ゆきちゃん通信++tomiの日記++

自閉症の娘、由紀子の毎日と
母の生活を綴っています。

記憶について2(自閉症の特性20)

2009年06月16日 | 自閉症の特性
自閉症の特性(記憶について)の続きです。


再会が苦手だったり、過去の場所に戻れない由紀子!
どうして、そんなことが起きるのか・・・

そのことを気づかせてくれるエピソードがありました。


=====新聞版「ゆきちゃん通信」№15(2001 年12月24日発行)より抜粋===========

O上先生と本当の再会

転勤でお別れをしていた保育園時代の担任のO上先生から
福江に来られるという、うれしい連絡を頂きました。

再会が苦手な由紀子ですが、

この2年の間にひでき先生やネーネーとの再会をクリアしてきた由紀子です。

もしかしたら今度はうまくいくかもしれない‥・そう思いました。


約束の朝、由紀子にO上先生と会う事を告げると
意外とあっさり『うん!』と答えてくれました。

この由紀子の変化にあらためて驚きながら家を出発したのですが
約束の場所に着いて、いざ車を降りようとしたその時です。

由紀子が急に
『O上先生はいないよ!先生はいない!』
と大きな声で叫んだのです。

そしてシートにしがみついて降りたくないと無言の抵抗です!

でも、それは長い時間ではありませんでした。

『先生は待っているよ!だいじょうぶ!がんばれ!』

という私の言葉に何かしら吹っ切ったように車から降りてきました。

そして、不安そうに私の後ろを歩きながら、
ずっと保育園時代のお友達の名前をとつぶやき続けました。

私も忘れてしまっていた名前が次々と出てきます。

きっと由紀子の頭の中で封印されていた
保育園時代の思い出が溢れ出していたのかもしれません。

そして先生の姿が見えたその時、
由紀子は『O上先生』と一言小さな声でつぶやいていました。

でも、もう泣いたり逃げ出したりはしませんでした。

しばらくは視線を合わせることはできませんでしたが、
先生の側で少してれながらうれしそうな由紀子の姿に私は本当にホッとしました。

その由紀子の成長を先生が喜んでくださったのは言うまでもありません。

先生とお別れした後、
『O上先生いたね!よかった!』

と笑顔で言った由紀子の一言が心の成長を感じさせてくれました。

==========ここまで==================


このとき私は、どうして由紀子が予告なしの再会が苦手なのか
解かったような気がしました。

きっと、由紀子頭の中にはたくさんの引き出しがあって、
その中に、たくさんの記憶が圧縮されて入れてあるのだと思います。

懐かしい人に会うと言うことは、その引き出しの中から
その人の思い出を引っ張り出すことになるのですが、

引き出しは一度開けると、圧縮されていた情報の全てが
一気にあふれ出て・・・由紀子の処理能力を超えてしまうのだと思います。



たぶん、五島の実家に行ったときの由紀子の異変も同じだと思います。
懐かしい場所には、思い出がいっぱいです。
その場所に足を踏み入れた途端に、過去の記憶があふれ出てきて
由紀子の処理能力をショートさせてしまったのでしょう・・・。



その状況が、どれほど辛い事なのか・・・・?
私には想像ができません。


このO上先生との再会の時は、予告をしていたので
由紀子も心の準備ができていたのだと思います。

それからは、誰かと再会させるときには予告が絶対条件となりました。





でも最近は、由紀子も成長をして
情報の処理の仕方もずいぶん上手になったようです。

先日も、過去の場所であるはずの、
卒業した学校の運動会に行けましたもんね!!

これからも、成長していけば
もっと過去への扉が開いて、生活が楽になるのではないかと
期待しています。

記憶について(自閉症の特性19)
=END=
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記憶について(自閉症の特性19)

2009年06月16日 | 自閉症の特性
由紀子の自閉症の特性の中には「フラッシュバック」と言う現象もあります。
6月12日の日記にも最近、フラッシュバックが起きているような様子が見られると書きました。

本当はここでフラッシュバックについて書こうと思ったのですが、
その前に、由紀子の記憶について書かなければ、
なぜフラッシュバックが起きるのかが解かりにくいと思ったので、
まずは、記憶について書こうと思います。

自閉症の人は記憶力がいいと、よく言われますが、
専門家の中には、
自閉症の人の記憶について、
「忘れられないという障害」
だという方がいます。

自閉症のみんながそうなのかどうかはわかりませんが

由紀子を見ていると、そうなのかもしれないと思うことがあります。


今でも、保育園時代のお友達や先生の名前を口にしてみたり・・・・、

小学校一年生のときに、教材として使っていた
エリックカールの絵本の内容を正確に暗唱することができます。


そんな、楽しい記憶ばかりがたくさん残っていくのならば、
何も問題はないのですが・・・。

生きて行く途中には、忘れてしまった方が幸せな記憶だってありますよね・・・・


そんな記憶も、由紀子の中にはしっかりと残っています。

その記憶がよみがえってくるのがフラッシュバックです。


でも・・・
この忘れられない記憶の弊害は、フラッシュバックだけではありません。


全てのことを覚えていると言うことは、
頭の中に莫大な量の情報が残っていくと言うことですよね・・・・

その情報の処理が由紀子を苦しめることもあるんです。



・由紀子は再会が苦手です。


転勤などで、大好きな人とお別れをした後、
予告もなしに突然、どこかで再会をしたりすると、
由紀子は大きなパニックを起こして、泣き叫びながら逃げ出してしまいます。

一回は、長崎のスーパーで小学校時代の先生とバッタリ会ったのですが、
私がその先生に気が付くまえに、由紀子が逆方向へ走り出してしまい
危うく見失ってしまうところでした。(汗)


相手が大切な人であればあるほど、再会は大変なことになってしまいます。

これも、過去の記憶の処理の問題だと思います。



・由紀子は過去の場所に戻ることが苦手です。


五島から長崎へ引越しをして2年目!

五島の私の実家に帰省したときのことです。

玄関から居間へ入った途端、
由紀子は四つんばいになって、畳に頭を押し付けたまま
顔が上げられなくなってしまいました。


転勤をするまで、毎日のように遊んだ実家でした。
その記憶が由紀子を押しつぶしているようでした。


10分ほどして、何とか頭を上げることはできましたが、
その後も、何も食べることができず・・・
表情もうつろのまま・・・・

あまりの姿に、私はその日のうちに由紀子を連れて帰ってきました。

それ以来、由紀子は五島に帰っていません。


どうして、こんなことが起きるのか・・・?

その答えらしきものは・・・・次のページで!!

記憶について2(自閉症の特性20)
==つづく==
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