宿泊学習への出発の日がやってきました。
由紀子は笑顔で学校へ行きました。
宿泊学習は好きよ!
その言葉にずいぶん救われた母の不安ですが、
それでもやっぱり心配!!
(どうしようもない母です。(笑))
だって由紀子が乗り越えなければならない課題が、
この宿泊学習の中にはいっぱいあるんですもの・・・。
まずは、出発式です。
今まで何度、この出発式でつまづいて
土壇場で「行かない!」と言って動かなくなったことか…。
ドキドキ感が苦手な由紀子は、
この出発前の盛り上がりが苦手なのです。
でも、今日は落ち着いています。
「がんばるぞ!おー!!」のシュプレキコールにも動じずに
みんなの列の中に居ます。
なんだか今日はやってくれる予感がします
この出発式の後、
最寄の駅までの15分ほどの道のりをみんなで歩いていきます。
とってもいい笑顔でした。
私は由紀子が歩き出したのを確認してから、
車で駅まで行って待機です。
由紀子との約束では、
みんながJRに乗るのを見送ったら
私が車で諫早駅まで送っていくことになっています。
でも・・・
この調子ならみんなと一緒に乗れるかもしれません!
母はこの時からずっと迷っていました。
そして、駅。
私は由紀子に姿を見られないように車の中で待機していました。
そこへS田先生が来て、
JRに乗せるかどうかの確認をされました。
先生も迷っているようです。
そして、最後に
「お母さんはどうしたいですか?」
と聞かれたのです。
ギク!( ゜▽゜;)そうですよね・・・
私が決めなければならないのですよね!
私は
「乗れそうなら乗せてください!」
と答えました。
ここからはS田先生の魔法に期待するしかありません。
出発の時間。
私は駅舎の影から由紀子の様子を見ていました。
止まった電車を前にホームに由紀子が立っていました。
先生が何度か促していましたが
どうしても足が動きません。
そして、とうとうドアが閉まって
列車は走り去って行きました。
ホームにはS田先生と由紀子。
そして、学部主事の先生が残っていました。
やっぱり駄目だったか!・・・と、
由紀子に近づこうとしたときに主事の先生が走ってきて、
「次の列車まで頑張ってみたいと担任が言っています。
もう少し待ってください!」
私は再び駅舎の影へ・・・
そこへ先生から電話がかかってきました。
「ゆきちゃんはお母さんを待っているみたいですね!
『お母さん来ないね!』と言っています。
でも、もう少し頑張ってみます。」
それから、30分後。
由紀子は先生と一緒に列車に乗り込んで出発していきました。
この30分の間に
先生がどんな魔法をかけたのかわかりませんが、
手を引っ張られるわけでもなく、
由紀子は自分から列車へ乗り込んでいきました。
結局、駅に残ったのは私ひとりです。(笑)
(・.・;) メガテン・・・
本当にすごい先生です。
昨日のS田先生からの連絡帳には
「また伝説を作りましょう。」と書いてありました。
そして、その言葉通り
先生は由紀子と大きな伝説を作って出発していきました。
列車の中でもパニックになる事もなく、
耳を押さえてアナウンスの真似をしていたとか。
親とはなかなか乗り越えられない大きな山を、
先生と一緒に乗り越えていったのですね・・・
感激です。
ただ・・私は由紀子との約束を破ってしまいました。
これは、私が自分の不安から
由紀子と勝手に約束をしてしまったせいです。
そして、こうなることはわかった上で
JRに乗せて欲しいと先生にお願いをしたのですから
仕方がないことなのですが・・・。
「お母さん来ないね!」
あの言葉が心に何度も響いて、
胸が痛くて仕方がありません。
由紀子はどんな気持ちでホームに座っていたのでしょうか?
そして、私が来ないことをどう諦めたのでしょうか?
喜びの影に私は後悔を感じずにはいられませんでした。
由紀ちゃん、ごめんなさい!!
でも、今日のあなたは本当にすばらしかったです。
=END=