真の動物福祉牧場を目指して

シバジー大往生 弐

 ヒマラヤ西端の最高峰K2からは、遥か西の大地が見晴るかせます。

 それはアフガニスタン高原を越え、シバジーの生まれ育ったメソポタミア地方まで、懐かしい土地が視界に甦ります。

 シバジーはかつてメソポタミア1の酪農家と謳われた人物で、旧約聖書のヨブをモデルにしております。
 もちろん「シバ神」もモデルで、「ジー」はヒマラヤ以南では「~さん」の意味です。

 シバジーが半生を過ごした地中海の村も見晴るかせ、これは流石に錯覚なのですが、彼の目にはハッキリと故郷の情景が映ります。

 それはシバジーが、もうだいぶ「あっちの世界」に近づいているからで、彼の心臓は山頂に着いてから一晩を越さずに脈動を終え、魂は早々に肉体から飛び立ちます。

 これはいわゆる凍死ですが、山岳マンガ「岳」によると寒さは全く苦にならず、逆に身体が火照って服を脱ぎ捨てるくらいだそうです。

 西の故郷に沈む最期の夕日を見送って、とても近くに感じられる星々がシバジーの魂を迎えに来る頃、身体は既に正常な感覚を失っていましたが、それはかえって彼の精神をハイに保ちました。

 シバジーの耳には懐かしい人々の声が聴こえ、それはみんな彼の旅立ちを祝しており、死んだらまず彼等と共に故郷に帰るのだと悟ります。
 
 シバジーの心はそれを待望し、いつでも目を閉じれば眠って逝けると知りつつも、限界まで眠気と闘ってこの世に生きたコトをアプリ-シエイト(感謝、享受)します。

 
 
 
 

 
 
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