲られ、
ユルンに支配されるケタイの生活に反発心を抱きます
実は、彼は人を殺すと狼に変身すると言うデイーイン族だったのです
彼の母はそれが嫌で部族を抜けて、大地の神を信ずる穏やかなケタイの中で息子を育てていたのでした
が、ケイナンはある事件をきっかけにタイバル王と王の右手ドグールンとの対立に巻き込まれていきます
そして、ユルンに虐げられ、すべてを失ったケイナンはデイーイン族の元に走りますが
そこも決して安住のではありませんでした
そんな中ユルン族はデイーイン族が住む赤い山(鉄鉱山)を求めて侵略を開始する。。。


青銅器から鉄器時代への移り変わりを舞台とした歴史ファンタジーなんだけど
人間描写に深みがあって、ファンタジーと言うより壮大な人間ドラマになってます

故父王に対する対抗心から闇雲に周辺諸部族を制服して回るタイバル王
王に溺愛されていても、満たされないものを抱えている男勝りの王女ヒングリ
王の第一の忠臣でありながら、だんだん王に追い詰められていくドグールン
被征服民族のケタイを母に持つドグールンの息子オキュレンの劣等感
それぞれの登場人物の人間性が、ちょっとしたエピソードで浮き彫りにされる所が凄い!
主人公の敵役オキュレンや暴君タイバル王は最初は完全悪役キャラだったのが、
何故そんな人間になっていたのかが明らかにされるにつれ、だんだん哀れになってきます
特にドグールンとオキュレン親子の結末は泣けます


ファンタジーのカテゴリーに入っているものの
ファンタジー的要素は狼に変身するデイーイン族だけです
鉄を悪用されることを嫌い、必死の防衛戦をしているだけと思われるデイーイン族。。。
結局、それが自分の民に戦争のための戦争、それゆえの貧困を強いる事となっているわけで
それは、現代でも同じことが言えるのです。。。それも地球のあちこちで。。。
人間て全然進歩してませんね
そういう意味では、かなりリアルな物語なのです

歴史的背景については、かなり学術的に忠実に描かれており
鉄がユーラシア大陸を西から東へと、どのように伝播していったのか
鉄によって人類の生活がどのように変わっていったのかとか
かなり具体的に想像できて面白いです


このユルンシリーズは5冊出ており、次の巻はタイバル王の父の時代の話で
またまた、ドロドロの愛憎劇が展開されるようです
図書館から連絡が来るのが楽しみ~


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
くまさんへ ()
2008-02-10 20:50:56
ありゃ~、最近どこでもお見かけしないと思ったら
パソ太が入院!
そりゃ~大変だったね~
入院費もバカにならないし。。。

>「タフ」
くまさん、マーティンファンだもん
当然読んでるよね

外見はさておいて
変人タフより、現実で頑張っているトリー・ミューンの方が良いよね~~
私もお気に入りです

あっと、トラバしましたので宜しく~
あとでコメに行くわ~

>浜たかや
とても児童向けと言えないくらい、ドロドロです~~
「月の巫女」読んで「風、草原にはしる」に入った所で
「月の巫女」はデイーイン族との過去のしがらみ
「風。。。」の方は「太陽の牙」に出てきた暴君タイバル王の父親の話です
ともに、予言や因縁話に満ちていて
そんなところは、ちょっとシャイクスピアの「マクベス」に似た感じです
ただ、話が少々暗いんで、続けて読むにはちとつらい

で、今、ロイス・マクマスター・ビジョルド「影の棲む城」に浮気中
これも面白いですよ~~!
ビジョルド大好き!

>たつみや章
私は浜さんよりたつみやさんの方をお奨めします
こっちの方が読後感が気持ち良いですから
返信する
お久しぶりです (くま)
2008-02-10 03:17:07
実はお正月早々パソ太が壊れちゃいまして、約一月ぶりのネット復活なんですが、ご無沙汰してた間に「タフの方舟」の記事が!↓
アッシもジョージ・マーティン大好きなんで、この本読んでます~面白いっすよね~
あのタフの、ブッキーなキャラが素敵です
トリミューンの肝っ玉母ちゃんっぽいキャラもカッコイイですしね
アッシも前に「タフ~」の記事書いたんですけど、TBが上手く出来なくて…またお気がむかれたら拙ブログの「本好き」カテゴリーより読んでみてやってくだせい。

ところで、この浜たかやさんのシリーズも面白そうですね~!
アッシ、パソ太が壊れるまでは、SFがマイブームだったんですが、ここ暫くはファンタジーを読みたくなってて、今ちょうど「ライラの冒険」「ドラゴンランス」シリーズなどを読み返してたんですが…
>人を殺すと狼に~
なんて、篠原烏童さんの「EYED SOUL」にも少し似た設定がありますが、興味深いです!
↓の「ドラゴンと愚者」も面白そうですし、たつみや章さんもまだ未読なんで…またまた読みたい本がいっぱいです~!

寒いからつい出不精になってましたが、また図書館にでも行ってみます。

それでは♪またお邪魔させてください

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トオルさんへ ()
2008-02-08 00:38:49
そっちの図書館には2冊しかなかったんですか?
それぞれが独立した話になっているので、1冊でも話は分かるけど
変に中途半端な所が腹立ちますね

この「ユルン・シリーズ」は「精霊の守人」以上ではないです
そこまで面白かったら、もっと評判になってるはずです

世界設定、その表現、ストーリー展開の複雑さ
どれをとっても「精霊」の方が上です
ただ、複雑な人間関係とか人物表現の奥行きが、とってもリアルで、
とても児童向けとは思えません
その分、少々辛気臭いかも。。。

今日、図書館から残りの4冊を借りてきて読んでいるところです
調べたら、物語の時間軸は
「月の巫女」→「風、草原をはしる」→「太陽の牙」→「火の王誕生」→「遠い水の伝説」
の順で進んでいくようなので
そもそもの「月の巫女」から読み始めています
ちょっと、神話や伝説を読んでいるような雰囲気ですね
全部読んだら、まとめてアップします~


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へぇー!(偕成社)の児童文学シリーズですかー。 (tooru_itou)
2008-02-07 08:23:40
 私も『精霊の守り人』みたいなのが(偕成社)の他のにないかしら?って思ってました(^o^)。
 (浜たかや)さんの『太陽の牙』、勿論児童文学だから初耳です。
で、ネットでちょっと調べたら、
「もう少し評価されても良いシリーズではないかと思う」って評が載ってました。
このシリーズの5冊って、
『太陽の牙』『火の王誕生』『遠い水の伝説』『風、草原を走る』『月の巫女』ですね。
試しにウチの市の図書館の蔵書を検索したら『風、草原を走る』と『月の巫女』の
2冊しかこのシリーズないんデスヨ!。何考えてるんだろね(苦笑)。

 これは青銅器から鉄器へ移行する時代が背景なんですか。
私は『精霊の守り人』みたいな江戸時代に近い雰囲気の物語が好きなんですよねー。
もう少し夜さんが読み進んでの感想によって決めようかと思います(笑)。
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